2012 Fiscal Year Research-status Report
高電離タングステンイオンの電離・再結合断面積の高精度計算と実験による精度評価
Project/Area Number |
24760707
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
仲野 友英 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門, 研究副主幹 (50354593)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プラズマ・核融合 / 原子物理 / 原子データ / タングステンイオン / 電離断面積 / 再結合断面積 / 真空紫外分光 |
Research Abstract |
プラズマ中のタングステンイオン密度を決定するにはタングステンイオンの電離・再結合断面積が必要であり,多くの場合に理論的に計算されたものが利用されているが,その精度はまったく保証されていない.本研究では,近年開発された原子構造計算プログラム FAC によって高精度な断面積の計算を行うと共に,その精度を実験的に測定されたスペクトル線の強度比から評価し,これによって誤差評価付き電離・再結合断面積を世界で初めて生産することを目標としている. 本年度には,FAC による電離平衡下での W44+ に対する W45+ の密度比の理論計算をすすめた.電離平衡下では,W44+ に対する W45+ の密度比は W45+ の再結合断面積に対する W44+ の電離断面積の比で表される.電離過程として電子衝突による直接電離と自動電離準位に励起された後に自動電離する過程を考慮し,再結合過程として放射再結合と二電子性再結合を考慮した.この密度比を電子衝突エネルギーに対して計算し,これを電気通信大学の電子ビーム・イオントラップ装置において測定された W44+ に対する W45+ の密度比と比較した.この比の電子衝突エネルギーに対する依存性は,実験による測定と理論計算の間で定性的に一致したものの,定量的には特定の電子衝突エネルギーで数倍の違いが見られる場合があった.この差は電子衝突エネルギーに対して共鳴構造を持つ二電子性再結合に由来すると考えており,計算方法の修正をすすめている. また,英国カラム核融合研究センターにて JET の実験に参加し,W44+ および W45+ のスペクトルを入手した.上記の方法から W44+ および W45+ の密度比の解析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り,W44+ に対する W45+ の密度の理論計算値と実験測定値の比較が進み,定性的な一致が得られたこと,JET でタングステンイオンのスペクトルを入手し初期的な解析が完了したこと,などからほぼ計画通り研究が進んでいると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度には W44+ に対する W45+ の密度比の実験と理論計算の比較を進めたが,定量的には不一致が見られたため,この原因の解明に注力する.また,JET のプラズマ実験が予想以上に進展し,電子温度 5 keV 以上のプラズマからのタングステンイオンのスペクトルの入手が可能となったため,このスペクトルの解析にも注力する. これにともなって,今年度に予定していた,W62+ に対する W63+ の密度比の理論計算の優先度を低下させるとともに,電気通信大学の電子ビーム・イオントラップ装置における W62+ および W63+ の 3s-3p スペクトル線強度比の測定も優先度を低下させる. 国際原子力機関のデータセンターネットワーク会合などに参加し, 前年度の成果に対して国外の専門家から意見を伺い,最終年度にむけて必要な計算の確認作業に資する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際学会やワークショップなどへの出張旅費と計算データの保存用にストレージを購入に研究費を使用する.
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