2012 Fiscal Year Research-status Report
ホウ酸塩ガラスマトリックスによる海水を含む放射性廃棄物の処理研究
Project/Area Number |
24760718
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
新井 剛 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (60415867)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ホウ酸塩ガラス / 福島第一原子力発電所 / 放射性汚染水 / 固定化 |
Research Abstract |
本提案では、福島第一原子力発電所の炉心溶融事故により発生した放射性物質及び海水を含む炉心冷却水の包括的且つ廃棄物の減容化を図る処理技術について検討している。特に放射性廃棄物の減容化を図るため、放射性物質を含む海水及び中性子吸収剤として注入したホウ酸をマトリックスとした安定的なホウ酸塩ガラス固化体の創成を目指している。当該年度は、模擬処理水からのホウ酸塩ガラス作成条件の最適化、夾雑元素の混入に伴うホウ酸塩ガラスの生成挙動及びホウ酸塩ガラスからのマトリックス元素の浸出挙動について基礎的な検討を行った。 ホウ酸塩ガラス作成条件の最適化検討から、ホウ酸塩ガラスのB:Naの組成比は1:0.5molが最適であり、1100℃、3時間の保持により海水に含まれる塩素を除去できることが明らかとなった。また、ホウ酸塩ガラスは、急冷することにより固化体を得られたが、それにより得られたガラスは硬くて脆いことが確認された。そのため、急冷により得られたホウ酸塩ガラスを500℃で30分程度保持した後、炉冷を行うことで加工性に富む固化体を得ることができた。また、最適な条件で得られたホウ酸塩ガラスに夾雑元素としてMg、K、Ca、Mn、Fe、Co、Sr、Cd、Cs、Baを添加し固化体を作製した。これにより得られた固化体をEDXにより分析した結果、何れの元素もホウ酸塩ガラス中に分散していることが確認された。このことから、ホウ酸塩ガラスは良好な固化体になり得ることが示された。また、ホウ酸塩ガラスの夾雑元素の保持性能を向上させるため、Znを添加した固化体も作製した。 ホウ酸塩ガラスのマトリックス元素の浸出検討では、ホウ酸塩ガラスからは比較的短時間にマトリックス元素が漏洩することが確認された。一方、Znを添加したホウ酸塩ガラスの浸出挙動は、未添加のものよりも保持性能が優れており、良好な固化体になり得ることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した目標と同等の成果を得ることができた。これは、本提案の前から予備試験等を自己資金により進めており、改善するための項目や推進すべき課題が抽出されていたことが極めて大きい。また、本提案が採択されたことにより、これまでよりも十分に研究資源を購入することができ、予備試験では実施できなかった項目が達成できるようになった。また、積極的に学会等で本提案研究の成果を報告することで、他機関から貴重なご意見やご質問、ご助言を伺うことができ、研究のアイデアや情報を得られたことも研究推進の一因であると考える。特に本提案の福島第一原子力発電所から排出される放射性汚染水の固定化技術は、今後の原子力政策を左右する重要な位置づけであることから、学会等においても多くの研究者から本提案の成果に対してご助言を頂くことができたため、計画した研究から大きく逸脱した試験をすることなく目標に近づけたことも成果をあげることができた要因であると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、当該年度に明らかとなった第三元素の添加によるホウ酸塩ガラスの浸出性能の向上、低温度でのホウ酸塩ガラスの製造条件の検討、固化体からの夾雑元素の浸出挙動の把握が挙げられる。 第三元素の添加によるホウ酸塩ガラスの浸出特性については、当該年度の成果よりZnが効果的であることが見いだされた。しかし、水中でのマトリックスの安定性には問題があり、新たな添加元素の検討やZnに第四の元素を添加し、保持性能の向上について検討を進める必要がある。 これまでの研究成果においてホウ酸塩ガラスの溶融温度は1100℃が最適であったが、Csの揮発等を勘案すると、さらに低い温度での製造が望まれる。そこで、今後は、上記の試験で得られた最適な組成のホウ酸塩ガラスの低温度での製造を目指した試験を実施する予定である。具体的には、溶融温度を変化させることで得られた固化体のXRD分析や浸出試験等により固化体を評価し、最も適切な作成条件を見いだす。 当該年度では、ホウ酸塩ガラスからのマトリックス組成の浸出特性について評価した。しかし、夾雑元素の浸出挙動についての評価は行っていない。そこで、夾雑元素を含むホウ酸塩ガラスからの夾雑元素の浸出挙動について評価し、固化体としての保持性能を明らかとする。また、上記の試験で得られた第三、第四元素を添加したホウ酸塩ガラスのマトリックス成分並びに夾雑元素の保持性能についても評価する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(4 results)