2012 Fiscal Year Research-status Report
低速並走しながら行う2船間洋上荷役オペレーションの安全性評価
Project/Area Number |
24760676
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐野 将昭 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40582763)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 船舶工学 / 海上安全 / 洋上荷役 / 操縦性能 / 接舷操船 / 相互干渉 |
Research Abstract |
洋上荷役オペレーションのように2船が極めて接近して並走する状況は,潜在的に大きな事故リスクを孕むが,その際の流体力特性や運動性能は未解明な部分が多い.本年度は一連のオペレーションフローの内,接舷後に係留固定してユニット状態となり,低速並走しながら荷役を行う状況に焦点を当て,水槽試験に基づく評価を行った. (ア)操縦流体力の調査:今回新たにAflamaxタンカー模型船を製作した.そしてKVLCC2タンカー船に横づけで曳航される状況を水槽試験で再現し,2つの異なる載荷状態の組み合わせで,抵抗/自航試験,操舵試験,斜航/CMT試験を実施した.特にKVLCC2単独航行→洋上荷役開始→洋上荷役終了(載荷状態が逆転)に至る過程において,馬力や自航性能の変化,非対称流体力を含む操縦流体力の変化を明らかとした. (イ)付加質量の理論計算:載荷状態の組み合わせごとに,3次元パネル法を用いて前後,左右,回頭運動の付加質量を連成項を含めて算出した.洋上荷役時(ユニット状態)には,左右運動による左右方向の付加質量が大幅に増加し,保針性の改善に大きく寄与する事を明らかとした. (ウ)操縦性能の評価:まず幅方向の重心位置,付加質量の連成項,粘性流体力の遇関数項を考慮する事で,主要目の異なる2船から成るユニット船の操縦運動方程式を再定義し,各流体力微係数を同定した.その結果に基づき,釣り合い斜航角と当舵量を推定し,載荷状態に応じた操舵余裕を評価した.またスパイラル特性より,ユニット船では不安定ループが現れず洋上荷役中は針路安定に転じる事,同時に旋回性は劣り避航操船時には注意を要する事を明らかとした. (その他)干渉流体力の評価:派生研究として,2船近接時の操舵による流体干渉を評価した.これまでの研究結果を踏まえ,本年度は理論計算の見直し及び追加計算,詳細な考察を行う事で,流体干渉の発生メカニズムを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の通り,平成24年度の研究計画は概ね達成できていると思われる. (ア)操縦流体力の調査:予定していた一連の操縦性試験は実施済みであるが,今後,精度確認の為に,一部の再試験を予定している.なお,当初はAframaxタンカーに操舵・主機駆動させる実験項目も予定していたが,船速相当のプロペラ回転数が小さく,操縦流体力に及ぼす効果が思いの外小さいと判断して見送る事にした.水槽スケジュールが1年を通じて大変混雑しており,試験数を減らす必要があった事も理由の一つである. (イ)付加質量の理論計算:ポテンシャル理論(3次元パネル法)に基づき各運動方向の付加質量を計算した.同項目は達成できたと考える. (ウ)操縦性能の評価:前後・左右非対称性が大きいユニット船の操縦運動方程式(数学モデル)を再定義し,各流体力微係数を同定した.本年度は,運動方程式を固有値解析し,また釣り合い解を求める事で,針路安定性やスパイラル特性を推定しており,概ね洋上荷役時の操縦性能は評価できたと考える.時系列の操縦運動シミュレーション計算は未実施であるが,計算材料は揃っている事から,今後実施していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,研究計画に記載した内容を順次進めていく. ・(計算1)接舷操船等に適用可能な実用的計算法の構築:接舷・離舷操船のように2船の相対位置が時々刻々と変化する状況を評価するべく,2船間の相互干渉を含めてシミュレートできる実用的計算法の構築を目指す.詳細は交付申請書の通りである. ・(計算2)ケーススタディによる安全性評価:構築した計算法により,2船の載荷状態,アプローチルートや船速等,種々の接舷操船を変更してケーススタディを実施し,接近時の相互干渉を含む流体力特性を評価する.特に接近時に急増が見込まれる付加質量の変化を考慮して接舷(運動)エネルギーを推定する事で,それぞれの接舷状況に応じた適切な防舷材仕様に対して知見を得る. ・(実験1)船ごとに喫水状態を変更した操縦性試験を行い,船単独航行時の操縦流体力特性を把握する.シミュレーション計算時には,同定した操縦流体力微係数に基づき粘性流体力を評価する. ・(実験2)上欄に記載した通り,平成24年度に実施した水槽試験の一部を再試験し,計測データの信頼性向上を図る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・国内学会,国際会議へ出席する為の旅費を計上した.発表および同分野の最新の研究動向についての情報収集が目的である(\300000). ・3次元非定常計算を実施する為に,高性能なデスクトップPC1台分の予算を計上した(\250000). ・プリンタートナー・用紙等の研究遂行時に必要な消耗品の予算を計上した(\40000). ・水槽スケジュールが非常に詰まっており,実験期間は時間外・土日を含めて有効に活用する予定である.実験項目によっては複数の手伝いが必要な為,学生アルバイト代として予算を計上した(\60000) ・論文投稿費を計上した(\50000).
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