2012 Fiscal Year Research-status Report
新規液相成長法による単結晶窒化アルミニウムの作製と成長機構の解明
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24760611
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安達 正芳 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90598913)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 窒化アルニミウム / 液相成長 / Ga-Alフラックス |
Research Abstract |
本年度は,導入窒素ガス中の酸素がAlN結晶成長に及ぼす影響を調べた.また成長したAlNの極性を収束電子回折法により決定した.さらにそれらの結果を併せ,Ga-Al液相成長法における結晶成長メカニズムを考察した. 導入窒素ガス中の酸素が成長に及ぼす影響を調べた実験では,ジルコニア式酸素ポンプやマグネシウム等の金属を脱酸剤として使用した脱酸炉を使用し,窒素ガス中の酸素分圧を10の-1乗から10の-17乗Paまでの範囲で制御して,AlNの成長実験を行った.その結果,10の-1乗Paの酸素分圧の窒素ガスを導入すると基板全面にAlNが成長するが,酸素分圧を低下させていくとともに,基板上で部分的に成長しない領域が現れ,さらに10の-12乗Pa以下の酸素分圧の窒素ガスを供給するとAlNが成長しないことがわかった.また,収束電子線回折法による極性判定を行った結果,テンプレートとして用いた窒化サファイア基板は窒素極性を有するのに対し,液相成長した層はアルミニウム極性を有し,窒化サファイア層と液相成長層の界面で極性が反転していることがわかった. これらの結果を元に,結晶成長メカニズムを考察した.窒素極性のAlNはアルミニウム極性のAlNと比べ,化学的に不安定であることが知られている.酸素分圧の高いガスを導入した場合,窒素極性のAlNの表面に酸素原子が取り込まれ,酸素原子を中心に8面体構造を作るため,極性がリセットし,その後アルミニウム極性のAlNが成長すると考えられる.一方,低い酸素分圧のガスを導入した場合,極性反転が起こらず窒素極性のAlNがGa-Al液相に接することになり,不安定な窒素極性AlNが液相中にメルトバックしたため,AlNが成長しなかったと考えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度は研究計画に示した通り,Ga-Al液相成長法のパラメーターを振った成長実験を行い,本手法の確立を目指した研究を進めることができた.特に導入窒素ガス中の酸素の分圧によって成長の可否が変化することを明らかにし,さらにその結果を説明する成長モデルを構築できたことは,本手法の実用化に向け,極めて重要な結果である. 今年度の結果により,テンプレートとして用いるAlNは化学的に不安定なN極性であり,その薄いN極性AlNがメルトバックする前に酸素を供給できないとAlNが成長しないことがわかった.現在は系が小さく,基板も10mm×10mmと小さいため,AlNの成長に必要となる酸素が全体に供給されているが,今後,2インチ基板上への成長を考えた場合,ベースとなる窒素ガスの中にppm程度含まれた微量な酸素を基板全体へ均一にいきわたらせることが課題となる.今年度の知見をもとに,来年度2インチ基板上成長を目指す.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,本手法の確立へ向けた研究を続けるとともに,本手法におけるフラックスの流れの解析を行い,本手法の理解を深め,実用化に向けたスケールアップを目指す. AlNの2インチ基板上への成長に関して,上記の通り基板全体への酸素の供給が必要であることがわかった.そのため来年度は,まず導入窒素ガス中の酸素を基板上全面へ供給するための研究をおこなう.特に,ガス流量,フラックスの流れ,基板ホルダーの回転速度など,これまでに変更してこなかったパラメーターを変更し,基板上全面への酸素供給を目指す.また,実験のみならず,熱流体シミュレーションを用いた流体解析を行い,フラックス中へ導入したガスがどのように振る舞うかを予測し,基板上全面に均一にガスが供給できる条件および基板保持治具の改良などを行う. また,上記の研究と並行し,フラックスの温度および組成を振った実験も行う.特にこれまでに行ってこなかった高Al組成のフラックスを用いた成長について,研究を行う. 過去の筆者らの研究で,フラックスの組成はGa-40mol%Alが最適であることがわかっていた.しかしながら,これは基板と導入ガスが直接接触しない条件で行った結果であり,最近の筆者らの研究により,基板と導入ガスを接触させた場合,アルミニウムの濃度を上げたほうが高い成長速度でかつ高配向なAlN成長の実現が期待できることがわかった.そこで本年度は高Al組成フラックスを用い,また成長温度を振ることで,高速・高配向成長を目指した研究を行う. これら2つの研究の結果を併せ,均一かつ高速成長できる結晶成長条件を決定し,2インチ基板上へのAlN成長を実現する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画の中で,熱流体シミュレーションに関するパソコン,およびソフトは今年度導入した.来年度は実際の結晶成長実験に必要なサファイア基板や耐火物,Ga金属試料などを購入する.特に2インチ基板上成長ではこれまでのよりも多くのフラックスが必要となる. また,2013年秋および2014年春の応用物理学会への参加,および5月に台湾で開かれるAsia-Pacific Workshop on Widegap Semiconductor,さらに8月にアメリカで開かれるInternational Conference on Nitride Semiconductorsへ参加し,研究発表を行う. また,成果を発表するための論文投稿費としても使用する予定である.
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