2012 Fiscal Year Research-status Report
ハイドロゲル塗膜による乱流渦の抑制と船底摩擦抵抗低減効果の解明
Project/Area Number |
24760675
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高木 洋平 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40435772)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / 乱流 / テイラー渦 / 二重回転円筒装置 / 塗膜 / 平行平板間乱流 / 抵抗低減 |
Research Abstract |
平成24年度は循環型閉水路を用いた室内実験の基礎実験として、二重円筒型テイラークエット流れ実験装置を作成し、層流状態から乱流状態へと遷移する領域でのトルク測定と、アルミ粉を用いた可視化を行った。層流状態からレイノルズ数を増加させると、テイラー渦が発生し、乱流変動によって円筒にかかるトルクがテイラー渦の蛇行と同期するように変化することがわかった。また、十分に発達した状態からレイノルズ数を減少させるとテイラー渦は低回転数域まで保持される傾向があり、テイラー渦の形態遷移にはヒステリシス効果が重要であることがわかった。 二重円筒装置実験と平行して対応する数値シミュレーションを実施し、実験結果とよく一致したテイラー渦の発生が数値的に再現できた。また、平行平板間乱流の直接数値シミュレーション(DNS)を実施し、ハイドロゲル塗膜の効果を考慮した壁面境界条件の導入を行った。凹凸のあるハイドロゲル塗膜上では、凹んだ領域に海水がトラップされると予想されるため、平板境界条件に位置によってすべり長さが変化する局所すべり速度条件を用いてDNSを行った。壁面摩擦速度に基づくレイノルズ数は180とし、流れ方向、スパン方向のすべり周期波長を変化させて計算を行い、滑面状態に対する抵抗低減率を算出した。その結果、基準すべり長さが短い条件では最大1.5%程度の抵抗低減効果が見られ、壁近傍の大規模構造であるストリークの間隔と長さに相当するすべり周期波長を設定することによって抵抗低減率が最大となることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では循環型閉水路を用いた室内実験を行う予定であったが、設置場所の確保や工作費用の観点から二重円筒型装置実験への変更を行った。目的達成のための実験手段は変更となったが、乱流渦の変動と抵抗低減効果を同時に評価できる装置を試作できたため、実験の途中経過は順調であると評価できる。 また、平行平板間乱流の数値シミュレーションでは、まず既往の一様すべり速度条件のDNSと同様な計算結果が得られており、開発したシミュレーションコードの妥当性が得られている。また、予想していたストリーク構造に注目した局所すべり速度の導入が抵抗低減効果に有用であることがわかり、次年度に向けた数値計算結果の蓄積ができたと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
回転二重円筒装置実験では、レーザーによる塗膜面変動及び速度変動の測定と、回転円筒トルクの測定を同時に実施し、テイラー渦・塗膜面の変動と抵抗低減率を高精度に測定する予定である。また、塗膜面変動をより詳細に観察するために、小型の平行平板間水路を試作してレーザー計測と差圧測定による抵抗低減率の測定を実施する。 平行平板間乱流の数値計算では、ヒドロゲルの構成応力方程式をシミュレーションコードに導入し、より実際の塗膜に近い数値モデリングを行う。比較的レイノルズ数が低い計算条件でもパラメトリックスタディのためには計算コストがかかるため、ベクトル型並列計算機によって計算時間の短縮をはかる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
回転二重円筒装置の内円筒を複数製作し、塗膜の乾燥、水中での膨潤、回転試験といった一連の手順を平行して実施できるようにする。塗膜乾燥後の表面粗さを定量的に評価するために、高精度粗度計を購入して使用する。また、レーザー計測(光コヒーレンストモグラフィーまたはレーザードップラー計測に使用可)を導入して塗膜面及び速度変動の定量的評価を実施する。 平行平板間乱流の数値シミュレーションは計算コストが増大するため、大型並列計算機を利用する。また、可視化用ワークステーションを導入して大規模計算データの可視化を可能にする。
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