2012 Fiscal Year Research-status Report
水素イオンと炭素イオンが同時入射した被覆タングステン中の水素蓄積機構の解明
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24760710
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
福本 正勝 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門, 任期付研究員 (60549202)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | プラズマ壁相互作用 / 水素蓄積 / 被覆タングステン / 材料混合 / 炭素 |
Research Abstract |
本研究は、炭素イオンの割合を制御した重水素イオンを被覆タングステンに照射し、重水素イオンと炭素イオンが同時入射する場合の水素の蓄積挙動を明らかにすることを目的とする。平成24年度は、炭素イオンの割合の影響を調べた。 試料温度を700K、炭素イオンの割合を0.1-2.8%として重水素イオンを照射した。炭素イオンの割合が0.1%の場合、被覆タングステン中の重水素と炭素の蓄積分布は深さ方向に一定であった。炭素イオンの割合を増加させると、深さ20umまでの炭素蓄積量と重水素蓄積量が増加した。照射後に試料を一定の速度で昇温すると、炭素イオンの割合が2.8%の場合には600-1300Kの温度領域で重水素が放出されたが、0.8%以下では重水素の放出は検出限界以下であった。放出スペクトルの解析から、重水素は被覆タングステン中の炭素に捕獲されている可能性がある。 次に、試料温度を500K、炭素イオンの割合を0.1-3.2%として重水素イオンを照射した。炭素イオンの割合が0.1 %の場合、炭素は深さ方向に一定であったが、重水素は深さ2umに最も多く蓄積し、深さとともに減少した。炭素の割合を増加させると、深さ20umまでの炭素蓄積量と水素蓄積量が増加した。炭素イオンの割合が1.2%以下の場合には、450-700Kで重水素が放出された。これは、被覆タングステンに蓄積した重水素の放出であった。さらに、炭素イオンの割合が3.2%の場合には、450-700Kの放出に加え、700-1200Kにも放出が観測された。これは、炭素に蓄積した重水素の放出である可能性がある。 被覆タングステン中では、照射した炭素は炭化タングステンを形成せず、グラファイトやアモルファス状で蓄積していた。さらに、照射後に試料の温度を1373Kまで加熱すると、重水素に加え、炭素も被覆タングステンから除去された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
300-1100Kの範囲において、試料温度を変化させて重水素の蓄積機構を調べることを計画していた。これに対して、500Kおよび700Kの温度領域に対して、炭素の割合を変化させて重水素の蓄積に対する炭素の影響を実験的に調べたため。
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Strategy for Future Research Activity |
試料温度を700Kとした場合、被覆タングステンに蓄積した炭素に重水素が主に蓄積されていることが分かった。しかし、重水素の放出スペクトルは複数の放出ピーク温度を有しているため、複数のエネルギーを持って炭素と結合していることが示唆された。そのため、シミュレーションコードを用いて重水素の放出スペクトルを解析し、重水素の蓄積エネルギーを調べる。その後、500Kでイオン照射試料に対して同様の解析を行い、重水素の蓄積エネルギーを調べる。また、重水素に加え、炭素と結合した炭化水素の形で重水素が放出されている可能性が示唆されたため、炭化水素の放出スペクトルの解析を行う。さらに、イオンのエネルギーを変化させた照射実験も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
照射実験の試料である被覆タングステンが少なくなったため、炭素性複合材料の購入と、これへのタングステンの被覆に使用する。重水素の放出スペクトルを解析するため、シミュレーションコードを動作させるためのパソコンを購入する。また、試料の分析に必要な熱電対、試料加熱用ヒータ、窒素ガスなどの消耗品を購入する。さらに、照射実験を行うための旅費や関連する国内と国際会議への旅費に使用する。
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