2012 Fiscal Year Research-status Report
流体移動の可視化と音響トモグラフィによる岩盤内水理物質移動特性評価の高度化
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24760690
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
李 博 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80578427)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 廃棄物地層処分 / 岩盤亀裂 / 透水特性 / 物質移行特性 / 可視化 |
Research Abstract |
花崗岩などの亀裂性岩盤を対象とした地下水流動評価や核種移行評価に際しては、亀裂を均質な平行平板に近似したモデルが用いられている。しかしながら、実際の岩石亀裂の表面形状は複雑で亀裂開口部は不均質に分布することから、ほとんどの既往研究では亀裂開口幅と透水量の関係が平行平板モデルから乖離すると報告している。 そこで、本年度の研究は既往研究で妥当性が検証されている汎用解析コードを用いて、Bartonらが提案した亀裂表面粗さ係数(JRC)の10本のプロフィールにおける流れの数値解析を行い、亀裂の表面粗度とレイノルズ数の影響に着目した亀裂内の流体の挙動特性を詳細に評価すると共に、力学的開口幅と水理学的開口幅の関係の定式化を試みた。その結果、亀裂表面凹凸の幾何学的特性を評価するには、JRCと良好な相関関係を有するZ2は有効であることを確認した。亀裂の表面が粗いほど、またレイノルズ数が1を超えた量が大きいほど、流線の屈曲度が増え、渦の形成のような慣性効果による現象もより多く発生し、結果として亀裂の透水係数が減り、力学的開口幅と水理学的開口幅の差が大きくなる。本研究で提案した力学的開口幅と水理学的開口幅の関係式による予測値は解析値との良好な整合性を有しており,亀裂ネットワークを考慮した二次元解析モデルへの適用が期待できる。以上の研究成果を纏めた論文は「資源と素材」誌へ投稿し、採択されている。 また、複数の人工的割れ目を取り入れたガラス材を用いて、亀裂ネットワークを有する二次元岩盤モデルを試作し、着色したトレーサーによる室内透水試験を行った。試験モデルに複数の亀裂が存在するため、流入口と流出口を自由に組み合わせることにより、亀裂の数(密度)、流れの方向が岩盤の透水特性に与える影響を考察することができる。本実験は現在進行中であり、結果の整理と成果の発表は次年度中に行うことを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究目標は(1)画像可視化計測に適応した単一亀裂のせん断-透水同時特性の試験容器の試作、(2)可視化計測システムによる亀裂内の流体移動現象の観察と基礎データの蓄積、(3)音響透水トモグラフィによる岩盤内亀裂ネットワークの高精度測定技術の確立である。(1)と(2)について、亀裂内の流体移動現象の可視化を実現するため、既に開発した「デジタル制御型一面せん断試験装置」を基に、供試体を収納するせん断容器を新たに設計した。具体的には、せん断容器の上部に観察用窓を設け、供試体の上部分を岩盤亀裂の表面形状を持つ透明なアクリル板で作製し、下部分は人工岩盤亀裂面を用いる。そして、着色したトレーサーを亀裂内に流入させ、せん断容器の上部に設置するCCDカメラより流れの様子を撮影する。以上の改造より、亀裂内の流体移動現象の観察と基礎データの蓄積を実現することを可能にした。また、(3)については、音響トモグラフィによる地盤調査の実績から、実現場に存在する亀裂ネットワークの特徴を反映した二次元岩盤モデルを試作し、室内透水試験を行っている。本試験より、亀裂ネットワークの貫通度と亀裂内の開口幅分布が岩盤の透水特性に与える影響を把握するとともに、音響トモグラフィによる地下水を含んだ亀裂分布の計測精度を検証することができる。 以上のことに加え、数値解析による力学的開口幅と水理学的開口幅の関係の定式化も行っているため、「当初の計画以上に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究では、画像可視化計測システムの作成や原位置不連続性岩盤の特徴を反映した室内亀裂ネットワークモデルの構築などを試み、亀裂内における流体の移動メカニズムの解明といった研究目標に向けて、実験的研究の基礎条件を整えた。それらに基づいて、今後の研究では、まず、画像撮影の技術を練り上げるとともに、照明設備などの撮影環境を改善し、画像解析に基づいた亀裂内における流れ場の定量的評価を行う。そして、室内透水試験で難題とされてきた様々な透水特性を持つ亀裂における流れの流速と水頭差の精密制御・計測を解決するため、高精密シリンジポンプを用いて、送液制御と流速計測の精度を向上させるとともに、亀裂の透水係数、力学的開口幅と水理学的開口幅の関係における定量的評価を行う。また、実験的研究と並行して、単一亀裂内空隙の空間的分布を忠実に再現した三次元的解析モデル、または亀裂ネットワークにおける二次元解析モデルを作成し、ナビエ-ストークス方程式を解くことで単一亀裂または亀裂性岩盤の透水特性を評価し、試験結果と比較・検証する。さらに、実フィールドの地層中の亀裂性岩盤(花崗岩)内の亀裂ネットワークを対象とし、音響トモグラフィ測定により亀裂の空間的分布を把握し、数値解析により亀裂性岩盤の浸透・物質移行特性を詳細に評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1、せん断-透水同時特性試験を実施し基礎データを蓄積するため、人工模擬供試体の材料や透水試験の消耗品などを購入する必要がある(30万円程度)。2、高精度の透水試験を実施するため、水頭差と流量を精密に制御・計測する装置が必要となる。平成24年度で既に購入した高精密シリンジポンプを基に、高精密定流量・圧力制御送液および流速計測システムを構築していく(60万円程度)。3、流れ画像の画質をさらに向上させるため、撮影の環境、例えば暗室、均一な光を提供する照明機材などを整えていく(40万円程度)。4、亀裂性岩盤の幾何学特性を忠実に反映した室内亀裂ネットワークモデルを構築するため、業者と連携した現場調査を実施し、二次元のみならず、岩石模擬材料を用いた三次元岩盤モデルを構築することを予定している(80万円程度)。5、これまでの研究成果を纏めた論文を国際シンポジウムへ投稿し、学術講演を行うことで、学術界へ幅広く発信していくことを予定している(20万円程度)。
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Research Products
(1 results)