2012 Fiscal Year Research-status Report
収縮運動能を有するヒト骨格筋細胞のインビトロ培養系の開発
Project/Area Number |
24760650
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長森 英二 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70394898)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 筋芽細胞 / 繊維芽細胞 / 張力測定 / コラーゲン |
Research Abstract |
電気刺激に応答し収縮運動するヒト骨格筋細胞のin vitro培養を可能にすることを目的とする.活性張力を有するヒト骨格筋細胞培養系は,申請者が従来研究で開発した骨格筋細胞活性張力測定技術(Biotechnology and Bioengineering, 106(3):482-489 (2010))と融合することで,筋ジストロフィーなどの骨格筋疾患の治療薬スクリーニングに有用であると期待される. ヒト骨格筋由来の筋芽細胞と線維芽細胞の混在比率を変えた共培養により,活性張力を有するヒト筋管細胞(張力の定量評価が可能な筋管細胞)のin vitro培養が可能であるか検証するため,今年度はまず,ヒト骨格筋由来の筋芽細胞群に含まれる筋芽細胞および線維芽細胞を,それぞれ高い純度で培養する方法について検討した.筋芽細胞群の培養では,筋芽細胞を高い純度で維持するために,ラミニンコート面の使用などが推奨されるが,ある種の細胞株ではラミニンコートを施さない面で繰り返して継代を行うことで繊維芽細胞が優先的に増殖し,高い純度の線維芽細胞を含む群が得られることを見出した.次に,高い純度で筋芽細胞を維持して培養することが難しい株も存在するため,筋芽細胞群から筋芽細胞を選択的に分離する手法を検討した.具体的には,抗CD56抗体と,抗体認識された細胞を分離可能な磁気分離ビーズを用いた.リンパ球やニューロンなどの他の細胞もCD56を発現するが、線維芽細胞は発現しないため,CD56は筋芽細胞群において筋芽細胞を認識するマーカーとなり得る.以上の検討により,骨格筋由来の筋芽細胞と繊維芽細胞を別々に高純度で培養することが可能になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度中に実施する項目として,「ヒト筋芽細胞とヒト線維芽細胞の共培養による“動くヒト筋管細胞”の達成可否の検証」,を挙げていたが,前述のように今年度は,ヒト骨格筋由来の筋芽細胞群に含まれる筋芽細胞および線維芽細胞を,それぞれ高純度で培養する方法について検討することに時間を要したため,実際に混在比率を変えた共培養による検証に至らなかった.この原因として,表皮由来の繊維芽細胞等は市販品を入手可能であるが,骨格筋由来の繊維芽細胞は入手できないことが判明したことがある.しかしながら,今年度の検討によって,必要な実験材料(それぞれ高い純度で培養された筋芽細胞と線維芽細胞)はそろったため,今後の進捗は計画通り可能である.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の検討で得られた,高い純度の筋芽細胞および繊維芽細胞を含む群を用いて,実際に両者の混在比率を変えた共培養実験を行い,活性張力の検出と,活性張力を得るために最適な混在比率を明らかにしたい.また,申請時の計画にのっとって,得られたヒト骨格筋細胞が生体内の筋肉と比較して同様な生理応答(収縮運動特性)を示すか,電気刺激を行う周波数等を変えることで,検証すると同時に,今回の検討で張力が得られるメカニズムの検証作業にも速やかに着手したい. もし,上記の仮説に基づいて活性張力が得られなかった場合にも,申請時の計画書に記載のとおり,様々な添加因子を用いて筋分化を促進することで活性張力を検出する検討を行う.また,これに並行して,張力検出系の高感度化(半導体ひずみ計からのデータ取得法の改善)によってヒト骨格筋細胞からの活性張力の検出が可能であるか,検討する. 以上を通して,骨格筋疾患の治療薬スクリーニングに用いるという大目標を達成するために必要な要素を整え,本研究課題の目標達成としたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
骨格筋筋芽細胞群の培養に関連して、市販の培地、血清、培養面コーティング用の細胞外マトリックスなどの試薬を使用する。筋芽細胞および繊維芽細胞の分離のために、市販の抗体、磁気分離ビーズなどの試薬を使用する。共培養終了時における各細胞の動態を把握するため、筋芽細胞および繊維芽細胞を染色するための抗体、関連する蛍光試薬などを使用する。共培養細胞が発生し筋分化に影響することが知られるサイトカイン類、細胞外マトリクスの定量に、各種検出・測定キットを使用する。共培養で得られた組織からの活性張力を検出するため、半導体歪み計などの消耗品を使用する。本課題で得られた成果の公開のため、必要最小限の旅費や論文投稿費用の使用を予定している。
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