2013 Fiscal Year Research-status Report
絶縁性リチウム複酸化物をモデルとした導電ネットワークの制御
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24760559
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
小寺 喬之 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 特命助教 (80456433)
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Keywords | 複合粒子 / イオン導電パス / 複合効果 |
Research Abstract |
本研究は、絶縁性の酸化物に炭素による均一な導電ネットワークを形成して、粒子中および粒子間における電子およびイオンのスムーズな拡散が可能な粒子構造の実現を目指すものである。これまでに、エアロゾルの熱分解を利用してリチウム複酸化物粒子中へ炭素を分散することに成功したが、不均一な炭素分布が課題となっている。本研究では、振動波をエアロゾルに与えて、全ての原料塩を瞬時に熱分解する手法を開発して課題解決し、絶縁性のリチウム複酸化物をモデルとして、均一な導電ネットワークの形成手法を確立することを目的としている。 本研究では、エアロゾルを瞬時に熱分解するために必要な振動波発生装置を試作し、リン酸鉄リチウム粒子を合成モデルとして合成試験を実施した結果、原料塩、熱分解温度および振動波の周波数等の合成条件と得られた粒子の粒子特性との関係を明らかにし、複合粒子合成に重要な粒子の生成過程の知見を得ることができた。 また、炭素複合リン酸鉄リチウム粒子を合成し、炭素源の種類、振動波の周波数および熱分解温度等の合成条件が粒子の微構造に及ぼす影響を調べると共に、得られた炭素複合リン酸鉄リチウム粒子の電気化学的特性を調べた。その結果、振動波の周波数および熱分解温度が粒子の微構造に影響することがわかった。しかし、導電率およびリチウムイオン電池用正極材料としてのレート特性には、大きな影響はなかった。これは、導電ネットワークを形成するための炭素が不連続的にリン酸鉄リチウム粒子に分散しているためであると考えられ、炭素複合量が粒子の微構造に及ぼす影響を明らかにすることで、導電率およびレート特性の向上が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、絶縁性の酸化物に炭素による均一な導電ネットワークを形成して、粒子中および粒子間における電子およびイオンのスムーズな拡散が可能な粒子構造の実現を目指すものであり、振動波を原料のエアロゾルに与えて、全ての原料塩を瞬時に熱分解する手法を開発して、粒子中への均一な導電ネットワークの形成手法を確立することを目的としている。 平成25年度までは、次年度に合成条件、炭素分布、炭素複合量および電気化学的特性の相関関係を明らかにして、目的を達成するために、振動波発生装置を試作し、粒子の生成過程の解明に関する研究および合成条件が粒子の微構造に及ぼす影響に関する研究を実施した。試作した振動波発生装置は、本研究に必要な動作条件で動作できることを確認し、リン酸鉄リチウムの合成条件と粒子特性との関係を解析した結果から、合成条件の違いによる粒子の生成過程がわかった。また、炭素複合リン酸鉄リチウム粒子の合成条件と粒子特性との関係を解析した結果から、合成条件の違いが粒子の微構造に及ぼす影響がわかり、電気化学的特性のデータを取得することができた。本研究の実施計画通りに研究は進展しており、導電ネットワーク形成手法の基盤を確立すると共に、本年度の目標である合成条件と得られる粒子の微構造の関係を明らかにすることを達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度までの研究データおよび知見を基に、炭素複合量を変化させながら炭素複合リン酸鉄リチウム粒子を合成し、炭素分布状態および炭素複合量等の物理化学的特性と、電子伝導性およびリチウムイオン伝導度等の電気化学的特性との関係を、導電率、インピーダンス、電池特性等のデータから解析して調べる。これらの結果から、合成条件、得られる粒子の物理化学的特性および電気化学的特性の相関関係を明らかにすることで、粒子中への均一な導電ネットワークの形成手法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、粒子の合成試験において、粒子を回収するためのフィルター等の消耗品器具に関するものである。これらは、特注品で受注生産で作製していたが、再設計が必要になったため、納期が遅れ、次年度使用額が生じた。 粒子を回収するためのフィルター等の消耗品器具の再設計は完了したため、次年度に速やかに作製し、購入する計画である。
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