2012 Fiscal Year Research-status Report
不確かさの確率論的定量化法を用いたLESの非平衡壁面モデルの開発
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24760670
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
河合 宗司 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 国際トップヤングフェロー (40608816)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 数値流体力学 / 流体力学 / ラージ・エディ・シミュレーション / 高レイノルズ数流れ / 剥離流れ / 乱流 / 圧縮性流体 / 不確かさの評価 |
Research Abstract |
初年度の研究計画に沿って、高レイノルズ数乱流境界層を正確に予測するシンプルかつ物理ベースなLESの非平衡壁面モデルを提案した。本壁面モデルの構築では、log-layerにおける乱流の長さスケールがどう変化するかに基づき、壁面モデルに含まれる2つの大きなエラー要因(1. LES壁面近傍の格子点での数値エラー,2. 壁面モデルそのもののエラー) を特定し、そのエラーを排除するシンプルかつ物理的な方法を提案した。エラー要因1に関しては、LES壁面近傍の格子点における数値エラーの原因を明らかにし、今までの既存の研究方向性とは決定的に異なる物理ベースでシンプルかつ効果的な解決法を提案し、数値実験でその有効性を示した。更にその成果を基に、エラー要因2の解決法として、対流項や圧力項、粘性項のバランスを考慮する物理ベースなダイナミック非平衡壁面モデルを提案した。本非平衡ダイナミック壁面モデルは、対流項や圧力項の効果を考慮するRANS方程式を壁面モデル内で解くモデルとして、経験的なパラメータの導入やチューニング、複雑な制御理論を用いること無しに、高レイノルズ数乱流境界層を正確に予測した世界で初めての成果である。 またモデルの不確かさを確率論的に定量化し、モデルの評価・改良・確立へと応用する為の不確かさの定量化法の構築にも着手した。ここではKrigingモデルを用いたダイナミックサンプリング法を提案し、より少ないサンプル数で精度良く不確かさが評価可能になることをテスト関数を用いることで示した。 LESの壁面モデルに関する以上の成果は2編の学術雑誌論文としてまとめられ、Physics of FluidsのMost Read Articlesにも選出され、NASA Langley研究所で招待講演も行った。新しく提案した不確かさの定量化法は国際会議で発表し、現在学術雑誌論文への投稿を準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画であった、第1期(平成24年度 4月ー10月) 剥離境界層の非平衡効果解析と不確かさ定量化法の構築、第2期(平成24年度 11月ー3月):LESの非平衡壁面モデルの実装と検討、を予定通り順調に研究遂行できた。またそれぞれの研究成果は、予定していた国内外の学術会議で発表でき、更には学術雑誌論文としてもまとめることができた。構築した非平衡壁面モデルに関する研究成果は、学術雑誌論文Physics of FluidsのMost Read Articlesに選出され、更にはNASA Langley研究所での招待講演を依頼される等、注目されている。 初年度で計画通りLESの非平衡壁面モデルの実装と検討、不確かさの定量化法の構築が出来たことで、次年度の確率論的定量化法を用いた非平衡壁面モデルの不確かさの定量化やその不確かさデータを用いた更なるモデルの改良・確立にもスムーズに着手できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で計画通りLESの非平衡壁面モデルの実装と検討、不確かさの定量化法の構築が着実に実行出来たことで、次年度も当初の計画通り、第3期(平成25年度 4月ー7月):非平衡壁面モデルの不確かさの確率論的定量化(問題点の抽出)、第4期(平成25年度 8月ー3月):LESの非平衡壁面モデルの確立と研究のまとめ、を行う。現在、確率論的定量化法を用いたモデルの改良・確立に向けて、第一段階として当初から計画していた、計算コストの低いRANSモデルを用いた衝撃波剥離境界層解析とカップリングさせ、平衡境界層を仮定するRANSモデルが非平衡剥離境界層予測に与える不確かさの知見を得ると同時に、構築する不確かさ定量化法の有効性を確認している。この研究成果を受けて、以上の第3,4期の研究へとつなげて行く。 更には、本研究で構築する不確かさ定量化法で得られるばらつきデータの統計的特徴を解析することでキーとなる流動現象の解明を行うというアプローチを、現在別の研究として進めている超臨界圧状態の乱流境界層における壁面温度の不確かさ解析にも次年度適用していこうと考えている。これによって未だ明らかになっていない超臨界状態での乱流現象理解に対する、本研究成果の更なる有効性を示す所まで発展させれればと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の交付に際して、申請額の1割減額また3割の間接経費負担があった為、当初予定していた処理能力の高いワークステーションの購入を初年度見送らざるおえなくなった。次年度への繰り越し研究費に、次年度に交付される予定の大容量データ保存RAIDシステム導入用の研究費を加える事で、次年度より本格的に実施するLESを用いた不確かさの定量的解析に対応するワークステーションの購入費に当てるよう計画している。その他の研究費に関しては、減額分があるので次年度の東大のクラスタ使用料を抑える必要があるが、そこはJAXA所有のスーパーコンピュータシステムを有効活用する事でやりくりする予定である。
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