2012 Fiscal Year Research-status Report
地中熱利用技術開発のための多孔質媒体中の水・熱輸送モデルの高度化に関する研究
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24760692
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
吉岡 真弓 独立行政法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 研究員 (10575492)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 流体流動熱輸送 / 多孔質体 / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
再生可能エネルギーである地中熱利用の分野において、効率向上システムの開発に向けて地盤と熱交換器との熱交換率の増強に関する研究開発が進められている。その中には、砂利等の比較的透水性の高い多孔質媒体を活用する技術も進展しており、多様化する浅層の地中熱利用システムの技術開発のためには、様々な地盤の粒径に対し地下水流動やそれに伴う熱輸送の変化を表現できる数値モデルが必要である。 本研究では、まず、地盤・土壌での流体流動と熱変化に関する論文についてレビューを行った。不飽和の多孔質体中の流体流動のメカニズムについては古くから研究がなされているが、温度測定を行っているものは少ないことが明らかになった。その中で佐倉(1984)は、圃場やカラムを利用して、砂などの媒体中の水の動きと温度変化を測定しているが、流体流動と温度変化のメカニズムについては明らかになっておらず、さらなる実験の必要性が確認された。 次に、室内実験用のカラム装置の設計を行った。直径が15cm、長さが40cmのカラムに4つの温度センサー挿入口を取り付けた。このカラムを最大で3つまで連結できるスタンドを制作し、スタンドの下部には開閉型のコックを取り付け、その下には水受けと電子天秤を設置し、排水速度から流出量を測定可能である。温度センサーには熱電対を利用し、1ms以下の高速度で温度を測定できるデータロガー(HIOKI社製)を用意した。カラム内部にはガラスビーズ(現在3mmを主に使用)を充填させ、内部に水や温水(恒温水槽により生成)を流入させることが可能である。現在、本装置を用い、流出速度の測定を行っており、近いうちには不飽和状態での温度測定に着する予定である。 また、数値モデルについては、これまで申請者が構築したコード(吉岡・登坂、2010)の整理および改良を実施すると共に、実験データを再現するためのデータセットの準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請時における計画案では、実験の大半を平成24年度中に完了する予定であったが、現在、完了には至っていないため、やや遅れているものと考える。その理由として、主に実験に使用するカラム装置の設計がやや遅れたことが挙げられる。 本研究では、一般的な浸透カラム実験に使用される粒径よりも大きな多孔質体を対象としているため、カラムのサイズや重量、設置の最適化を検討したためである。それにより、安全に配慮した比較的フレキシブルな装置を計画よりも低価格で作成することができた一方、やや計画に遅れが生じたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、8月頃を目安に現在行っている室内カラム実験を進展させる。本研究で特に着目している高透水性多孔質媒体では、これまでのDarcy型の透水実験よりも粒径が大きいため装置の規模が大きく設計や扱いに困難なところがあったが、実験自体は浸透速度が速いため比較的短時間で終了する。そのため、短期間であっても繰り返し実験を行うことができ、精度のよいデータを獲得することができると考える。 次に、得られたデータを用い、現在コードの精査を行っている数値モデルの改良・パラメータに対する感度解析を実施する。本作業により、本研究のコアとなるシミュレーションモデルを完成させる。 一方、様々な粒径に対しても構築したモデルが適用できるのか、またその場合のパラメータはどの程度なのかを把握するため、細粒(粒径1mm以下)のものについても実験を実施する予定である。細粒多孔質体における実験にはある程度時間がかかるが、数値モデルの改良や上記の基礎的なカラム実験結果とのフィッティングと共に実施することで、時間を節約できるものと考えている。また、実験データの不足が懸念される場合には、これまで申請者が設計したカラム装置の直径を小さくしたものを追加で発注する。上記3.で述べたように、カラム設計時の最適化により、やや研究計画に遅れが生じたが、予算に多少の余裕があり、カラムを含めた実験システムの追加発注を行うことができる。作製期間についてもすでに設計も行われているため、製作期間も前回よりも短期間で納品が可能である。これらを同時並行で使用することで、同時に数種類のデータを得ることができ、時間の短縮になると考える。 最終目標である多孔質体中の流体流動・熱輸送モデルの簡易化については、基礎となる改良型数値モデルを整備した後(夏以降を想定)、実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験を加速させるため、実験装置の追加等の設備費へ約60万円、測定・解析用の計算機として40万円、消耗品として解析に必要なソフトウェアを含め30万円、国内外の学会発表への参加するための旅費として45万円を計画している。詳細は以下の通りである。 まず、設備費については、現在使用している実験装置の高度化のために約20万円を、同種類のカラム実験装置の製作費および周辺機器の購入のため約40万円を予定している。現在すでに使用している測定器等に追加して測定できる項目もあり、初年度の設備購入額よりも少額で実験システムを追加することが可能である。また、計測用および解析用として計算機購入費として40万円を予定している。 消耗品としては、ガラスビーズ等実験に必要な備品および申請時からの予定である可視化ソフトウェアの購入を含め30万円を計画している。 さらに、本研究で得られた結果を国内外で発表するための旅費および参加費として、45万円を計画している(国内の学会に2回、国際学会を1回を予定)。
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