2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24760557
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山田 浩之 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (00415762)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 強相関酸化物 / 強誘電体 |
Research Abstract |
本研究課題では、強相関酸化物の相競合性と強誘電体の電場制御性を組み合わせた酸化物ヘテロ接合を作製し、新奇な不揮発デバイス機能を開拓することが目的である。それ踏まえ次年度研究においては以下の研究を遂行した。 (1)強相関酸化物として半導体であるCaMnO3薄膜をチャネルに用い、強誘電体として、正方晶BiFeO3薄膜をゲートに用いた「強誘電電界効果トランジスタ」を作製した。その結果、強誘電体の分極反転に伴い、室温で大きな不揮発抵抗スイッチングを発見した。OFF/ON比は最大で400%に達成した。ホール効果の測定から、強誘電体による静電キャリアドーピングであることを実証した。これは強相関・強誘電FETとしてはこれまでで最大のデバイス応答である。また、OFF/ON比およびホール効果の詳細な膜厚依存性から、界面におけるdead layerによる影響がきわめて強いことが示唆された。本成果は、強相関酸化物を用いた強誘電FETにおける、チャネルの微視的状態を解明した初めての例である。よって今後、適切な界面構造を設計することにより、電界による磁性制御といった高機能デバイス実現に結びつくことが期待される。 (2)バリア層として、強誘電体BaTiO3の超薄膜、下部電極としてSrRuO3、上部電極として白金を用いたトンネル接合(強誘電トンネル接合)を作製し、室温において不揮発抵抗スイッチングを見出した。スイッチング電圧は1V未満であり、世界的に注目されている素子である、コバルトを上部電極に用いた強誘電トンネル接合のそれ(2V)に比べ大幅低減に成功した。メカニズムは現在解明中であるが、本成果は、強誘電トンネル伝導における界面の役割を明確に示すものであると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題申請後から開始に至る期間において、申請者は、正方晶BiFeO3(強誘電体)および電子ドープマンガン酸化物(Ca,Ce)MnO3(強相関酸化物)からなるヘテロ接合の開発に成功した。これにより、強相関・強誘電ヘテロ接合を作製するノウハウが想定以上に蓄積され、本研究課題初年度においてはデバイス機能の評価により多くの時間をあてることができた。さらに、上述のヘテロ接合を用いたトンネル接合素子試作・評価まで事前に行えたことで、強誘電トンネル接合に関する研究において真に明らかにすべき点を、研究課題開始時において、より明確にすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
強誘電電界効果トランジスタに関しては、ペロブスカイト構造を有する典型的な強相関酸化物材料をチャネルに用いて素子を作製するとともに、界面構造を改良する。たとえば、常誘電体とのハイブリッド構造にする、界面の価電子不整合のない急峻な界面の構築などを行う。これらにより、素子性能の向上を図る。 強誘電トンネル接合に関しては、初年度に見出した、白金・BaTiO3接合における不揮発抵抗スイッチングに関して、作製プロセスの改善による特性の向上の検討・ピエゾ応答顕微鏡による強誘電特性の解明・放射光やTEMなどによる界面電子状態の解明などを行うことにまず注力する。 さらに、次年度においては、上部電極として酸化物伝導体を用いた強誘電トンネル接合、すなわち、すべての構成要素に酸化物を用いた強誘電トンネル接合の開発する体制を整える。これにより酸化物界面の微視的理解に基づく総合的な不揮発抵抗スイッチング機能の最適化を目指す。全酸化物構造においては、白金やコバルトのように、スイッチングのカギとなる界面相が自己組織的に形成されるわけではないので、精密な素子構造の設計が求められる。具体的には、(1)強誘電バリア層の界面における局所ドーピング(2)強誘電体・バンド絶縁体ヘテロ接合をバリアに用いる、すなわちハイブリッドバリア層の導入 (3)電極材料として、新奇な希薄電子伝導体の導入といった多面的な側面から検討をおこなう必要がある。そのために必要な材料の薄膜化・トンネル接合作製プロセスの開発を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題申請後から開始に至る期間における研究の進展から、前年度は特に基板・ターゲットといった材料費を想定より低く抑えることができた。また、強誘電性の評価に必須となるピエゾ応答顕微鏡を所属研究グループが購入することになったため、既存の装置を改良せずより効率的に研究がすすめることができた。 次年度は、それらのアドバンテージにより得た成果を発展させるため、材料開発やピエゾ応答顕微鏡による評価に要する費用に集中的に投資する予定である。具体的には、備品50万円(カンチレバーホルダー)・内国旅費20万円・外国旅費30万円・役務10万円(学会参加費)・消耗品110万円(基板50万円、ターゲット15万円、フォトマスク20万円、他)を予定している。
|
Research Products
(9 results)