2012 Fiscal Year Research-status Report
癌の画像診断・温熱治療への応用を目的とした磁性ナノ粒子の創製
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24760551
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
林 幸壱朗 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (80580886)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
平成24年度は、癌に高度に集積し、磁気共鳴画像法(MRI)の造影剤及び磁気ハイパーサーミアの発熱体として応用可能な超常磁性酸化鉄ナノ粒子の合成を目的とした。研究実施計画に基づき、鉄(III)アリルアセチルアセトネート(IAA)を前駆体として用いた加水分解・縮合により、アリル基が結合した超常磁性酸化鉄(マグネタイト)ナノ粒子(Allyl-SPIONs)を合成した。マクロファージによる貪食を回避し、癌への集積量を高めるために、チオール-エンクリック反応を利用して、Allyl-SPIONsにポリエチレングリコール(PEG)及び葉酸(FA)を修飾した。この反応過程で、PEGがSPIONsを包み込むためSPIONsから成るクラスターが生成した。つまり、SPIONsのクラスター化、PEG化、FA修飾が同時に達成された。TEM観察から、粒径7~9 nmのSPIONsが集合して直径60~100 nmのクラスターが生成しており、このクラスターは4~7 nmの有機層で覆われていることが明らかになった。SPIONsから成るFA及びPEGで修飾されたナノクラスター(FA-PEG-SPION NCs)の生理活性食塩水中での粒度分布及びゼータ電位を動的光散乱(DLS)で測定したところ、単分散であり、ゼータ電位はゼロであった。ゼータ電位がゼロであるということは体内に投与した際に血中の蛋白質等の非特異的な吸着を抑制するために非常に重要な特性である。FA-PEG-SPION NCsの磁気特性を評価したところ、超常磁性を示し、現在臨床で使用されている酸化鉄MRI造影剤Resovistよりも飽和磁化が20倍も大きいことが明らかになった。このため、Resovistよりも大きいMRI造影能及び交流磁場中での発熱量が得られた。さらに、マウスを用いた実験により、腫瘍をMRIで検出することや良好な治療効果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、平成24年度は、MRI及び磁気ハイパーサーミアに応用可能な超常磁性酸化鉄ナノ粒子の合成と評価を行うことを計画しており、動物実験は平成25年度に行うことを計画していた。しかし、研究が順調に進んだため、平成24年度に、担癌マウスを用いて、MRIによる腫瘍検出や、磁気ハイパーサーミアの治療効果の評価に取り掛かることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っているFA-PEG-SPION NCsを用いたMRIによる腫瘍検出と磁気ハイパーサーミアの治療効果の評価を継続して行っていく。現在のところ、問題なく順調に進んでいるため、当初の研究計画に基づき行っていく。また、当初は非常に困難と思われた超常磁性酸化鉄ナノ粒子の静脈内投与による磁気ハイパーサーミアでも良好な治療効果が得られる可能性がある知見が得られているので、この研究も精力的に遂行していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は、実験動物やFA-PEG-SPION NCsを合成するための試薬の購入、学会発表のための旅費、論文掲載費や英文校正費に用いる。 次年度への繰越額は論文掲載費及び学会発表のための旅費に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)