2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノインデンテーションとマルチスケール解析を用いた複相金属材料の変形機構解明
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24760575
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
林 泰輔 島根大学, 総合科学研究支援センター, 教務職員 (50580495)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ラスマルテンサイト / 複相鋼 / 塑性変形 |
Research Abstract |
エネルギー消費量低減のため,自動車などの移動体構造材料の高比強度化が求められている中,複合組織鋼などの高強度構造用材料が注目されている.これらの高強度材料は優れた比強度と一定の延性を両立させるため複相かつさまざまなスケールの構造からなる複雑な組織を有し,さらなる性能改善及び効率的な構造設計のため,組織および塑性変形挙動の解明が必要とされている. 複合組織鋼等に現れる複雑な組織をマルチスケールかつ異相境界部における変形挙動に重点を置きながら解析を行うため,本年度は基礎的なデータ収集とインデンテーション試験による測定の条件並びに得られるデータについての検討に主眼を置き,そのため比較的単純な系である極低炭素マルテンサイト鋼及び境界部組織を有するマルテンサイト・フェライト複相鋼を用いて測定と解析を行った. 1.複合組織鋼中で高強度を担うマルテンサイトは単味の変形挙動がまだ十分に理解されているとは言えないため,その詳細な変形挙動を明らかにするために単純なモデル試料である極低炭素マルテンサイト鋼を用い,変形に伴う組織変化をマイクロメートルからナノメートルオーダーの範囲で解析した.その結果,ラスとよばれる特徴的な内部組織の変化を半定量的に明らかにした.この単相ラスマルテンサイトを用いた解析結果を基に,複合組織中のラスマルテンサイトの変形挙動を解析する予定である. 2.インデンテーション法の適用範囲と最適な実験条件を明らかにするため,上記の極低炭素マルテンサイト鋼およびマルテンサイト・フェライト複相鋼にインデンテーションを行い,変形前後の周辺組織における結晶方位の変化を解析した.その結果,おおよその変形範囲,マルテンサイト鋼における局所変形の状態について定性的な結果を得たので,今後はさらに定量的解析へと発展させる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インデンテーション周辺部組織の解析については当初より困難が予想され,実際に変形部組織の定量化に関しては次年度の課題であるが,本年度は結晶方位解析等により一定の成果を得た.変形部組織の観察に必要な,変形前後の同一視野観察についても解析に十分な精度で行えることを確認できた.また最適な条件で試験を行うための予備的データ収集も完了したため,当初の計画を鑑みて十分な成果であると評価する.次に,マルチスケール観察並びに境界部組織の変形伝達挙動の解析についても,基礎的なデータであるマルテンサイト単味の変形組織観察を引張試験片とインデンテーション周辺組織の双方で行い,境界部変形組織の解析に必須なデータを得た.境界部周辺でのインデンテーション予備試験も行い,供試材の熱処理等を含めて観察および試料調整条件に関する課題は大部分が解決した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進展状況はおおむね計画通りであり,今後は当初の目的となる境界部組織における変形伝達挙動の解析と,マルチスケールにおける変形挙動との対応付けを行う.また最終年度であることから,より積極的な外部発信を予定している.インデンテーションによる変形組織解析に関して,微視的レベルで解析する際に歪量などの見積もりが困難であることから,有限要素法などの計算機実験を併用し,定量的解析を行う予定である.このため,たとえばマルテンサイト単味の変形挙動についてより詳細な情報が必要になることが予想されるが,すでに得たデータを最大限に利用しながら,必要に応じて単純化した系での実験を追加し,解析に供することを予定している.これらは当初計画とおおむね一致しており,今後も当初計画の大枠を踏襲しながら研究を推進することで最終目標を達成する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では今年度にナノインデント依頼試験を試行し,実験条件の探索並びに基本的データ収集を行う予定であったが,マイクロビッカース試験機を用いた実験により,多くの実験条件絞り込みが可能であること,異相界面での変形伝達挙動解析には,圧痕周辺部の歪状態を解析する必要があり,ナノインデント試験に先行して解析手法の確立を急ぐ必要があったことから,依頼試験は来年度に行う方が全体の進捗およびコスト両面で有利であると判断した.このため当初計上していた依頼試験にかかる費用が持ち越されることになった. 本年度未使用額については本年度行う予定であった依頼試験および当初計画で次年度予定であった依頼試験を次年度に行うことから依頼試験の費用増分を補うために用いる.研究費使用計画は上記の差異を除き当初計画に準じる.尚,全体の進捗を律速する予備実験に関してはマイクロビッカース試験機を用いてその大部分を終えており,また依頼実験よりも解析手法確立に必要な時間が大幅に多いため,上記の変更は全体の進捗に大きな影響を及ぼさない.
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Research Products
(2 results)