2012 Fiscal Year Research-status Report
テーラードテクスチャリングによるマイクロ精密異形プレス加工のメゾトライボ特性制御
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24760609
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
清水 徹英 首都大学東京, システムデザイン学部, 助教 (70614543)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 精密プレス加工 / トライボロジー / テクスチャリング / マイクロ金型 / ダイアモンドライクカーボン / 超硬 / ボールオンディスク試験 |
Research Abstract |
全体の研究目標に対し,初年度は乾燥摩擦下のテクスチャリングの効果を解明することを大きな目的として,以下の研究実績を得た. 1. テクスチャ形状・寸法の決定に際しては,Bhushanの寸法効果モデルを導入し,精密プレス加工の面圧領域(100MPa~1GPa)における,「乾燥摩擦の寸法効果」が発現しうる接触長さを算出した.形状として,接触面積の算出が容易な矩形形状を採用し,超硬及びDLC薄膜を対象に,相手材として鋼材および純チタン材の機械的特性を用いて算出した.算出結果に基づき,構造幅約150μm以下および構造間隔約100μm以下を対象寸法に決定した. 2. 1で選定したテクスチャ寸法を付与する手法として,超硬基材にメタルマスクを固定し,その上から非晶質材であるDLC(Diamond Like Carbon)を成膜する手法を採用し,マスクの形状に沿ったDLC構造テクスチャ構造を作製した.同手法により,各種構造幅,構造間隔の異なるテクスチャードDLC膜の創製に成功した. 3. 塑性変形を含まない基礎的な摩擦摩耗試験として,ボールオンディスク試験を採用し,DLCテクスチャを施した超硬製ディスクの摩擦摩耗試験を実施した.その結果,テクスチャを施していない平滑DLC膜と比較して,テクスチャ化することで摩擦係数が低下するとともに,その変動が小さくなることを示した.一方で負荷垂直荷重の増大により,DLC膜の摩耗が促進され,摩擦係数が上昇する傾向が得られた.これに対し,各単一テクスチャに負荷される応力状態を有限要素解析(以下FEM解析)により算出し,構造間隔を狭小化することで負荷応力が緩和されることを明らかにした.これに基づき,実験的に構造間隔の狭小化の効果を検証した結果,構造間隔の狭小化により,摩擦係数が低下するだけなく,耐摩耗性も向上することを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
全体の研究目標に対し,初年度は,1.比較検討するテクスチャ形状・寸法条件の選定,2.比較検討するテクスチャ摺動工具の作製・加工条件の検討,3.基礎的摩擦摺動試験によるテクスチャリング効果の評価を行うことを当初の研究計画とした. これに対し,項目1.テクスチャ形状・寸法の決定に際しては,マイクロトライボロジー理論に基づいた寸法領域の算出がなされ,当初の計画案通りに遂行された. 一方項目2.テクスチャ形状の付与に関しては,当初超硬基材に直接FIB加工やレーザー加工,放電加工等の種々の加工法により作製する計画案を示したが,①加工精度が超硬粒子径に大きく依存する点,②種々の加工法の適用により,対象寸法による加工精度の相違がトライボロジー特性に外乱をもたらす等の懸念から,当初計画案より方針転換をした.しかし上記の通り,メタルマスクを用いたDLC成膜手法の採用により,テクスチャ寸法間のバラつきも少なくかつ高精度な表面テクスチャリングの付与手法が確立された. また,項目3.基礎的な摩擦摩耗特性評価では,当初計画案通り,スクラッチ試験による検討を試みたが,平面パンチにおける均一な面圧の負荷が困難を極めたため,方針転換を行い,ボールオンディスク試験を採用した.これにより,テクスチャリングの効果及びテクスチャ構造幅,間隔の影響を明らかにした.本検証に至っては,当初計画案にはないFEM解析による検討も行なわれ,次年度計画におけるFEM解析の足がかりとして有用な成果が得られた. 以上のように,年度当初に計画した上記3項目は達成され,その成果として,テクチャードDLC膜の非常に安定した低い摩擦係数が得られた.現在次年度に向けたマイクロハット曲げ試験機の設計開発に既に着手しており,当初の計画以上に研究が進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方策としては,初年度の基礎的摩擦摩耗試験による成果を,実際の塑性変形下におけるトライボロジー特性制御に応用し,マイクロ異形精密プレス加工におけるその効果を解明するため,以下の通りに研究を遂行する. 1. マイクロハット曲げ摩擦摺動試験によるプロセストライボロジー評価,2. マイクロ異形プレス加工の有限要素解析(FEM)による摩擦応力分布の最適化計算、3. テーラードテクスチャ金型の創製とマイクロ異形絞り加工試験による成形性評価 項目1では、金属箔材の塑性曲げ変形を考慮した“プロセス”トライボロジーをより忠実に再現するため、マイクロハット曲げ型摩擦試験機を新たに設計する.曲げ金型の3次元曲面形状にDLCテクスチャを付与する手法を検討すると共に,テクスチャリングの効果及び構造間隔の影響を,摺動中の真実接触面積の変化や被加工材摩耗粉サイズの粒径分布を詳細に評価し検討を行う. 項目2では、種々の寸法を有する微細テクスチャを三次元空間的に最適配置するため,マイクロ異形絞り加工における金型面圧分布を,FEMにより算出する.同モデルを活用し,最適化ソフトウェアを用いて,成形品の板厚分布を均一化するための,金型表面の摩擦応力分布を解析する.これらの情報及び前年度に得られた各種テクスチャ寸法のトライボ特性に基づいて,テーラードテクスチャリングの最適配置を決定する. 項目3では、2.で設計したテクスチャリングの最適配置に基づいたメタルマスクを作成し,テーラードテクスチャリング金型を作製し,マイクロ異形絞り実験を行う.特に成形荷重および成形後容器の板厚分布等の材料流動性と形状精度を評価し,従来のマイクロ金型との比較によりその有用性を検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度では,各種テクスチャ形状の作製のための製作加工費を予算として計上したが,テクスチャリング手法の方針転換により,メタルマスクの購入に留まり,その分の残余額を次年度のハット曲げ試験機の製作費として計上することとした. 本ハット曲げ試験機開発に当たり当初は,申請者が先行研究にて開発した金属箔材摺動型摩擦試験機の改良設計を計画していたが,寸法的制約及び検討条件における制約の問題から,新たに単独のマイクロハット曲げ試験機を開発することとした.特に摺動中における材料流動のその場観察を可能にするため,マイクロスコープレンズを導入可能な設計とし,さらに接触電気抵抗測定による真実接触点数の測定を試みる. 本装置の開発に当たり,各種材料費,センサー測定機器等の購入費,加工依頼費用等の諸費用を消耗品費より計上する.また真実接触点数を測定するための電気抵抗測定機器を備品費より計上する.さらに,最終的なマイクロ異形絞り加工を行うための実験型を外注依頼し,その費用を消耗品費より計上する.また金型へテクスチャリングを行うための,特殊なメタルマスクの製作費を消耗品費より計上する.テクスチャリングのためのDLC成膜にかかる各種消耗品(アノード電極,フィラメント電極,洗浄機材,ポンプ消耗品他)の諸費用も消耗品費より計上する. ここで得られた成果に関して,国内旅費・外国旅費を用いて,国内外の学会に参加し成果報告を行う.さらに本年度同様,次年度の残額を用いて論文投稿も行う.謝金等により本論文投稿に当たる英文校閲も依頼する.
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