2012 Fiscal Year Research-status Report
埋込型プラズマアクチュエータによる空力騒音の効率的かつ効果的な抑制
Project/Area Number |
24760664
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
稲澤 歩 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (70404936)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プラズマアクチュエータ / トレーリングエッジノイズ / 流れの不安定性 / 空力音 |
Research Abstract |
本研究では,これまではく離流れや鈍体後流などの大規模な流れの制御に用いられてきたプラズマアクチュエータを,より敏感に応答する層流境界層流れの安定化制御に適用し,不安定波動の成長に起因する翼後縁から放射される線スペクトル的なトレーリングエッジノイズの抑制を実験的に試みている. 従来のプラズマアクチュエータを用いた流れの制御では,より大きな壁面流れを誘起するために,表面電極後方に微小な段差を設けていたが,境界層流れにおいては,そうした段差は,たとえ微小であっても,攪乱の受容や流れの不安定化を通して境界層の乱流遷移を促進してしまう.従って,アクチュエータ自身が流れを変化させてしまうため,最適な制御位置の検討は困難であった. 平成24年度はそうした従来型アクチュエータの問題点を克服し,最適な制御条件を明らかにすべく,表面電極を壁面に埋め込んだ「埋込型アクチュエータ」の誘起速度の特性と,それを用いたトレーリングエッジノイズの制御効果について実験的に調べた.まず,アクチュエータが誘起する運動量は従来型アクチュエータよりも弱いものの平坦型アクチュエータでも壁面流れが誘起できることがわかった. 次に,平坦型アクチュエータをNACA0012翼の正圧面に設置したところ,いずれの翼弦位置に設置した場合でも,放射される空力音に変化はみられず,平坦型アクチュエータ自身は流れに対してほとんど影響を及ぼさないことがわかった.また,このアクチュエータを駆動したところ,逆圧力勾配が著しく増加する手前で壁面近傍流れをわずかに(主流速度の最大4%程度,0.8m/s程度)加速するだけで流れが著しく安定側へとシフトし,トレーリングエッジノイズの発生はほぼ完全に抑制できることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,平成24年度において,本研究で新たに用いる埋込型プラズマアクチュエータ(PA)の駆動特性の把握した後,実際に翼模型に設置(適用)し,従来型PAとの制御効果について比較しつつ,平坦型アクチュエータが境界層流れの遷移プロセスに影響を及ぼさずに,空力音(トレーリングエッジノイズ)の制御が可能であるかを調べる予定であった.研究実績で記載したとおり,以上の内容についてはほぼ予定通り実施することができたとともに,当初期待していた成果(制御効果)を得ることができた.なお,平坦型アクチュエータを用いた空力音の抑制効果は,実験を行った迎角,レイノルズ数全てに対して見られたため,バックアッププラン(三次元アクチュエーション)は実施していない.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は,「流れの安定化制御」から「撹乱受容点(前縁ごく近傍)制御」に軸足を移し,その制御がトレーリングエッジノイズの抑制に対してどの程度有効かを調べる.また,アクチュエータを三次元的に配置した場合の効果についても調べる.そして,得られた結果に基づいて,効果的な制御の鍵を握る要素を見いだし,最適な制御手法を提案と実証,さらには表面形状の工夫による受動制御の可能性についても検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,プラズマアクチュエータの製作プロセスを工夫することで,アクチュエータを長期間使用することが可能であったため,物品費(消耗品費)の使用が当初予定を下回った.平成25年度以降は,より製作と設置が難しくなる三次元形状や前縁近傍でのアクチュエータ設置を行うため,それに必要な材料購入と材料加工等に研究費を支出する予定である.
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Research Products
(3 results)