2013 Fiscal Year Research-status Report
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24760658
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
桑原 聡文 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30601033)
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Keywords | 超小型人工衛星 / 姿勢制御 / 地上評価環境 / 信頼性向上 / 短期開発 |
Research Abstract |
平成25年度は当初の研究計画において設定した4つのステップのうちの3つ目にあたる、静的閉ループシミュレーション環境の構築に重点的に取り組んだ。まず、H24年度に整備を開始したモジュール化フロントエンドを用いて、同じくH24年度に研究開発を行ったソフトウェアシミュレーション環境に超小型人工衛星(RISING-2)の地上評価用ハードウェア(搭載機器と同等の仕様)を接続することによってHardware-In-The-Loop-Simulation(HILS)環境を構築した。この環境においてシミュレーション環境内のソフトウェアモデル群と衛星搭載ハードウェアの実機モデルが正常に通信できることの確認を行った。また、モジュール化フロントエンド内の電算処理のリアルタイム性が適切であることの確認も行った。これにより、シミュレーション環境とモジュール化フロントエンドの設計の妥当性を検証することができた。次に姿勢決定に必要となる搭載機器である恒星センサへの模擬入力信号を生成する簡易恒星シミュレータを開発し、上記環境に統合した。これにより恒星センサの光学系の性能評価が可能となった。この環境を用いて静的閉ループシミュレーションを実施し、その性能を評価した。以上から、3つ目のステップで掲げた目標は完全に達成することができた。 これと並行して動的閉ループ環境の構成要素となる空気浮上ベアリングテーブルの研究開発を実施した。具体的にはまず重心位置調整機構、電源供給装置、無線通信装置の開発、及びテーブルの姿勢検出・評価ソフトウェアの開発を行った。次に空気浮上ベアリングテーブルの姿勢情報を上記シミュレーション環境へフィードバックするよう通信系統を統合し、動的閉ループシミュレーションを実施する環境の整備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は当初の研究計画を達成するために必要となる環境の整備に取り組み、平成26年度の活動に必要となる条件を整えることができた。当初の研究計画において設定した4つのステップのうちステップ2,3を達成することができた。当初は当研究室で開発が進んでいる超小型人工衛星第三号機(RISESAT)を用いたHILSシミュレーションを予定していたが、平成25年度は第二号機(RISING-2)を用いたシミュレーションを実施するに留まった(ただしいずれの場合においても研究の本質は変わらない)。よって「おおむね順調に伸展している」と評価する。今後4つ目のステップである動的閉ループシミュレーション環境の実運用のためには、空気浮上テーブル上に搭載した角速度センサの情報を衛星搭載電算装置にフィードバックすると共に、搭載電算機からの制御コマンドを、同じくテーブルの上に搭載された姿勢系アクチュエータ(リアクションホイール)に伝達できるようにしなければならない。この作業は平成26年度に実施する。また1つ目のステップであるSoftware-in-the-loop-Simulation環境の整備はほぼ完了しているものの、実際の搭載ソフトウェアを用いた詳細な動作確認が実施できていない。よってこの作業も平成26年度に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度にはステップ4である衛星システム全体を対象とした動的閉ループシミュレーション環境を構築すると共に、ステップ1のSILS環境の実証と性能評価を行う。以上により、所期の研究目的を全て達成する。 本研究で構築する環境は、人工衛星開発の進行に合わせてステップ1から4へとコンフィギュレーションを発展させながら使用できるところが特徴である。本研究は現行の超小型人工衛星開発プロジェクトの進行に沿いながら環境の開発・評価を実施していく予定であり、まずはステップ4の達成を第一の目標として設定する。空気浮上テーブルの設備は超小型人工衛星RISESATへの適用を想定して開発が進行している。よってH26年度にはRISESAT衛星を対象にステップ4を実施する。当初の計画にあったセンサ入力模擬装置に関しては、H25年度の段階で恒星センサのための光学的な模擬入力信号発生装置を開発した。H26年度は、これに加え地磁場模擬装置の開発を検討している。これにより磁場センサの極性の確認や性能評価が可能になる。 ステップ1に関しては、いかに搭載ソフトウェアの原型を維持した形で、SILS環境内で動作確認を実施できるかが重要になる。RISESAT衛星の実際の搭載ソフトウェアを対象に、SILS環境での動作確認を順次実施し、SILS環境の性能及び制限を確認する一方で、SILS環境での評価のしやすさを予め考えた上での搭載ソフトウェア、及び電気的アーキテクチャの設計方法に関して検討を進める。 RISING-2衛星に関しては上げ後に地上におけるシミュレーション結果と、軌道上データを比較することにより開発した環境の性能評価を試みる。本研究で構築した環境はRISING-2の運用支援にも使用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度の研究を効率的に推進したことに伴い次年度使用額が発生した。 H25年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額はH26年度に有効に活用する予定である。まず、実時間シミュレータを設置する。これは研究開発に伴い徐々に複雑化してきたシミュレーションソフトウェアの実時間性の確保のために必要となる電算装置である。周辺機器との通信、及び環境変数の表示を速やかに行える仕様とする。次にモジュール化フロントエンドを拡張する。これにより、搭載二次電池シミュレータや、模擬電子負荷の制御、環境内のハードウェアの状態のモニタリングを可能にする。いずれもより軌道上の実際の状況に合わせたシミュレーションを実施するために必要となる。また、人工衛星運用装置も導入し、人工衛星の実運用、及び運用支援にも使用できる環境を整える。研究の成果は適宜学会等で成果発表を行う。
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