2013 Fiscal Year Annual Research Report
送粉者がもたらす植物の多様化:パターンとプロセスの統合的理解にむけて
Project/Area Number |
24770018
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川北 篤 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (80467399)
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Keywords | コミカンソウ属 / ハナホソガ属 / 絶対送粉共生系 / 異所的種分化 / 多様化 / 生殖隔離 / ニューカレドニア |
Research Abstract |
平成25年度は前年度に引き続きニューカレドニア島においてコミカンソウ属植物を広域、かつ詳細にサンプリングし、送粉者の種特異性、およびそれらの系統関係を明らかにした。その結果、コミカンソウ属では、異所的に分布する近縁種は多くの場合同じ送粉者を共有していることが分かった。一方で、共存する種の間では互いに異なる送粉者が利用されているため、送粉者の種特異性が植物の生殖隔離を可能にしていると考えられる。系統解析の結果から、共存がみられたコミカンソウ属植物は、属内でも系統的に隔たったものの組み合わせで起こることがほとんどであった。 また、平成25年度の調査の際に、ニューカレドニア産のコミカンソウ属の一部の種が、ハナホソガ媒ではなく、雄花で繁殖するタマバエ科昆虫によって送粉されているという可能性が浮上してきた。 研究期間全体を通して、植物の多様化過程において、種特異的な送粉者は種分化の直接的な原因になることはほとんどないという、当初の考えを支持する結果が得られた。種特異的な送粉者は、すでに種分化を遂げた植物同士が共存する際の生殖隔離を助けることによって、結果的に植物が利用できるニッチの幅を広げ、種数の増大に寄与すると考えられる。これは、送粉者がもたらす植物の多様化についてのこれまでの説明とは異なる新しい考え方である。最終年度に見つかったタマバエ科の送粉者も種特異性が高く、タマバエがハナホソガと同じような過程でコミカンソウ属植物の多様化をもたらすのかどうかを今後明らかにする必要がある。
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Research Products
(8 results)