2013 Fiscal Year Research-status Report
励起子自由度を制限できる分子配列構造に基づいた光学的機能の創出
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24760607
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
丹下 将克 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 主任研究員 (10533458)
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Keywords | カーボンナノチューブ / ポリマーラッピング / 構造選別 / ナノ複合化 / 光通信帯 |
Research Abstract |
1.2nm以上の比較的直径の大きなカーボンナノチューブ(CNT)は、異種物質を容易に内包できるだけでなく、適切なチューブ構造(直径およびラッピング角)を選択すれば光通信に有用な1.5μmの波長で発光できる。しかしながら、この直径領域のCNTでは、類似したチューブ構造および束になりやすい性質のために、その構造選別が困難である。そこで、CNTを孤立分散しやすく、CNTの構造を高感度に認識するポリマーラッピングという手法に着目して、構造選別を行ってきた。 本研究では、フルオレン‐ピリジン交互ポリマー(PFOPy)を特定のCNTへ選択的に張りつけることで、この1.5μm発光の半導体CNTを選択的に分離できることを明らかにしてきた。このPFOPyで構造選別したCNTの直径分布は、極端に狭く、0.15nmである。この顕著な直径選択性に関する理解を深めるために、PFOPyラッピングにおける構造選別能力の溶媒依存性を調べた。その結果、トルエンからキシレンに溶媒を変えるとラッピング角選択性と共に発光ピークシフトも抑制されるが、直径選択性は維持されたままであることが明らかになった。これにより、ポリマー骨格の波状形状が直径選択性に寄与する一方で、溶媒の変化に伴うポリマー骨格のソフト化がラッピング角選択性を変化させていると解釈できた。この成果は、構造を識別可能な分子認識ポリマーを設計する際に有益な知見である。また、ポリマーラッピングを利用して、フラーレン内包CNTの構造選別にも成功した。フラーレン内包CNTの場合、同一のフルオレン系ポリマーを使用しても、選択的に分離できるチューブ構造が空のCNTの場合と異なった。これは、フラーレンをCNTへ内包することで、ポリマーとCNT間の構造およびエネルギーレベルの整合性が変化していることに起因していると考えられる。それぞれの成果について論文発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、ポリマーラッピングにおける構造選択性の発現に関して、ポリマーとCNTとの構造整合性だけが注目されてきた。しかし、本研究によってPFOPyの顕著な直径選択性の起源を解明したことで、構造およびエネルギーレベルの整合性やCNTに張り付けたポリマーによるCNTの歪という新たな視点を考慮して構造選別に有用な分子認識ポリマーを設計することが必要であると分かった。さらに、物質内包型CNTのポリマーラッピングによって、特定の半導体的特性を有する物質内包型CNTを選択的に分離できるようになった。これは、内包物質の構造や特性の均一性を高めることに寄与する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた知見を活かし、特定の配列構造を有する分子集合体をCNTに内包させることで、特異な発光特性が発現することを実験的に明確に示す。さらに、その成果を活かして次の展開へ繋げる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際会議における招待講演等によって、学会発表回数が本年度よりも次年度の方が増加するため。 成果を情報発信するために、次年度に開催予定の国際学会において発表することを予定している。
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Research Products
(4 results)