2012 Fiscal Year Research-status Report
三原色蛍光体の発光メカニズムの理論的解釈と透光性多結晶体シンチレータ材料への応用
Project/Area Number |
24760571
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉野 正人 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10397466)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 蛍光体 / シンチレータ材料 / レーザ材料 / 希土類イオン |
Research Abstract |
本研究において試料の最も重要な性質である励起エネルギー吸収の希土類イオンへのエネルギー伝達について遷移スペクトル測定より調べるために、パイロクロア構造をもつLa2Sn2O7にCeおよびPrを添加した試料を、添加濃度、焼成雰囲気(大気、還元、不活性)を制御した上で合成し、吸収、発光および励起スペクトルを測定した。La2Sn2O7は4.5 eV程度の比較的広いバンドギャップを持つためシンチレータとして利用できる4f-5d遷移について注目して調べ、またPr添加については4f-4f遷移についても調べた。Pr添加試料について、励起スペクトルよりブロードなPr3+の4f-5d遷移による吸収ピークがあることがわかった。また、発光スペクトルでは4f-4f遷移によるシャープな発光ピークがあった一方で、4f-5d吸収位置による励起を行っても、5d-4f発光が観測されなかった。これは、励起エネルギーが4f2準位へ移行した4f-4f発光により消費されたためと考えられた。Ce添加試料では、吸収スペクトルよりCe4+とその周りの酸素間でのCT遷移による吸収ピークおよびCe3+の4f-5d遷移によるブロードな吸収ピークがあることがわかった。この試料においても、4f-5d吸収位置による励起で発光は観測されなかった。これは、励起エネルギーの母体への移行を介した非輻射遷移による消費が行われているためと考えられた。 レーザ材料の分野で吸収スペクトルのブロード化による励起光の吸収効率向上が検討されているNd3+添加Y3Al5O12において、ホスト組成の変化でNdまわりの局所構造が複数種形成されることがEXAFS解析および理論計算から示されたが、その静的ゆらぎは小さく、吸収スペクトル形状の微少な違いの重ね合せによりそれをブロード化させるのに必要な大きなゆらぎを形成するには空孔の導入も必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
励起エネルギー吸収の希土類イオンへのエネルギー伝達の解析について、24年度の計画であった、試料合成および遷移スペクトル測定を行うことによる解析を進めることができている。SrY2O4については詳しく進められなかった一方で、Y3Al5O12についてNd添加試料の解析を行ない、また、Y系と同様に研究対象となるLa系のLa2Sn2O7についてPrおよびCeを発光中心とした場合の解析を計画より先んじて行っている。加えて、25年度の計画にある希土類イオンの価数の解析について、Y3Al5O12ではXANES、La2Sn2O7ではXPSを用いて解析を行っている。24年度の計画にある透光性多結晶体作製のためのSiO2-B2O3ガラスの調整については検討を始めている段階までとなったが、対象とする試料の粒成長の温度依存を調べることを優先して行っている。 以上のように、当初計画に比して進捗状況が前後するもの双方があり、総合しておおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度より継続して合成試料および周辺組成試料の遷移スペクトルの解析を完成させるとともに、それら試料に対して、希土類イオンの価数がどの程度の存在比となっており、またそれがホスト酸化物中にどのサイトに入っているかを検討するための測定および解析を行う。構造およびサイトの解析には、実験に加えて第一原理計算を行ない、バンド計算および配置間相互作用計算(DVME法)を用いる。また、希土類イオンを添加したホストの電子状態および希土類イオンの多重項エネルギー準位を計算することで、ホストのバンド間遷移と4f-5d遷移、4f-4f遷移の関係について調べる。これらより、シンチレータ材料およびレーザ材料に適したそれぞれ、4f-5d遷移による発光および4f-4f遷移による発光を示す材料に必要な条件を求め、また材料設計を検討する。透光性多結晶体を作製するために粒成長の温度依存性を調べた試料に対して適切な温度が融点となるSiO2-B2O3ガラスを調整し、真空炉での焼成を行ない透明化の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の推進方策中にある、第一原理計算には現有設備の計算機に加えて、バンド計算での高速な構造解析計算、配置間相互作用計算での大容量計算を行なわせる専用機を必要とするため計算機の購入を行う。また、試料合成および透光性多結晶作製に用いる電気炉での真空到達度の向上および真空度の計測、ガス雰囲気制御するための、真空ポンプと真空計器および部品の購入を行う。その他適宜試料合成に必要な原料およびガス、器具等の消耗品の購入を行う。 希土類イオンの価数解析および局所構造解析、また高エネルギー域励起における遷移スペクトル測定を行うための放射光施設での実験旅費の支出を行う。また、学会発表および情報収集のための旅費の支出と論文発表費用の支出を行う。
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