2013 Fiscal Year Research-status Report
微粒子ピーニングの適用によるアルミニウム基材・硬質めっき界面密着性の向上
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24760603
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
亀山 雄高 東京都市大学, 工学部, 講師 (20398639)
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Keywords | ピーニング / めっき / 複合粒子 / 移着 / 密着性 / 表面改質 / 難めっき材 / アルミニウム |
Research Abstract |
本研究の目的は,微粒子ピーニング(FPP)をめっき前処理として適用し,アルミニウム基材とめっき間の高い密着強度を実現することである.すなわち,アルミニウム基材表面へFPPを施し,各種めっきの下地層として優れた性質を示す材料である銅を移着させる.その際の工夫として,鋼粒子へ銅めっきを施して作製した銅/鋼複合粒子をFPPに用いることで,銅の移着を顕在化させる. 平成25年度は,種々の条件のFPPをめっき前処理として施したアルミニウム母材上に被覆したニッケルめっきの密着性を曲げ試験によって評価し,密着性に及ぼすFPPの効果について検討を加えた.A1050材,A6061材の二種類に対し,4種類の粒子を用いてFPPを施したのち,ニッケルめっきを被覆した試験片を用意し実験を行った.すなわち,H24年度に開発した銅/鋼複合粒子,鋼粒子,球状ガラス粒子,ホワイトアルミナ粒子である.FPPに用いる粒子の種類を変えて比較することで,粒子成分(銅,鉄)の移着および表面の粗面化がめっきの密着性に及ぼす影響について比較した. 曲げ試験では,基材を塑性変形させた際の被膜のはく離挙動を指標に用いて定性的に密着性の良否を評価する.結果を抜粋して述べると,本研究で提案する銅/鋼複合粒子を前処理に利用した試験片の場合には,曲げ変形に追随できずめっきがはく離している様子が認められた.仮説とは異なり,前処理としてFPPで銅を移着させても,めっき密着性は十分ではないことが示唆された.しかしながら,はく離しためっきの裏面(界面において,基材と接していた側)を元素分析したところ,銅や鉄が付着した状態となっていることが明らかとなった.つまり,めっきのはく離は,めっきと基材との界面で生じているのではなく,移着物とアルミニウム材との接合面,あるいは移着物を含有する基材表面の改質層内部において生じていた可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画から方法の見直しは若干あったものの,前処理としてFPPを施したアルミニウム基材へ被覆しためっきの密着性評価を行う段階まで到達できた.この点においては計画と研究進捗との間に齟齬は無いと言える.しかしながら,現時点で得られている結果は,前述したように,提案する手法(銅を移着させることにより密着性向上を図る)ではめっき被膜の密着性が十分に得られていないとも判断できるものである.「今後の研究の推進方策」欄で後述するが,この点についてはまだ改善・検討の余地はあると考えており,本年度の結果を踏まえての継続研究が必要な状況である.当初計画では,このようなフィードバックの段階まで,H25年度中に実施できることを見込んでいたが,H24年度報告でも指摘した複合粒子作製を外注から内製に切り替えたこと,および密着性評価用装置の作製に予定よりも時間を要したことに起因して,計画に若干の遅れを生じていると自己評価する次第である. なお,このような事情も踏まえ,平成25年度末に補助事業期間の延長を申請し,認められた次第である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにも述べたように,現時点では銅を移着させたアルミニウム基材へのめっき密着性は必ずしも十分ではないという結果が得られている.一方で,かかるめっき部材において,めっき被膜と移着物との間の親和性は高いことを示す結果も見出されている.したがって,アルミニウム基材と移着物との間の接合強度について詳細に検討し必要に応じて改質プロセスに改良を加えれば,本研究で当初立てた仮説のとおり,良好なめっき密着性を実現できる可能性はあると考えており,この点について,基礎的な研究も含め重点的に推進していきたい.また,H25年度に行った研究では,前処理としてのFPPに用いる粒子の種類によって,めっき被膜のはく離挙動が異なるという結果も得られている.銅を移着させるという発想を転換し,めっき密着性の向上に有効な粒子の材質やそのメカニズムを見出すという方針からも検討を加えていく必要があると考えられる. 一方,H25年度の研究では,曲げ試験を行うに当たり,曲げ負荷を受けた基材の支点反力をモニタリングする機能を有する試験装置の試作も行った.残念ながらこの装置は,力センサからの出力が安定しておらず,実験を行うには装置の組み立て方法や曲げ試験の実施環境等を再度見直す必要があるが,このような装置を用いることにより,はく離が発生した際にはめっき被膜が負担していた曲げモーメントが解放される分支点反力が減少するため,荷重の変動からはく離のタイミングやはく離の発生挙動を定量的に比較することができると期待され,従来の曲げ試験による被膜のはく離状況を指標とした定性的評価と併せて検討することでより詳細に密着性を評価可能と考えられる.このような密着性評価法の高度化も併せて進めることにより,研究目的の達成に寄与させたいと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では,微粒子ピーニング用複合粒子を外注で作製する予定だったが,研究着手後の業者と協議したところ,研究上適切な仕様の粒子が業者では作製不可能であることが判明し,粒子の作製を自力で行うこととした.そのため,外注のために計上していた多額の費用がねん出された.ねん出された費用の一部は,研究成果の高度化を狙って計画には盛り込んでいなかった設備の購入へ充てたが,それでも未使用額が発生した. 前述のように,めっき密着性評価について次年度も継続して実施することとした.あわせて,より定量的な密着性評価法の構築についても取り組んでいく計画である.また,研究成果を今年9月に開催される第12回ショットピーニング国際会議で発表することを計画した.未使用額はそれらの経費に充てることとしたい.
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Research Products
(4 results)