2012 Fiscal Year Research-status Report
CVD表面修飾粉体の急速加熱焼結による緻密ダイヤモンドベース複合体の合成
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24760558
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
且井 宏和 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70610202)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 回転式CVD / プラズマ放電焼結 / 粉末コーティング / 難焼結材 / ダイヤモンド / SiC / SiO2 / ナノ膜 |
Research Abstract |
緻密なダイヤモンド多結晶体を得るためには、相変態を伴わない熱的安定領域の超高圧(GPa)環境が必要とされてきた。本研究では、Si 系セラミックス分散と高速焼結プロセスが焼結促進と相変態・粒成長抑制を可能にする点に着目し、化学気相析出による回転式粉体コーティング技術と放電プラズマ焼結法を組み合わせ、緻密なダイヤモンド基複合体の低圧合成プロセスを構築することを目的とする。SiCやSiO2などの硬質セラミックス分散膜コーティングをダイヤモンド粒表面に行い、急速加熱焼結することで、緻密なダイヤモンド基複合体の合成を金属バインダレスかつ100 MPa 以下で行う。 平成24年度は、先ず、回転式CVDによるSiC、SiO2およびダイヤモンド粉末基材表面のSi基セラミックス(SiO2およびSiC)コーティングプロセスに焦点をあて、成膜温度や炉内圧力などの各種合成条件が、コーティング膜の結晶相、微細構造および膜厚に及ぼす影響を調べた。ダイヤモンド粉末へのSiC膜コーティングでは、CVD原料にHMDSを用い、成膜温度996 Kのとき、厚さ約10 nmのSiC膜をダイヤモンド粒表面に合成することに成功した。また、SiC粉末へのSiO2膜コーティングでは、CVD原料にTEOSを用い、成膜温度948 Kで、膜厚約60 nmのSiO2膜を合成できることを見出した。これらSi基コーティング膜は非晶質であり、平均粒径が数ミクロンの基材粒子表面には均質で滑らかな形状のナノ膜が形成された。 回転式CVDにより得られたSi基セラミックス被覆コンポジット粉末をプラズマ放電焼結法を用いて焼結した。SiO2膜/SiC粉末コンポジット粉末は、焼結温度1923 Kで相対密度97 %に達し、ビッカース硬さおよび靱性はそれぞれ17.1 GPaと8.4 MPam1/2と高い機械的強度を示すことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は化学気相析出による回転式CVD技術と放電プラズマ焼結法を組み合わせ、緻密なダイヤモンド基複合体の低圧合成プロセスを構築することを目的とするが、初年度の平成24年度は、回転式CVDによるSi基セラミックスの粉末コーティングプロセスの確立を主眼に置いた。SiC膜の合成条件を広範に精査することにより、均質かつ一様なナノ膜を数ミクロンの微粒粉末表面に合成することを可能にした点は、当初の計画を十分に満足している。さらに、SiO2膜コーティングでは60 nm以上に及ぶ膜厚の制御を可能しており、SiO2とSiCの異なる材質で様々な膜厚のSi基セラミックス分散膜をダイヤモンド微粒上に合成できる点は、平成26年度のダイヤモンド焼結条件を広範な条件で探索することを可能とする。また、SiO2膜/SiC粉末コンポジットでは機械的特性に優れる緻密体を合成できており、得られた知見はSi基セラミックス膜/ダイヤモンド粉末に応用できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度で確立した回転式CVDによる粉末コーティング技術とプラズマ放電焼結法を組み合わせ、SiC膜/ダイヤモンドおよびSiO2膜/ダイヤモンド粉末コンポジットの緻密体を合成することを目的とする。SiO2やSiC膜の合成条件や膜厚がダイヤモンドの焼結挙動に及ぼす影響を明らかにする。また、焼結温度、印加圧力および焼結時間などの焼結条件がダイヤモンド焼結体の密度、微細構造、硬さや靱性に与える影響を精査し、緻密で機械的特性に優れるSi基セラミックス-ダイヤモンド複合体を合成する。 SiO2膜/SiC粉末コンポジットでは緻密体を合成することに成功しており、SiC膜/ダイヤモンド粉末またはSiO2膜/ダイヤモンド粉末の焼結では緻密化が困難である場合は、SiC膜/ダイヤモンド粉末にSiO2膜の積層コーティングを行い、SiO2膜/SiC粉末に擬似化することで緻密なダイヤモンド複合体を合成する。 得られた成果と取りまとめ、日本セラミックス協会、粉体粉末冶金協会およびInternational Conference and Exposition on Advanced Ceramics and Composites 等の国内外学会や論文投稿により発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品は主にダイヤモンド粉体やコーティング原料の各種有機金属錯体、反応用高純度ガスである。CVD原料には、SiCやSiO2のSi原としてHexamethyldisilaneやEthylsilicateを計上する。また、回転式CVDやSPS装置の日常的なメンテナンスに必要な交換部品を計上する。具体的には、配管部品、バルブ、チャンバー窓材、油回転式ポンプ等の真空機器、リボンヒーターやカーボンパンチ・ダイスなどである。 旅費等の項目では、得られた研究成果を対外発表するための国内外における学会参加費、渡航費および論文投稿料を計上した。年間2回の国内学会発表と、1回の国際学会発表を予定とする。論文投稿は3報を目標とする。 その他、透過電子顕微鏡や電界放出形走査電子顕微鏡などの分析に必要な装置使用料を計上する。
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Research Products
(6 results)