2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24770006
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
平井 和之 杏林大学, 医学部, 講師 (70597335)
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Keywords | 単為生殖 / 受精 / 染色体 / 中心体 / ゲノム / ショウジョウバエ / 減数分裂 |
Research Abstract |
アナナスショウジョウバエの単為発生では、基本的に一つの半数体の減数分裂産物の倍加によって2倍体雌がつくられることが分かっている。しかしその細胞学的機構についてよく分かっていない。本研究におけるこれまでの成熟卵および初期胚の解析から、単為発生胚では、雌性前核のまわりに、野生型の減数分裂で見られるような中心体非依存型の紡錘体が形成されることが分かった。このような紡錘体は、中心体を持たないまま第1回目の体細胞分裂をする場合と、極が卵細胞質中に新規合成されている中心体と結合して分裂する場合がある。さらに、半数体核を持つ2つの紡錘体の片側の極だけが中心体と融合している例や、減数第2分裂で見られる紡錘体のように2つの紡錘体が縦列した例も認められた。単為発生では、このような変則的な紡錘体形成が2つの半数体核を融合して2倍体化を導く重要な働きを持っていると考えられる。 アナナスショウジョウバエにおいて単為発生を可能にしている遺伝子のマッピングを行っている。有性生殖と単為生殖が可能な系統の有性生殖のみを行う野生型系統への戻し交配によって作製し、ライン化した多数の単為生殖系統の解析から、単為発生を確実に行うためには、第2染色体左腕と第3染色体左腕の特定の領域をあわせ持つことが必要なことが分かった。また、遺伝子発現の観点からも単為生殖機構の解析を進めた。初期発生に必要な因子は、卵形成過程において発現され、卵細胞質中に蓄積されている。そこで、雌から成熟卵母細胞を集め、mRNAを抽出してサンプルとした。有性生殖のみを行う2系統と単為生殖可能な3系統、計5系統のRNA-seq解析を行った。有性生殖群と単為生殖群の間で遺伝子の発現量を比較したところ、16遺伝子が発現量の上昇を、25遺伝子が減少を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アナナスショウジョウバエの胚の免疫染色に適したチューブリン抗体を得ることができたため、単為発生胚における核分裂と2倍体化の細胞学的解析を進められるようになった。またRaff博士より提供していただいた別の抗体も本研究に利用できることが分かり、単為発生胚で新規合成される中心体は、中心体の最も外層に位置するCentrosominに加え、より内部に存在する中心体構成因子も持っていることが明らかになった。 単為発生を引き起こす遺伝子の特定も、ゲノム解析と成熟卵の遺伝子発現解析、また戻し交配により単為生殖に不要な領域を野生型の染色体に置換する実験が予定通りに進んだ。これにより単為発生の成立には、複数の遺伝子について単為発生型の対立遺伝子を同時に持つことが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
単為発生における2倍体化の細胞学的機構が明らかになりつつある。引き続き、2倍体化に決定的なごく初期の体細胞分裂を行う胚の免疫染色を行い、1つの半数体核から2倍体核が形成される機構の詳細を明らかにする。 アナナスショウジョウバエの単為発生を引き起こす遺伝子を特定するため、引き続き戻し交配を行い、単為発生に必要な遺伝子の特定に向けたマッピングを行う。これまで単為発生に必要なことが示されていた第2染色体の組換え体を作製してきたが、新たに第3染色体も必要なことが分かった。第3染色体の組換え体を作製する実験を既に開始している。単為生殖する組換え体系統の作製ができ次第、ゲノムデータを参考に、第3染色体上の遺伝子の特定に向けた解析を行う。 成熟卵の遺伝子発現解析の再現性をみるため、新たにサンプルでの解析を行っている。このデータが得られ次第、以前の結果と併せて、野生型と単為生殖系統での発現量の比較を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画よりも安価に物品を調達することができたため次年度使用額が生じた。 次年度使用額分は、再現性を取る実験の回数を増やす際に使用する試薬代として使用し、より確実なデータの取得を行う。
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Research Products
(4 results)