2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24760633
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
太田 英俊 愛媛大学, 理工学研究科, 助教 (90532094)
|
Keywords | フェノール / 水素化脱酸素 / 白金 / レニウム / ジルコニア / アルキルベンゼン / 水中反応 / リグニン |
Research Abstract |
リグニンは地上に最も大量に存在する天然の芳香族高分子であり、リグニンから芳香族および脂肪族化学品をつくることができれば、バイオマスを基盤とした化学産業が大きく前進する。しかしながらリグニンは分解が難しく、リグニンから化学品原料をつくる技術の開発は遅れている。本研究は、地上に最も大量に存在する芳香族高分子であるリグニンから工業的に重要な芳香族および脂肪族化学品をつくるための触媒反応の開発を目的とした。本研究計画では、まずリグニンの分解により得られる重要な化合物群であるフェノール類の水素化脱酸素反応により工業的に重要なアルキルベンゼンを合成する反応の開発を行い、その後に本反応を用いた実リグニンの分解反応を予定した。その結果、平成24年度にはジルコニアに担持した白金とレニウムからなるナノ粒子触媒を用いることで4-プロピルフェノールの水素化脱酸素反応が水中で進行し、80%以上の高い選択率でプロピルベンゼンを与えることを見出した。本選択率は、水中で実施した反応としてはこれまでで最も良い値である。しかしながら、本反応は触媒の耐久性に問題があり、実リグニンを用いた反応にも適用できないことが明らかとなった。そこで、平成25年度は様々な分析法(XRD、EDX、XPS、XAFS、TEM、窒素及び一酸化炭素吸着)を用いて上記触媒の失活過程を明らかにすると共に、より耐久性の高い触媒の開発を目的として研究を行った。その結果、上記触媒は高温水中の条件下で触媒担体であるジルコニアが白金ナノ粒子を被覆することにより失活していることが示唆され、触媒性能を改善するための重要な情報が得られた。上記のように、当初の研究計画を完了することはできなかったが、水中でリグニン由来フェノール類を過去最高の選択率でアルキルベンゼンに変換する新しい触媒の開発に成功し、触媒失活の過程を研究することで触媒改良に有用な情報を得た。
|