2013 Fiscal Year Research-status Report
反応クロマト法を用いた廃グリセリンからの生分解性可塑剤の連続合成
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24760695
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Research Institution | Ichinoseki National College of Technology |
Principal Investigator |
福村 卓也 一関工業高等専門学校, 准教授 (50360326)
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Keywords | クロマト反応器 / 擬似移動層 / 生分解性可塑剤 / グリセリン / リサイクル |
Research Abstract |
バイオディーゼル合成時に副成する廃グリセリンの有効利用を目的として、固体酸触媒充填クロマト反応器を用いたグリセリン系可塑剤連続合成プロセスの構築を試みた。本研究では、固体酸触媒として水素型イオン交換樹脂Dowex 50WX2(50mesh-100mesh)を用いた。 まず、グリセリン-酢酸エチル-エタノールの反応溶液に対して、エタノールを湿潤させたDowex 50WX2を投入し反応温度65℃の条件で回分実験を行った。ここで、グリセリンと酢酸エチルの初期モル比は3:1とした。反応時間の経過と共に、酢酸エチルとグリセリンのエステル交換反応によりモノアセチンが、さらに逐次的なエステル交換反応によりトリアセチンが生成し、それぞれの濃度は平衡値に達した。この際、ジアセチンの生成濃度は極めて低かった。これより、モノアセチンからジアセチンが生成する反応速度に比較して、ジアセチンからトリアセチンが生成する反応が速いことが示された。また、グリセリン-乳酸エチル-エタノール系でも同様の結果が得られた。このようにエステル交換反応ではグリセリンの3つのヒドロキシルとも他の残基とエステル結合する傾向が観察された。 これらの結果から、グリセリンと酢酸のエステル化反応でモノグリセリド、ジグリセリドを生成させ、もう一つの反応原料として乳酸エチルなどのエステルを用いて、ジアセチル系可塑剤の合成プロセスが構築できる可能性が示された。最終年度は、グリセリンのエステル化およびエステル交換反応を対象として、1) Dowex 50WX2以外の種々の固体酸触媒を用いた検討、2) カラム型クロマト反応器の挙動解析、3) 可塑剤合成に関する移動論数学モデルの構築、4) 擬似移動層型クロマト反応器を用いた反応分離実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は新規に送液ポンプを2台購入し、連続操作が可能な擬似移動層型クロマト装置を構築した。ロータリーバルブは学内研究費で以前に製作した10カラム対応のものを採用した。また、自動バルブ切り替えスイッチは学内関係者の協力を得てロータリーバルブアクチュエータと繋いだ。アクリル容器の中のスタンドに、触媒を充填した反応カラムを10本固定し、アクリル容器下部より温風を流入させて恒温環境を実現させた。このように、当初の予定どおり装置は作製でき達成度はほぼ100%に近いと判断している。 本研究の最終目的である擬似移動層型クロマト反応器を用いた反応プロセスの構築に必要な移動論数学モデルは未完成である。上述の結果から、グリセリン-酢酸-脂肪酸エチルを反応原料として、エステル化反応とエステル交換反応を同時に行わせる系の適用を考えている。グリセリンと酢酸のエステル化反応では水が生成するが、擬似移動層型クロマト反応器の操作では触媒樹脂への親和力が極めて高い水の挙動予測が重要である。可塑剤合成に関するモデル化は未完成のため、研究代表者が過去に扱ったオレイン酸-エタノールのエステル化に関して、擬似移動層型クロマト反応器の数学モデルを構築した。このとき生成する水の挙動制御に必要な操作条件について数値計算で概ね予測できている。このことから移動論数学モデルの構築に関しては概ね70%の達成度であると判断している。 フラスコレベルでの実験結果を基に、カラム型クロマト反応器を用いて、反応原料をグリセリン-酢酸-酢酸エチル混合液とし、溶離液としてエタノールを用いた反応分離実験も行った。グリセリンのアセチル化は不十分の結果となったが、反応実験手法と分析手法が確立できた。このことから、カラム型クロマト反応器の挙動解析について、達成度は50%程度と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、エステル交換反応ではトリアセチンへ至る過程が速いため、予め反応原料としてジアセチンやモノアセチンを用いることも考える。また、研究代表者が指導する専攻科学生2名および本科卒研5年生1名を本テーマに配して、回分実験での基礎検討と共に、カラムクロマト反応実験、擬似移動層型クロマト反応器を用いた連続実験を同時並行で進めていく予定である。移動論数学モデル等の構築は研究代表者が進める。また、詳細な反応機構の把握を目的として、平成25年度に研究代表者の所属機関に導入されたMALDI-TOFMSを利用して、生成した物質の詳細な同定を行うことを考えている。 カラム型クロマト反応器を用いた実験では、溶離液として酢酸エチル-エタノール 90:10溶液を用い、グリセリン-酢酸エチル-酢酸、モノアセチン-酢酸エチル-酢酸、ジアセチン-酢酸エチル-酢酸、グリセリン、酢酸エチル-乳酸の4種類の反応原料の組み合わせについて検討を行う。擬似移動層型クロマト反応器の実験に当たっては、クロマト反応器での実験結果を解析した上で、流量条件等を決定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度への繰越額は19,006円であるが、試薬使用量が当初よりも少なかったためと考えている。 平成26年度では、擬似移動層型クロマト反応器およびカラム型クロマト反応器を用いた実験を行っていく予定であり、酢酸エチルやエタノールなどの使用量が多くなると考えられる。これらの試薬と合わせて、HPLC溶離液であるアセトンやアセトニトリルなどの試薬への支出が主になると考えている。試薬以外にもイオン交換樹脂触媒やゼオライト触媒の購入も想定している。旅費については、9月に開催される化学工学会第46回秋季大会(九州大学、福岡)での情報収集と来年3月に開催される化学工学会第17回学生発表会(八戸大会)での成果発表を考えている。最終年度である26年度は、3月の旅費を除いて補助金を12月上旬まで執行終了する。
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