2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノ粒子‐生体膜界面における表面修飾金ナノ粒子の生体膜内侵入メカニズムの解明
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24760624
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
仲村 英也 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00584426)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 |
Research Abstract |
平成24年度は、はじめに、金ナノ粒子とモデル生体膜間の相互作用計算を可能とする分子動力学計算モデルの構築に取り組んだ。まず、表面修飾金ナノ粒子の分子構造計算を行った。はじめに、原子挿入法ポテンシャルを用いたモンテカルロ計算を用いてエネルギー的に安定なコア金粒子の結晶構造を決定した後、Simulated Annealing 法を用いた計算手法によりアルカンチオールで表面修飾された金ナノ粒子の分子構造を計算した。その後、作成した表面修飾金ナノ粒子を生物物理の分野で開発された生体膜計算モデルに組み込み、ナノ粒子-生体膜界面の分子動力学計算を実施した。ここで、モデル生体膜は、負帯電リン脂質を含むリン脂質2重膜とし、実際の生細胞の電荷特性(負帯電)を模擬した。 以上で構築したモデルを用いて、表面修飾金ナノ粒子-生体膜界面の相互作用現象の分子動力学解析を行った。特に粒子表面物性がナノ粒子-生体膜間相互作用に及ぼす影響について検討を行った。はじめに、金ナノ粒子の生体膜透過性を制御する上で重要な因子の一つである粒子表面電荷に着目し、その影響について検討したところ、電気的に中性および負帯電性金ナノ粒子とは異なり、正帯電性金ナノ粒子は生体膜を引き付け生体膜構造を変形させながら生体膜内部へと侵入していくことが分かった。次に、正帯電性金ナノ粒子の表面電荷密度を変化させて検討を行った。その結果、表面電荷密度を増大させると生体膜へ侵入しやすくなるが、過度にナノ粒子を正帯電させると生体膜を破壊してしまうことを明らかにした。さらに修飾分子(アルカンチオール)の炭素鎖長を変化させることで、金ナノ粒子の侵入挙動が変化することが分かった。炭素鎖長が短い場合はリン脂質の親水部と強く相互作用をするが、炭素鎖長が長くなるにつれてリン脂質の疎水部と強く相互作用しながら生体膜内部へと侵入していくことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、金ナノ粒子‐生体膜間相互作用の分子動力学計算を実施するための基礎となる計算モデルの構築が最も優先されるべき目標であったが、これを着実に達成することができたことから、本研究は現在まで当初の計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討から、ナノ粒子が生体膜内に侵入し粒子の物性によっては膜欠損を引き起こす様子をシミュレートすることができた。しかしながら、既往の実験研究で観察されているような、ナノ粒子が生体膜全体を“透過”する様子はシミュレートできていない。そこで来年度は、この透過過程をシミュレートし、その透過メカニズムを解明することを目指す。これと並行して、計算結果の妥当性を検証することを目的として、蛍光色素でラベルした巨大ベシクル(GUV)および金ナノ粒子を合成し、粒子のGUV膜透過性を共焦点レーザー顕微鏡で観察・評価する実験も実施する。その後、粒子の生体膜透過能と粒子物性の関係について詳細に検討し、金ナノ粒子の生体膜透過に及ぼす粒子物性の作用機構について系統的な知見・理解を得ることを最終目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は主に、消耗品として計算機の記録媒体等を購入する予定である。また、本研究成果の発表および意見交換・情報収集を目的として、シンガポールで開かれる国際会議(APCOM2013)に参加する予定である。さらに、予定している実験検討において必要な試薬等を消耗品として購入する予定である。
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Research Products
(6 results)