2012 Fiscal Year Research-status Report
Liイオン電池を代替する次世代高性能燃料電池の開発
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24760628
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
辻口 拓也 金沢大学, 機械工学系, 助教 (10510894)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 燃料電池 / 直接ギ酸形燃料電池 / 物質移動 / 出力低下 / 撥水性多孔質体 |
Research Abstract |
本研究ではLiイオン電池の代替となる高性能直接型ギ酸燃料電池(DFAFC)の開発に取り組んでいる。DFAFCは高出力が得られ、エネルギー密度が高い電源として期待されているものの、発電時間の経過に伴い出力が大幅に低下する。この問題は燃料極の触媒被毒と空気極における水の蓄積による酸素供給阻害(フラッティング)に起因するものであり、本研究は3年後に出力低下を抑制したDFAFC単セルを開発するものである。 当該年度は、空気極の出力低下抑制が可能な電極構造の高度化に取り組んだ。これまでの検討で、空気極に撥水性多孔質体を挿入することでフラッティングの抑制が可能であることを明らかにしていたが、セル内部での物質移動についての検討が乏しくかった。そこで、当該年度は出力低下抑制効果の向上を狙い、DFAFCセル内部の物質移動解析を行った。その結果、電流密度の増加に伴い、燃料極から空気極へ移動する水の流束が著しく増加し、フラッティングによる出力低下が顕著になることを明らかにした。また、電解質膜の厚さや燃料濃度が水の透過流束におよぼす影響を検討したところ、電解質膜厚さが厚い場合、燃料濃度が濃い場合に水の透過流束が大きくなることを明らかにした。これらをふまえ、空気極に挿入する撥水性多孔質体の撥水強度を増加させたセルを作製し、異なる電解質膜厚さや燃料濃度で試験を行った。その結果、いずれの場合でも、空気極に蓄積する水の排出速度が増加し、出力低下の抑制効果が増加することを明らかにした。最も出力低下抑制効果の大きい条件では、従来80%程度の出力低下があったのに対し、出力低下を10%程度まで低減することに成功した。一方、次年度以降検討予定の新規被毒抑制が可能な燃料極触媒の作製方法に関しても予備検討を行い、高い活性が得られる触媒合成方法を確立したので、次年度以降は燃料極触媒の被毒抑制に着手する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3年でDFAFCの燃料極、空気極の出力低下を抑制するものであり、平成24年度に空気極出力低下を、平成25年度に燃料極出力低下を抑制し、平成26年度にはこれらを併せた高性能DFAFCを開発するものである。当該年度で達成予定であった、空気極構造体の最適化についてはおおよそ目標通り達成することができたため、当該年度の目標はおおね達成できたと考えている。しかしながら、次年度以降に取り組む予定である、燃料極触媒開発に関しては、申請者が研究機関を移動したこともあり、触媒担体の作製に向けた装置作製等の準備が当初の予定よりいささか遅れている。一方で、高分子凝集剤を使用した触媒作製に関しては、高い活性が得られる触媒の調整方法を明らかにすることができた。そのため、次年度以降に検討予定である高分子安定化剤を用いた触媒の被毒抑制効果についての準備に関しては行うことができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は燃料極触媒の被毒抑制が可能な触媒担体の作製およびその評価を行う。触媒担体には、TiO2ナノファイバ-やNiOナノファイバー等を用いる。これらの作製には静電紡糸法を用いる。なお、装置は現有のものを用いる予定であったが、申請者の研究機関移動に伴い、新規に作製する必要が生じたため、装置の製作から開始する予定である。静電紡糸により均一な径で比表面積の大きなナノファイバーが得られるため、得られたナノファイバーにPdやPtRuなどを担持し、これらが出力低下抑制効果に及ぼす影響について検討する。また、担持方法や担持量等の最適化も行う。これと並行して、触媒の粒子径と触媒被毒の関係についても調査する。触媒粒子径の制御にはポリビニルピロリドンやポリビニルアルコールなどの高分子安定化剤を用いる予定である。これにより粒子径が均一で、凝集の少ない触媒を作製できると考えている。平成24年度に高分子安定化剤を用いた触媒作製の方法を確立することができたため、平成25年度はこの触媒の被毒耐性の検証を進める予定である。これらの試験では、まず3電極セルによる触媒評価を進める。その後、3電極セルで得られた指針をもとにDFAFCセルの作製へと移行する予定である。 平成26年度は前年度までに得られた知見を集約し、燃料極、空気極ともに出力低下の抑制が可能なDFAFCセルの作製に取り組む予定である。触媒評価のみでは検討することのできない物質移動の影響などを多角的に評価し、実用化をにらんだセル設計を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度はマスフローコントローラーやデータロガー、燃料電池材料等の購入に予算申請を行っていたが、PEFCハードウェアの金額が予想よりも高かったこと、申請者が研究機関を移ることなどから購入を控え、同一研究室のメンバーである中川教授の協力のもと、設備を借用して試験を行った。そのため、申請予算額よりも少ない金額で研究を遂行した。平成25年度以降は、研究機関が変わり、現有設備が大きく変わったため、消耗品や備品の購入に当初予算額以上の金額がかかると想定している。例えば、静電紡糸に使用する高圧電源やシリンジポンプ、シリンジなどは、申請当時には購入予定がなかったものの、改めて購入する必要が生じる。この他にも、流量計やポンプ等の少額の設備も購入する必要が生じる。しかしながら、当初配分予算内での軽微な変更で、研究を推進していくことができると考えている。従って、平成25年度には平成24年度残額(395千円)と平成25年度計上予算(1000千円)を使用する予定である。使用用途としては、静電紡糸関連機器(400千円)、薬品、電池材料(500千円)、実験器具(温調器、流量計、データロガー等)(395千円)、旅費(100千円)程度を予定している。
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Research Products
(9 results)