2012 Fiscal Year Research-status Report
高温耐磨耗性を示す窒素終端不動態化ダイヤモンド表面の創成
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24760592
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野瀬 健二 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (10451882)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / 表面 / 終端 |
Research Abstract |
初年度である平成24年度には①熱平衡/非平衡の両条件下でのダイヤモンド表面の終端の制御、及び、②表面近傍の格子歪みの定量法を明らかにした。 表面終端の制御においては大気環境下での高温の酸化アニールにより表面の酸素終端が実現し、水素終端による表面電気伝導が消失することを確認した。この時の表面酸素濃度はXPS測定による酸素スペクトルの入射角度依存を元に定量した。この測定より、酸素は表面近傍において最大で約40%の濃度を持つことが判明した。酸化アニールの時間により、この濃度が変化しないことから、終端率はほぼ100%に達していることが推測された。 この表面を出発として、超高真空中での窒素イオン照射条件を行い、表面の窒素濃度を定量した。イオン照射エネルギーは表面原子のスパッタリング現象を生じさせない約10eVとした。この照射実験では窒素濃度の向上は確認されず、より高いフラックスでの窒素ラジカルの照射が必要であることが明らかとなった。 他方、酸素終端表面を還元するための条件として、水素プラズマへの暴露実験を行った。6 KPa,1140 Kにおいてマイクロ波熱プラズマへの暴露により表面の終端が水素に変化した。この時、表面酸素濃度が1%程度まで低減することが明らかとなった。これは、既往の報告にある清浄な水素終端表面と同等の値であり、表面終端された酸素を効率的に除去できたことが示された。 これらの表面終端ダイヤモンドに対して、波数再現性を大幅に向上させたラマン散乱測定法を考案し、表面近傍の格子歪みを定量化した。この測定によれば、終端を制御されたダイヤモンドにおいては、格子定数が拡張する向きに歪みが生じていることが明らかとなった。この変化は表面の終端の制御を行うことで可逆的に変化させうることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である(1)窒素終端化プロセスの検討、(2)結合エネルギーと構造、(3)化学的安定性と機械的強度の3つの項目のうち、分析手法を含む(1)の条件が絞られつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、水素/酸素終端の自在な制御が可能となり、水素終端以外に依存する表面の格子歪みが検出可能となった。来年度はこれを元に、窒素プラズマ暴露環境による表面の終端制御をXPS測定を主体に研究する。表面窒素密度と結合エネルギーを測定することで終端の構造を推定することが可能となる。こうした測定を、異なる処理時間、処理温度において比較することも終端率の推定において重要となる。また、赤外吸光法を用いることで、終端の結合種を直接的に同定することを狙う。これは、上記XPS測定の結果との比較により、終端構造をより明確に捉えるために重要な情報を与える。この後、終端に起因する機械的特性をナノインデンテーション法および、光学的手法により明らかにする。また、終端に依存するダイヤモンドの化学的安定性の変化については、熱酸化雰囲気における反応速度から明らかにすることを狙う。終端の異なる複数の試料を同じ酸化雰囲気に暴露することで、表面の安定性の変化やエッチングの反応速度を定量的に比較できると考えている。以上の結果から、終端のミクロな構造および化学状態変化とマクロな反応速度をつなぐ一貫した説明を得ることを狙う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
終端による表面機械特性の計測に必要となる金属蒸着装置用の真空部品購入に充てる。他方、これまでに明らかとなった表面近傍の格子歪みの定量法を国際学会(International Vacuum Congress)で発表するため、参加費および旅費としての支出を検討している。
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