2012 Fiscal Year Research-status Report
超臨界流体反応場における有機金属化合物の分解反応解析と薄膜堆積プロセスへの応用
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24760602
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
内田 寛 上智大学, 理工学部, 准教授 (60327880)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 材料加工・処理 / 薄膜プロセス / 超臨界流体 / 無機材料 |
Research Abstract |
本年度活動においては以下2項目の研究課題に着手し、幾つかの知見を得ることができたので報告する。 (1) 有機金属錯体の分解→金属酸化物形成反応の解析: 超臨界二酸化炭素(scCO2)反応場中における有機金属化合物の分解・重縮合の挙動をモニタリングすることで無機化合物(金属酸化物)生成機構の解析を試みた。従来法では熱エネルギー(加熱)を基に進行した各種反応が、超臨界流体反応場中においてどのような過程を経て促進されるかを調査することが本項の目的である。本年度の研究では主として金属アルコキシド原料からの二酸化ケイ素SiO2および二酸化ジルコニウムZrO2の合成反応を評価対象とし調査を実施した。その結果、いずれの材料においても200oC以下の比較的低温領域で金属酸化物の形成に係る反応が進行することを確認すると同時に、それらの副生成物が気化膨張を伴わずscCO2流体を介した抽出により合成物中から除去されることを確認した。 (2) 有機金属錯体の溶解挙動の解析: 同じくscCO2反応場における有機化合物の溶解・分散挙動を調査することで反応場中での物質輸送および堆積メカニズムの解析を試みた。本年度の研究では、配位子/側鎖構造が異なる幾つかのTiおよびZr錯体群を観察対象とし、有機溶媒ならびにscCO2に対する溶解挙動を比較評価した。その結果、先ず錯体配位子と類似の分子構造や電子・極性構造を有する有機溶媒に対してそれらの金属錯体は良好な溶解性を示すことが明らかとなった。加えてscCO2はヘキサン等の非極性溶媒と類似した溶媒特性を以てそれらの金属錯体を溶解する傾向を示すことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度終了時において、研究目的は概ね順調に達成されたものと判断される。 本研究申請時に示された2件の課題「(1) 有機金属錯体の分解→金属酸化物形成反応の解析」および「(2) 有機金属錯体の溶解挙動の解析」がそれぞれ計画通りに進行したことに、各課題においていくつかの有用な知見を得ることができた。続く本年度の研究進行においても、申請時に提示された研究計画に沿った活動が実施されれば研究の最終目的達成を十分に達成することが可能であると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は主として「無機材料合成に適した有機金属化合物の設計と実証」といったテーマに基づき研究を進行する。本テーマでは超臨界流体反応場での材料合成反応に適した有機金属化合物の分子構造を検証し、それらの知見に基づいた原料化合物の選定・設計、ならびにそれらを利用した材料合成を実施する。 昨年度(平成24年度)の課題進行により得られた情報を元に、材料合成に適した化合物、すなわち分解→金属酸化物形成の能力に優れ、かつ超臨界流体に対して十分な溶解能を示すことのできる有機金属化合物の分子構造を選定・設計する。各側鎖/配位子構造の役割が予め明確化されることで両者の特性を調和良く内包する有機金属化合物の構造が設計可能になるものと判断される。また、選定・設計された化合物の特性を実証するため、化合物の合成ならびそれらを原料とした無機材料合成を実施し、無機材料の低温合成や多成分系酸化物の形成など、対象化合物の無機材料合成への適性を評価する。これらの実験は既に当グループにより作製が完了した自作のフロー式薄膜堆積装置を利用して実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として、実験実施に係る試薬および装置部品の購入に対して本予算を使用する。 また、昨年度研究成果の一部を公開するための活動(学会発表および論文作成)、ならびに実験作業補助者への謝金に予算の一部を使用する予定である。
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