2012 Fiscal Year Research-status Report
化学溶液法における紫外レーザー照射時のナノ秒温度計測に基づく光結晶成長機構の解明
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24760608
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
篠田 健太郎 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 主任研究員 (10442732)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 塗布光照射法 / ELAMOD / その場計測 / エキシマレーザー / 酸化物薄膜 / プロセスモニタリング / 透明導電膜 / ペロブスカイト酸化物 |
Research Abstract |
塗布光照射法では、紫外パルスレーザー照射時の数十ナノ秒程度のごく短時間における表面温度上昇が酸化物薄膜の低温合成に極めて重要な役割をはたすことが数値計算によりわかってきたが、電子顕微鏡断面観察による結晶成長領域との整合がとれないなど、光結晶成長機構には未解明な点があり、表面温度のナノ秒スケールでの実測が求められた。そこで、本年度は、高速応答の近赤外フォトディテクタ、バンドパスフィルター、集光レンズを用いて、紫外パルスレーザー照射時の試料表面からの放射光を検出する装置を試作した。本装置を用いて、シリコンウェハにパルスレーザーを照射したときの放射光プロファイルと数値計算プロファイルを対応させたところ、よい一致を示しており、計測装置の時定数が問題ないことを確認した。また、実際に、マンガン系ペロブスカイト酸化物薄膜作製時に基板にチタン酸ストロンチウム単結晶とアルミン酸ランタン単結晶を用いた場合の冷却挙動を計測したところ、チタン酸ストロンチウム上の方が冷却速度が小さいことがわかった。このように、本計測手法により、プロセス条件の差異が判別できるようになり、光結晶成長機構における光熱反応について考察することが可能となった。また、透明導電膜の一例として酸化インジウムスズ薄膜に異なるレーザー強度で紫外パルスレーザーを照射したときの放射光プロファイルと試料表面の原子間力顕微鏡像を対応させたところ、アニール、再溶融、アブレーションの状態を判別できることが確認でき、本手法がエキシマレーザープロセシングのモニタリングツールとしても有用であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、高速応答近赤外素子を用いた紫外パルスレーザー光を照射したときのナノ秒温度計測技術の確立を目標とした。レーザー照射時の放射光を検出し、計測装置の時定数も問題ないことを確認したことから、ナノ秒計測技術に目処をつけることはできた。次段階として得られた放射光を分光により絶対温度に換算することを検討していたが、換算前の検出波形の強度の相対変化やプロファイル形状からも興味深い観察事実を得られることがわかった。そこで、絶対温度換算をおこなうよりも、材料系の違いによる検出波形の変化を確認することがまず重要であると考え、この段階で計測装置を高度化する代わりに、当初想定していたマンガン系ペロブスカイト酸化物に加えて透明導電膜材料のインジウム系酸化物に対象を広げ、エキシマレーザーの照射強度と検出波形の強度及びプロファイルの相関をとることを優先した。その結果、エキシマレーザーによる酸化物薄膜の表面状態変化を検出可能なことを確認できたため、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、計測装置の高度化を行う。具体的には、波長1.3 μmの波長の半導体レーザーを導入し、紫外パルスレーザー照射時に酸化物薄膜の反射率、透過率がどのように変化するかを観察する。材料系としては、近赤外での反射特性がスズのドープ量によって大きく変わるインジウム系酸化物を用いる。得られた結果から、酸化物材料の光学特性などの各種物性値のその場計測が可能であるかを検証する。また、得られた放射光を近赤外の2波長に分光することにより、紫外パルスレーザー照射時の表面温度上昇を絶対温度で検出することを試みる。このとき、必要に応じて、温度校正実験にも取り組む。得られた結果は数値計算結果と比較することにより、その妥当性を検証する。そして、材料の光学物性や熱物性と結晶成長条件とを測定温度を軸に整理することにより、光熱反応の役割を定量化し、紫外パルスレーザー照射時の光結晶成長機構の解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、主な物品として、反射率や透過率の測定のための近赤外半導体レーザーや可視・近赤外高感度フォトディテクタを購入する。また、温度計測も含めたこれらの測定には、検出器の数量を大幅に増やす必要があることから、実験の進行状況に応じて、これら高感度フォトディテクタは3-5個程度購入する予定である。また、これらの装置をセットするために光学系も大幅な改良が必要であることから、光学用治具の購入も行う。データ処理量が多くなることが予想されるため、データ取得、解析、数値計算を行うためのA/Dコンバータ付きの高性能計測用パソコンも導入する。また、消耗品として、実験に使用する溶液、単結晶基板、レーザー用のガス等を購入する。旅費・その他経費は主として、研究協力者との打合せ、及び、学会発表、論文投稿など、成果発表に用いる。
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Research Products
(8 results)