2012 Fiscal Year Research-status Report
安定的で効率的な推定制御のための適応型非線型回帰分析手法の開発
Project/Area Number |
24760629
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 弘昌 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00625171)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プロセス管理 / ソフトセンサー / モデルの劣化 / 適応型モデル / 時間差分 / SVR / 時間変数 |
Research Abstract |
化学プラントにおいては、測定困難なプロセス変数を推定する手法として、ソフトセンサーが広く用いられている。ソフトセンサーとは、オンラインで測定可能な変数xと測定困難な変数yの間で数値モデルを構築し、yの値を予測する方法である。yの実測値の代わりに予測値を用いることで、迅速かつ連続的な制御が達成される。しかしソフトセンサーはプラント状態の変化によって予測精度が劣化してしまう。このソフトセンサーの劣化に対応するため、多くの適応型モデルが開発されている。本研究ではモデル劣化をxとyの変化の仕方と変化の速さの観点から分類し、その分類結果を踏まえて各適応型モデルの特徴を考察した。考察内容はシミュレーションデータおよび実プラントデータを用いて検証された。 モデル劣化の中でx・yの値がシフトする劣化に対して有効な変数の時間差分の間で構築される適応型モデルにおいて、本研究ではクロスバリデーションを応用することで最適な差分間隔を自動的に決定する手法の開発に成功した。複数のプロセスデータ解析を通して、従来の差分間隔による時間差分モデルと比較して予測性能が向上することを確認した。しかし時間差分モデルはxとyの傾きの変化に対応できない。そこで傾き変化に対応するため非線形回帰分析手法であるsupport vector regression (SVR) と時間変数を組み合わせた新規ソフトセンサー手法を開発した。xに時間を表わす変数を追加して直近のプロセス特性の時間的変化をモデル化することで、将来のyの値を適切に予測できる。また時間的に非線型なプロセス特性の変化にも対応可能である。ポリマー重合プラントにおける運転データを用いた解析を通して、提案手法によりプロセス特性の時間変化に追随して精度良く予測できることを確認した。さらに変数間の非線形性およびデータ分布を考慮にいれた予測誤差の推定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル劣化の種類を分類してその分類結果を踏まえて各適応型モデルの特徴を考察することで、あるプロセスのすべての状態において万能に使用可能な適応型モデルは存在せずプラントの状態によって各モデルの精度の優劣は変化することが明らかになった。傾き変化について、計画では複数のsupport vector regression (SVR) モデルを用いて急激に時間的に変化するプロセスに対応する予定であったが、時間変数で直近の時間的変化に対応できることに着目し、SVRモデルの更新と時間変数というアプローチに変更した。これによりシミュレーションデータだけでなく実際のプラントデータにおける予測精度の向上を達成した。さらに、値のシフトについても時間差分モデルにおける差分間隔を最適化する方法を考案し、ソフトセンサーの予測能力を従来と比較して向上させることができた。以上より、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
Support vector regression (SVR) モデルの更新と時間変数により時間的にプロセスが変化する場合でも適切に予測性能を維持することが可能となった。ただSVRモデルのパラメータを事前に決定する必要がある。そこで様々なパラメータの決定手法を検討し、時間変数と組み合わせてプロセスの状態変化を予測する上で最適なパラメータを自動的に決定する手法を確立する。ただプラントの状態ごとに最適なSVRモデルのパラメータは異なると考えられる。そこで様々なパラメータで構築された複数のSVRモデルの中から、プロセスの状態ごとに最適なモデルを選択したり、モデルの予測値を組み合わせて最終的な予測値としたりする方法を考案する。このように事前に複数のモデルを準備することで、予測する際に予測データを各モデルに入力して得られる複数の予測値を総合的に評価して最終的な予測値とする手法がアンサンブル学習法である。複数のSVRモデルを並行して更新し、予測する際はそれらのモデルから得られる予測値を考慮して最終的な予測値とする。これまで時間変数の追加によりプロセスの時間的な変動に対応可能となったため、アンサンブル手法と組み合わせることに複数のプロセス状態における高精度予測が達成できると考えられる。 さらにアンサンブル学習により得られる複数の予測値のばらつきを評価することで予測誤差を推定することは以前に成功しているため、本研究ではその際のアンサンブル学習の知見を参考にして。予測値だけでなく予測誤差を精度良く推定する手法を提案する。アンサンブル学習により予測値のばらつきを求めることができるため、ばらつきから予測誤差を推定することが課題となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
各種データや結果の保存、バックアップのための外付けハードディスクおよび効率的に提案手法の開発を進めるための図書やソフトウェアを購入するために15万円使用する予定である。 研究成果を広く発表するため、論文別刷代として10万円、国内・国外発表旅費として55万円使用する予定である。
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Research Products
(10 results)