2012 Fiscal Year Research-status Report
自己生成ナノ磁性粒子分散型複相膜の高誘電率化とその発現機能の解明
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24760584
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Research Institution | Research Institute for Electromagnetic Materials |
Principal Investigator |
横井 敦史 公益財団法人電磁材料研究所, その他部局等, 研究員 (60513760)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 誘電体 / 薄膜 / 電気抵抗 / 分子動力学法 / 複相膜 |
Research Abstract |
近年の多種多様化する次世代電子機器に対応するため、新たな機能材料の開発が重要な研究課題になっている。本申請者は、新たな複機能材料として、ナノグラニュラー薄膜に注目して開発研究を行っており、誘電性-磁性、光学性-磁性のような量子間相互作用による多機能性発現の可能性について研究を開始した。自己生成ナノ磁性粒子分散型複相膜において、強磁性と共に一定の粒子量において、誘電率が増加傾向を示す現象を見出した。さらに、最近では1000にも達する常温誘電率を観測しており、極めて特異な現象である。常温において1000にも達する誘電率を有する薄膜材料は、高集積化、高機能複合化、低コスト化の観点より、次世代通信機器のスマートデバイスへの応用として有力視されている。また、国内・国外においても、常温測定における誘電体薄膜の誘電率が1000に達する薄膜材料の報告はない。このような異常に高い誘電率がナノ磁性粒子の存在により発現する現象をより詳細に調べ、その発現機構を解明する事は極めて重要であると考え、本研究課題を提案を行っている。 本研究所にて得られている、自己生成ナノ粒子分散型複相膜についての様々な知見を基に、Y2O3 酸化物ターゲットに10mm×10mmのCo合金チップを張り付けた複合ターゲットを作製し、誘電性セラミックスとナノ磁性粒子より形成される自己生成ナノ磁性粒子分散型複相膜の作製を、スパッタ装置を用いて行った。また、現在はマトリックスの結晶質を上げるため、基板加熱機構を用いて成膜を行っている。得られた膜の電気特性を、本申請による設備備品にて評価するとともに、Magneto-Dielectric効果の検討を行うため、電磁石を用いて磁場を印加しながら誘電特性評価を行っている。また、分子動力学シミュレーションにより検討を行うために、成膜する組成系の元素の最適なパラメータの選定を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究にける目的の一つである、自己生成ナノ磁性粒子分散型構造が巨大誘電率をはじめ、各種物性にどのように寄与するのかナノ結晶構造解析により検討することにより、発現機構の解明をについて、誘電率は自己生成ナノ磁性粒子分散化に伴い増加傾向をする知見が得られている。これは、様々な予備的シミュレーションにより、ナノ磁性粒子とセラミックス界面の、分子の拡散係数、すなわちイオンの変位が寄与し、磁性ナノ粒子とセラミックス構造の界面における格子振動が誘電特性(誘電分極)に影響しているものと考えられる。従って、自己生成ナノ磁性粒子分散型複相膜におけるナノ磁性粒子とセラミックス界面には、ユニークな機能性の発現が期待される。しかしながら、各種パラメータを最適化は行っているが、誘電体相と磁性体相の複相化について、シミュレーションの改善が必要であり、更なる工夫を必要としている。
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Strategy for Future Research Activity |
巨大誘電率を有するナノ磁性粒子分散型複相膜の探査と生成条件の検討として、前年度のスパッタリング法により得られたデータを基に、各種スパッタ条件の最適化する。また、得られた膜の微構造観察及び組成分散の解析を電界放射型走査電子顕微鏡及びEDS/WDSコンバインシステムを用いて行う。 ナノ磁性粒子分散による誘電性の発現及び磁気特性との相関性の検討については、誘電性-磁性の相関性の検討を行うとともに、自己生成ナノ磁性粒子分散型に伴う誘電特性の変化を、ナノ磁性粒子と誘電性マトリックスの観点から検討する。 ナノ磁性粒子-セラミックス間の界面構造の解析と発現機構の解明については、決定したパラメータを用いて、最適なポテンシャルパラメータの相互作用モデルを決定する。また、実験にて成膜した薄膜のシミュレーションモデルを作製し、原子、分子、及びイオンを単位とする、自己生成ナノ磁性粒子分散型のシミュレーションをする。特にナノ磁性粒子とセラミックスの界面に着目し、ミクロ(ナノ結晶構造)とマクロ(各種物性)のナノ結晶構造解析を行う。 ここで分子動力学法を用いることにより、熱力学的観点(ギブスの自由エネルギー)からシミュレーションする方法により結晶構造の安定性を検討することを試みた。さらに、本申請者の用いるプログラムより、各種イオンの変位は、イオンの拡散係数として示す事を工夫する。また、イオンの変位を軌跡として示すことができ、本申請の目的である、自己生成ナノ磁性粒子分散型複相膜の高誘電率化の発現機構の解明に寄与できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
スパッタリング法による複合機能応答型薄膜作製に必要となる、各種酸化物ターゲットは、消耗品としてターゲット類として計上する。また、誘電特性測定用基板として石英基板及び、バッファ層を用いた基板類及びその前後処理のための薬品類やガラス器具、評価に用いる薬品類などを、消耗品として計上する。 国内旅費については、日本セラミックス協会等の学会における成果発表を行うものとして計上する。その他として、海外の学術誌Journal of the American Ceramic Society等に1編以上投稿する予定であり、その掲載料を計上する。
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