2013 Fiscal Year Research-status Report
ナノカロリメトリーによるフミン物質の錯生成反応機構の解明
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24760713
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
桐島 陽 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (00400424)
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Keywords | フミン物質 / カロリメトリ / 電位差滴定 / エンタルピー / エントロピー / 深部フミン酸 / 幌延フミン酸 |
Research Abstract |
地層中で放射性核種と強く相互作用する可能性のある天然の物質のひとつとしてフミン物質が挙げられる。本年度は、前年度に引き続き、フミン物質の錯生成反応の前段階として、水溶液系内で常に起こる反応であるプロトン化反応に着目した。前年度はIHSS(国際腐食物質学会)が頒布している、標準的なフミン物質(peat humic acid, soil humic acid)を対象に、カロリメトリ手法を用いることで、プロトン化反応におけるエンタルピーやエントロピーといった熱力学量を決定し、その反応機構を考察した。IHSSの頒布するフミン物質は地表付近に存在する天然フミン物質を生成したものであるため、このフミン物質の性質は地層処分を行う環境に存在するフミン物質とは異なる可能性がある。そこで、今年度は前年度確立した手法を、我が国の実際の深部地下水から採取したフミン物質に適用する事で、より現実の地層処分環境に近い環境に存在するフミン物質の熱力学について検討した。試料と成るフミン物質はJAEA幌延深地層研究センターの深度320m地点の横抗より3トンの深部地下水を採取し、これにIHSSの推奨する標準手法を適用してフミン物質を抽出、精製したものである。得られた幌延フミン酸をカロリメトリ手法により分析し、熱力学量を決定したところ、前年度検討した標準的なフミン物質(表層フミン酸)とは明らかにプロトン化の熱力学的性質が異なることが判明した。熱力学量からは幌延フミン酸には高分子電解質としての性質が極めて小さく、安息香酸等の比較的低分子の有機酸の性質に近いと言うことが分かった。次年度はこの幌延フミン酸の分子量等の分析を進め、熱力学量の解釈を進める。また、今年度、銅イオンを用いて電位差滴定を行うことで、フミン酸と金属イオンとの錯生成反応についての検討も開始した。次年度も継続し、錯生成反応機構を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に平成25年度の研究実施計画として記載した事項については、おおむね実験結果が得られ、達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はIHSSフミン酸、幌延フミン酸、PAAと金属イオンの相互作用について、(1)金属イオン相互作用の二電極電位差滴定、(2)金属イオン相互作 用の熱量滴定の実験を行い、検討する。金属イオンとしては性能の高いイオン選択性電極が入手可能な、Cu(II)を取り上げ、申請者らの先行研究で開発した二電極電位差滴定法により幅広い溶液条件で錯生成を検討し、錯生成熱力学量の解離官能基密度依存性やイオン 強度依存性、さらに高分子酸の分子量依存性を評価し、反応機構についての考察を行う。 また、性質が未解明の部分が多い、幌延深部地下水より抽出した天然フミン酸の分析も継続して行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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