2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24770006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
平井 和之 杏林大学, 医学部, 講師 (70597335)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 単為生殖 / 受精 / 染色体 / 中心体 / ゲノム / ショウジョウバエ |
Research Abstract |
単為生殖を引き起こしている遺伝子は第2染色体上の劣性突然変異で、これはアナナスショウジョウバエだけではなくその近縁2種の間でも保存されていることが分かっている。この突然変異を探索するために、アナナスショウジョウバエとその近縁種から、野生型の有性生殖1系統と突然変異の単為生殖3系統を選び、それらのゲノムの塩基配列をイルミナ社の次世代シーケンサーで解読した。得られた配列を公開されているアナナスショウジョウバエのゲノム情報と照合したところ、単為生殖系統に特異的な多型は、第2染色体の単為生殖遺伝子が遺伝学的にマップされている領域内に、一塩基多型と挿入欠失多型の合計93,716ヶ所見つかった。この結果は予想よりもかなり大きな値であるが、今後の、受精依存的な発生開始を決定づける遺伝子の特定の基礎となる重要なデータである。 また、単為発生胚における発生の細胞学的特性を明らかにするため、初期胚を固定し、染色体と中心体の挙動を解析した。野生型雌が産んだ未受精卵における発生はまったく認められず、染色体は、雌性前核および極体として観察された。一方、単為発生胚では高い割合で核分裂の周期が始まっていた。単為発生胚に特異的な表現型として、中心体様の構造が卵の前極に新規に形成されていることが明らかになった。このような構造は一つの胚あたり複数個形成されており、それらのうちいくつかは染色体の分配に関与しており、残りは卵細胞質中に核とは独立して存在した。野生型では、未受精卵に中心体は形成されない。中心体の新規合成が、単為発生の成立に重要な役割を持っていることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
単為発生の原因遺伝子の特定に関して、ゲノムシーケンスの結果、予想を上回る数の単為生殖系統に特異的な多型が認められた。そのため現状での遺伝子の特定は困難である。得られたデータを利用しながら、さらに遺伝子領域を狭め限定するための実験が必要である。 初期胚の細胞学的解析に関しては、中心体の構成因子の一つCentrosomin(Cnn)に対する抗体を用い、細胞質中に中心体様の構造が多数形成されていることを発見した。この中心体様の構造がどのような中心体構成因子からできているかを、野生型との比較により詳細に調べようとしたが、抗-Cnn抗体以外の中心体構成因子の抗体で染色することはできなかった。また、微小管についても免疫染色ができなかった。そのため、今後、胚の固定法に改良を加え、解析を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
アナナスショウジョウバエの単為発生遺伝子の特定に関して、引き続き単為生殖系統の野生型への戻し交配を継続し、遺伝子が存在する領域の限定を進める。また、ゲノム情報の解析に加え、今年度は新たに遺伝子発現解析を行う。これを行う理由は、単為発生の原因となる突然変異が、遺伝子のコーディング領域ではなく発現調節領域に生じている可能性も考えられるためである。トランスポゾンの挿入など、大きなDNA断片の挿入については、昨年度に実施したゲノム解析法では見つけることができない。実際、キイロショウジョウバエの未受精卵における中心体の新規合成を、いくつかの中心体構成因子を過剰発現することにより引き起こすことができる。今後は、ゲノムと転写量の両面から目的遺伝子の特定に向けた解析を進める。 細胞学的解析に関しては、2点の解析を行う。まず、単為発生卵で形成されている中心体が正常な中心体構造を持っているかについて、電子顕微鏡によるカートホイール構造の解析と、複数の中心体構成因子の抗体を用いた免疫組織化学的方法による解析を行う。第2に、単為発生において、半数体の雌性前核からどのような機構で2倍体が形成されるのか明らかにするため、初期胚における染色体挙動をFISH法により解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究を行うための消耗品費(遺伝子発現解析試薬、分子生物学用試薬、免疫組織化学試薬に充当)と、研究成果の学会発表と研究の進展に重要な情報交換のために必要な経費としての旅費を計上する。
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Research Products
(3 results)