2012 Fiscal Year Research-status Report
拡張MHDモデルに基づくエッジローカライズモード安定化・抑制に向けた理論数値研究
Project/Area Number |
24760712
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
相羽 信行 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門, 研究員 (20414584)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 磁場閉じ込め核融合 / MHD安定性 / トカマク / エッジローカライズモード / 拡張MHDモデル |
Research Abstract |
本年度は、研究計画で実施する予定であった、小振幅エッジローカライズモード(ELM)の原因の一つと考えられる短波長周辺局在MHDモードの安定性解析を、MINERVAコードおよび運動論効果を考慮した分散関係式を用いた簡易モデルに基づいて行った。この結果、これまでイオン反磁性ドリフト効果と呼ばれる運動論効果はMHDモードの波長が短いほど強く安定化に寄与するため、小振幅ELMの原因となるMHDモードの波長は注意深く評価する必要があるとされていたが、今回新たに電子ドリフト音波の効果を加えた解析を行うことで、特定の波長で前述の安定化効果が無効化されることを明らかにし、これにより小振幅ELMとして発生するMHDモードの波長の同定を可能にした。これは、小振幅ELMが得られる運転領域を数値計算により予測することを実現する重要な成果であり、Nuclear Fusion誌に掲載された。 また、研究者がこれまで進めてきた“ELMを含むMHDモードの安定性に対するプラズマ回転の影響”について、特にプラズマのポロイダル回転を考慮することで実験的に観測されている小振幅ELMの特徴である“プラズマのトロイダル回転の向きを変えることで小振幅ELMが得られること”を説明できることを、ヴァレナ(イタリア)で行われた核融合プラズマの理論研究に関する国際ワークショップにおいて”Impacts of plasma rotation on linear MHD physics in tokamaks”という題名で招待講演として報告した。この講演では、ELMに関する研究報告と共に、抵抗性壁モード(RWM)に関する研究成果も報告し、これまでプラズマ回転はRWMを安定化するとされていたが、負磁気シアプラズマでは安定なMHDモードとプラズマ回転の共鳴と思われる効果によりRWMが不安定化しうることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究の目的である“小振幅エッジローカライズモード(ELM)の発生条件に関する物理機構の解明することを目的として、波長の短い周辺局在電磁流体(MHD)安定性解析を行うための物理モデル及び数値コード開発を進め、これを用いた数値解析を行う”の初期解析として、理想MHDモデルに基づいた数値解析コードと拡張MHDモデルに基づいた分散関係式を組み合わせることで小振幅ELMの原因と考えられる短波長MHDモードの安定性に関する解析を行った。その結果、プラズマの圧縮性およびイオン・電子の反磁性ドリフト効果を考慮することで小振幅ELMが得られる運転領域が数値計算により予測できることを示した。また、理想MHDモデルに基づいた数値コードを用いて、プラズマ回転制御による小振幅ELMの実現という実験的に観測されている性質について、ポロイダル回転というこれまで考慮されていなかった物理効果が重要であることを明らかにし、既存の実験装置や将来の核融合炉においてプラズマ回転によって小振幅ELMが得られるかを評価・検討する上で重要な成果が得られた。 これらの成果は、研究期間内で着目するとした物理量である“プラズマ回転”、“プラズマ圧縮性およびイオン・電子反磁性ドリフト効果”を独立に考慮して小振幅ELMに関する理解を深めた成果であり、今後それぞれの効果を組み合わせてさらに現実的な条件での解析を進めていくうえで、その結果の理解を深めるうえで重要なものである。そのため、おおむね当初の研究計画に沿った成果が得られていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、“イオン・電子反磁性ドリフト効果”をより自己無撞着に評価可能な物理モデルの開発を進めるとともにそれに基づいたコード開発を行い、本年度に簡易モデルを用いて明らかにした小振幅ELMに関する性質の確認と共により定量的な評価を実現することを試みる。また、現在の簡易モデルではプラズマ回転の影響とイオン・電子反磁性ドリフトの効果の双方を取り込んだ解析ができないため、上記の物理モデルではそのような2つの効果の相関による小振幅ELMに対する影響を評価可能にすることを目標とする。 また、並行してこのような新たな物理モデルに基づいた数値解析を実現するために、これまでより高精度な数値解析を実現する新たな数値解析技法の開発を進める。これは、イオン・電子反磁性ドリフト効果を自己無撞着に取り込むことで、基礎方程式の最高階微分の階数が高くなるため、発生する不安定モードのモード構造が理想モデルの場合に比べてより微細になる可能性が高くなることから、そのような微細な構造を正確に表現できる数値解析技法が必要となると考えられるためである。この数値解析技法を開発することで、従来の理想モデルに基づいた数値コードで必要となる計算リソース・時間を低減・短縮することも可能になることから、理想モデルに基づいた数値コードを用いた定量解析もさらに進められると期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、当初の計画通り数値コード開発に利用するワークステーションを購入する。これは、新たに開発する数値コードのプロダクトランは大型計算機で行う必要があるほどの大規模なものになると予想されるため、そのようなコードの開発で必要となる中規模な計算メモリを搭載したワークステーションを購入することで、開発を効率的に進めるためである。 その他、国内で行われるELMに関連した物理に関する国際会議(Hモードワークショップ)や国内の学会(プラズマ・核融合学会、日本物理学会など)に参加し、自身の研究の進展を報告・アピールするとともに、国内外の近年の研究の状況について情報収集を行う。さらに、これまで共同で研究を進めてきた日本原子力研究開発機構那珂核融合研究所の研究者との議論を行う。これらの目的を達成するための出張旅費を計上する予定である。
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