2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24760545
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
柳 博 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (30361794)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | BiFeO3 / 水熱合成 / エピタキシャル |
Research Abstract |
BiFeO3を太陽電池材料として応用できる可能性を探るためにBiFeO3薄膜の作製とバンドダイアグラム作成に取り組んだ。当初計画ではBiFeO3高密度焼結体を作製してスパッタリング法で製膜する予定であった。水熱法を用いた単相粉末の合成、焼結体作製に向けた大量合成条件を確立することはできたが、単相の焼結体を作製するに至らなかった。そこで並行して進めていた水熱法による薄膜作製に注力したところ、SrTiO3単結晶基板上にBiFeO3がエピタキシャル成長した薄膜作製条件を確立することができた。スパッタリング法など真空プロセスを用い、基板を高温に加熱して製膜する手法に比べ水熱法では200℃程度の低温製膜で高品位のエピタキシャル薄膜が得られたことから、本物質を将来的に実用材料として用いる際には製造コスト、環境負荷を抑えることができると期待させる結果である。 このエピタキシャル薄膜を用い、紫外光電子分光法(UPS)によるバンドダイアグラム作成を試みた。UPS測定では導電性のある試料を用いる必要があるが、基板にも薄膜にも導電性がないためチャージアップをしてしまい、He放電管の放電条件の調整のみではこれを防ぐことはできなかった。そこで導電性のあるNbドープSrTiO3単結晶基板上にBiFeO3を製膜し再度測定を試みたが、BiFeO3薄膜の膜厚制御が難しく、膜厚が~1μmと厚膜しか作製できなかったため絶縁性が高く信頼性のあるUPSスペクトルを得ることがで現状ではできていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スパッタリング法による製膜は焼結体ターゲットを作製できなかったために実現していないが、水熱法によりエピタキシャル薄膜が得られたことから研究はおおむね順調に進展していると考えている。太陽電池材料としての可能性を探るためのバンドダイアグラムの作成はやや遅れている。これはUPS測定用として絶縁性の高い試料しか得られていないためである。しかし平成24年度後半にチャージアップを避けるための中和銃を備えた光電子分光装置が本学の共通機器として設置され、使用できる環境となったため平成25度においては中和銃を使用することでUPS測定も実施可能と考えている。加えて本装置はイオン銃も備えているため深さ方向に対するフェルミ準位の変化も測定できると期待される。 スパッタ法による製膜は実現していないが水熱法によるエピタキシャル薄膜が製膜でき、この試料について新たに導入された光電子分光装置を用いて実験を進めることで当初目的は充分達成されると考えられることから、全体としておおむね順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに導入された光電子分光装置を用いてBiFeO3のバンドダイアグラムならびにSrTiO3との界面の電子状態を実測することで太陽電池材料としての可能性を探る。 まず中和銃を用いてUPS測定をする条件を確立し、信頼性のあるバンドダイアグラムを作成する。試料には昨年度製膜条件を確立したBiFeO3エピタキシャル薄膜を用いる。次にBiFeO3/SrTiO3界面の電子状態をイオン銃によるエッチングや放射光施設を用いた硬XPS測定により試みる。なお、新規導入された光電子分光装置にもAg線源が備わっているため、これを用いることで放射光施設を使用する前に十分な予備実験ができると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)