2013 Fiscal Year Research-status Report
ホウ酸塩ガラスマトリックスによる海水を含む放射性廃棄物の処理研究
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24760718
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
新井 剛 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (60415867)
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Keywords | ホウ酸ガラス / 放射性汚染水 / ゼオライト / 固定化 / セシウム |
Research Abstract |
本提案では、福島第一原子力発電所の炉心溶融事故により発生した放射性物質及び海水を含む炉心冷却水の包括的且つ廃棄物の減容化を図る処理技術について検討している。特に放射性廃棄物の減容化を図るため、放射性物質を含む海水及び中性子吸収剤として注入したホウ酸をマトリックスとした安定的なホウ酸塩ガラス固化体の創成を目指している。当該年度は、ホウ素とナトリウムの組成比を変化させ、最適なホウ酸ガラスの作製条件の検討を行った。本試験の結果からB:Na=1:0.4の組成比で溶融温度1050 ℃以上、B:Na=1:0.3の組成比で溶融温度1000 ℃以上において、ガラス光沢を有する透明な固化体が得られることが確認された。これらの試験結果からB-Na比の低下によりホウ酸ガラスの形成に必要な溶融温度の低下が確認された。また、昇温速度を5~15℃/minに変化させた時のホウ酸ガラスの形成挙動についても検討を加えた。その結果、同一のホウ素とナトリウムの組成の試料において、10℃/min以上の昇温速度では、一部に結晶が確認されたことから、ホウ酸ナトリウムガラスの昇温速度は、5℃/min程度が適切であることが示された。また、本研究では、これまでに得られた最適条件で作製したホウ酸ガラスを用いて、Csを吸着したゼオライトの固定化試験を実施した。ゼオライトには13Xを用い、各粒度にふるい分けた13Xを用いて試験に資した。本試験結果から、75μm以下の13Xでは、ガラス溶融時にCsの揮発等が確認されたが、1mm以上の13Xはホウ酸ガラス中に固定化され、且つ13Xに吸着されたCsはガラス溶融後も吸着状態が保持されていることが示された。また、ホウ酸ガラスへの13Xの充填率は30%程度まで可能で有ることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した目標と同等の成果を得ることができた。これは、本提案の前から予備試験等を自己資金により進めており、改善するための項目や推進すべき課題が抽出されていたことが極めて大きい。また、本年度よりホウ酸ガラスによるCsを吸着したゼオライトの固定化についても検討を進めているが、本研究に対しても研究提案者が吸着・分離等に対する知見を多く有していることが、本計画を滞りなく進められている理由の一つと考える。しかし、福島第一原子力発電所で使用されているキュリオン社製のゼオライトの入手が困難であることから、模擬試験が出来ないのが残念である。また、積極的に学会等で本提案研究の成果を報告することで、他機関から貴重なご意見やご質問、ご助言を伺うことができ、研究のアイデアや情報を得られたことも研究推進の一因であると考える。特に本年度掲げられたエネルギー基本計画に基づくと、本提案の放射性汚染水の固定化技術は極めて重要であり、学会等においても多くの研究者から本提案の成果に対してご助言を頂くことができた。これらのことも、研究計画から逸脱した試験をすることなく目標に近づけた要因であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、当該年度に明らかとなったホウ酸ガラスの最適マトリックス並びに前年度までに明らかとなっている第三元素を添加したホウ酸ガラスを作製し、廃ゼオライトの固定化についてより詳細に検討を加える。また、ゼオライトには複数の核種の吸着も考えられるため、Sr(II)が吸着したゼオライトのホウ酸ガラスによる固定化についても検討する。本試験では、ホウ酸ガラス作製時におけるゼオライトに吸着したCs、Sr等の揮発特性は極めて重要である。そこで、本研究では熱重量分析装置等を用いて、ホウ酸ガラス作製条件によるゼオライトからのCs、Sr等の揮発挙動について調査する。さらに、ゼオライトを固定化したホウ酸ガラスからの浸出挙動は、ホウ酸ガラスが固定化マトリックスとして利用可能か否かを決定する上でも極めて重要な因子である。そこで、CsやSrを吸着したゼオライトを固定化したホウ酸ガラスの水への浸出挙動について検討する。 また、当該年度は、本提案研究の最終年度であるため、これまでに得られた試験成果を纏め、学会発表、論文掲載に向けて準備する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度は、これまでの先行研究の成果を基に効率的に資金を使用することができた。また、次年度では、ゼオライトを含むホウ酸ガラスを作製して試験に資するため、想定される消耗品の増加が予測される。そのため、当該年度の一部を次年度に繰り越し、効率的な試験を行う。 繰越金額は、ゼオライトやホウ酸ガラスの添加元素の試薬代、さらには浸出試験、熱分析に用いる消耗品に充当する。
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Research Products
(3 results)