2012 Fiscal Year Research-status Report
亜臨界・超臨界流体によるアラミド繊維強化プラスチックのリサイクル技術の開発
Project/Area Number |
24760693
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
岡島 いづみ 静岡大学, 工学部, 助教 (40436910)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リサイクル / 亜臨界・超臨界流体 |
Research Abstract |
耐震補強や補修補強材料として利用されているアラミド繊維強化プラスチック(AFRP)は、熱硬化性のポキシ樹脂と耐熱性のアラミド繊維から構成されており、エポキシ樹脂のみを分解し、アラミド繊維を回収・リサイクルする方法が未解決の課題となっている。そこで平成24年度は亜臨界・超臨界流体を用いたエポキシ樹脂の分解速度解析の速度解析を行った。溶媒として超臨界メタノール、プロパノール及びアセトンを用いてアミン硬化エポキシ樹脂の加溶媒分解を行ったところ、樹脂を99%以上分解するには、アセトンを用いた場合が最も分解が進行しやすいことが明らかになった。また320℃の条件でエポキシ樹脂を分解したところ、反応圧力が6MPa以上では反応時間5分、0.5~4MPaでは7分でエポキシ樹脂はほぼ100%分解することができた。アセトンの臨界圧力は4.7MPaなので、臨界圧力を境に分解力の違いは出てはいたものの、大きな差ではなかった。これはアセトンの臨界温度の235℃よりも85℃も高い条件であることから、反応場でのアセトンの密度に大きな違いがなかったため、圧力による火溶媒分解反応への影響が小さかったと考えられる。 また320℃の超臨界アセトンにアラミド繊維を10分間さらしたところ、重量変化は2~3%程度と、ほとんど分解が進行しないことが明らかになった。また単繊維引っ張り強度を測定したところ、新品のアラミド繊維とほぼ同じ強度が得られたことから、320℃の超臨界アセトン中でAFRPを処理しても、アラミド繊維は分解せずに回収できることが予測できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はアミン硬化エポキシ樹脂の分解条件の緩和、エポキシ樹脂の反応速度解析及びアラミド繊維の溶媒安定性に関する研究を行うことを予定していた。その中で、アセトンを用いることで圧力は0.5MPaまで低下できること、臨界温度以上の今回の条件では、圧力による反応性の違いはほとんど見られなかったこと、エポキシ樹脂が分解できる条件でアラミド繊維の分解は進まなかったことを明らかにできた。このことから、本研究の目的のうち、(1)マトリックス樹脂であるアミン硬化エポキシ樹脂をできるだけ低圧条件で全て溶媒に溶解するように分解し、(2)アラミド繊維を加溶媒分解させずに回収するための検討項目を遂行し、明らかにすることができたため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、(1)アラミド繊維の溶媒安定性と分解反応速度解析及び(2)AFRPからのアラミド繊維の分離・回収を行う予定である。(1)では、超臨界条件下でアラミド繊維が加溶媒分解を開始する反応温度、圧力及び反応時間を探索し、分解速度解析を行う。そして、アミン硬化エポキシ樹脂の分解条件や反応速度解析結果と比較することにより、これらを複合材料とした際のリサイクル条件の目安となる基礎的なデータを集積する。(2)では、エポキシ樹脂は全て溶媒に溶解するが、アラミド繊維は分解しない、AFRP のリサイクル条件を探索する。なお、反応場に存在するエポキシ樹脂分解生成物がアラミド繊維の分解を促進する可能性があるため、単体で処理した場合と複合材料の状態で処理した場合のアラミド繊維の分解反応速度解析結果を比較し、複合材料中のアラミド繊維の安定性及び分解挙動を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に配分される直接経費120万円のうち、反応管用品や高圧部品、試薬等の消耗品に109万円、学会による研究成果発表のための国内旅費に5万円、学会参加費と英語論文校閲に6万円を使用する予定である。
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