2012 Fiscal Year Research-status Report
多様なナノ構造炭素で被覆された無機ナノ粒子の作製とセラミックス複合材料への応用
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24760541
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
干川 康人 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90527839)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 複合材料・物性 / ナノ材料 / 炭素 / 化学気相蒸着法 / セラミックス |
Research Abstract |
化学気相蒸着(CVD)法による無機ナノ粒子表面へのグラフェン数層分の炭素被覆技術の開発とその形成機構の調査を行った。本年度では、粒子径10~80 nmのメソポーラスシリカとアルミナナノ粒子に1 nm以下の薄い炭素薄膜を均一に被覆する方法を確立した。 以下に本年度の主要な研究成果として、メソポーラスシリカへの均一炭素被覆について詳細を述べる。 ■ メソポーラスシリカ粒子表面への均一炭素被覆 シリカ表面は化学的に不活性であるため、従来のCVD法による炭素形成は比較的高温(800℃以上)でしか起きない。しかしながら、高温では反応速度が増大することから、炭素堆積量は制御しにくくなるため、メソポーラスシリカのような多孔質材料の内表面にナノオーダーの薄膜を均一に被覆するのは極めて困難である。 本研究では、トリメチルシリル化したメソポーラスシリカを用いることで、低温CVDによる均一炭素被覆を試みた。トリメチルシリル化したシリカ表面への炭素形成のメカニズムは次のように提案される。シリカ表面上のトリメチルシリル基は600℃付近で熱分解し、メチルラジカルとシリコンラジカルを形成する。生成したメチルラジカルは炭素前駆体であるアセチレン及びその派生物である多環芳香族を活性化することで炭素化を促進し、同時にシリカ表面におけるシリコンラジカルが炭素形成の核形成サイトとして働く。この方法により、従来の方法では不可能であった600℃の低温CVDで、メソポーラスシリカ表面上に1 nm以下の炭素ナノ薄膜を均一に被覆することが可能になった。本手法は表面にトリメチルシリル化さえできればどのようなシリカナノ粒子にも適応できるため、多様な炭素被覆ナノ粒子の作製手法として極めて有効である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究目標である「炭素ナノ構造の形成形態の制御と解析」は、シリカ及びアルミナナノ粒子のグラフェン数層の炭素ナノ薄膜被覆が制御可能となったことでほぼ達成された。加えて、メソポーラスシリカの炭素被覆の詳細な形成メカニズムへの理解が深まったことで、多様な炭素被覆シリカナノ粒子の作製が可能になり、次年度の炭素複合セラミックス材料の開発を進めやすくなった。 また、平成25年度の研究目標である「炭素被覆無機ナノ粒子を利用した機能性複合材料の開発」の前検討も順調に進んでいる。具体的には、炭素被覆ナノ粒子とゴムとの複合材料の評価法(炭素とポリマーの結合量の測定など)もカーボンブラックを用いた検討により確立している。更に放電プラズマ焼結(SPSを用いた炭素無機ナノ粒子を用いた複合セラミックスの試作サンプルの作製も成功している。 これらの理由により、本研究は当初の計画目標を達成した上で、次年度の研究計画を進めるために十分な検討が進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた結果を基に以下の機能性複合材料の開発を進める。 ■ 炭素-セラミックスナノ複合材料の作製と特性評価 炭素被覆無機ナノ粒子を用いることで、炭素のナノネットワーク構造を制御した炭素-セラミックスナノ複合材料を作製し、その詳細な構造の解析及び物性の評価を進める。炭素のナノネットワーク構造の制御の方策として、無機セラミックスの形態制御(球状、数珠状、線維状など)と被覆する炭素構造の制御(CVD条件、炭素前駆体など)した炭素被覆無機ナノ粒子の作製を進める。これらの原料から作製した複合体について、TEM観察などによって複合体内に形成した炭素ナノ構造、特にセラミックスとの複合化がどのように進んでいるかについて確認し、複合体の機械的特性や導電性に対する影響を調べる。 ■ 炭素被覆ナノ粒子のゴムとの複合化と性能評価 従来のゴムのフィラー材料(カーボンブラック)と同じような形態(一次粒子形状と二次粒子形状)を持つ炭素被覆無機ナノ粒子を作製し、カーボンブラックの表面構造とセラミックスの機械的物性を併せ持つ新規のゴム複合材料の作製を行う。上述の多様な炭素被覆無機ナノ粒子を用いて、ゴムとの複合体を作製し、炭素表面のエッジ面と高分子との結合量とゴム複合体の機械的特性の関係を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究では、主に炭素-セラミックス複合体試料作製のための材料費(原料ガス、ナノ粒子合成試薬など)、冶具(SPS実験用の消耗品)などの物品費、SPS実験及び成果報告のための旅費を主な使用用途とする。次年度では50万円以上の実験機器などの購入予定はない。
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