2012 Fiscal Year Research-status Report
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24770020
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小沼 順二 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (10613838)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | エコゲノミクス / トランスクリプトーム / 次世代シーケンサー / 適応放散 / 幾何学的形態測定 / 形態統合性 / マイマイカブリ / 多面発現 |
Research Abstract |
本研究は、貝食性オサムシの頭部・胸部形態に関するモジュール機構の遺伝・発生基盤解明を主目的としている。 本年度は、新潟県佐渡島に分布する巨頭型亜種サドマイマイカブリと同粟島に分布する狹頭型亜種アオマイマイカブリのサンプリングを行った。捕獲したマイマイカブリは定温・定日照環境に移したのち飼育・産卵実験をすすめた。マイマイカブリは1齢幼虫、2齢幼虫、蛹、成虫の発生ステージを経て成長するが、2齢期から羽化・成虫期にかけて頭部・胸部形態に著しい亜種間形態差が生じている傾向を確認することができた。また全個体の各発生ステージ日数をカウントし、発生ステージ期間の推定を行った。これらの基礎情報は、次年度行う遺伝子発現解析において、ライブラリー作製に用いる試料の発生ステージを決める重要な情報になる。 一方、RNA-Seq後に必要となる大規模計算機環境を整えた。所属機関に大容量メモリ搭載サーバーを構築し次世代シーケンサーのシーケンスデータを用いたde novo assembleに耐えうる計算機環境を準備した。また他研究機関の計算機共同利用申請を行い、各種インフォマティクスツールを使った情報解析の準備をすすめた。 形態解析については、マイマイカブリ巨頭型と狹頭型集団の標本を用い幾何学的形態測定法を用いた解析を行った。巨頭型と狹頭型に関する形態指標の定量化、並びに、モジュール解析等の各種形態構造解析を行い、頭部・胸部形態に関する遺伝・発生基盤の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画においては、当初、サンプルの準備、ライブラリー作成、シーケンス、インフォマティクス解析等、一連の解析を一部の試料を用いて本年度中に行う予定だったが、実際にはシーケンスまで行うことができなかった。理由は、本年度冬期に用いたマイマイカブリの餌に問題があり、いくつかのマイマイカブリが成長できず死んでしまったことが主な原因にある。 マイマイカブリは餌として巻貝に専食し、カタツムリを食べないと幼虫から成虫への発生ステージを進めることができない上、雌個体は産卵ができない。従って発育させるために十分な数のカタツムリを常に常備しておく必要があるのだが、夏期にサンプルしたカタツムリは冬期初旬までには消費されたため、冬期中旬から沖縄本土に向かい、現地のウスカワマイマイをサンプリングしマイマイカブリの餌に用いた。しかし、この用いたウスカワマイマイに問題があったようで、与えた個体は1~2週間後死んでしまうケースが多々生じた。未だ死因は不確かだが、おそらくウスカワマイマイのもつ何らかの寄生虫が原因だと考えられる。 これらの問題のためシーケンス用に用いるサンプルの準備を年度内に行うことができず、研究室周辺でのカタツムリのサンプリングが可能となる次年度春期まで、マイマイカブリの発育を待たなければいけなくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度初旬に解析で用いる試料の準備とライブラリー作成をすすめ、夏期までにシーケンスを完了させる。得られたシーケンスデータを用いて9月頃からTrinity等のアセンブラを用いてde novoアセンブリを行う。マイマイカブリ頭部・胸部形態間、巨頭型・狹頭型亜種間において遺伝子発現比較を行い、亜種間形態に密接に関与している形態形成遺伝子の絞り込みをすすめる。既存データベースとシーケンスを照合させ、decapentaplegic, hedgehog, wingless, FGF, EGF, Deltaなどの昆虫形態形成に関わる遺伝子に亜種間発現量の差がないか等を調べる。また得られたシーケンスデータをもとにパスウェイ解析等も行い亜種間形態の差を引き起こしている発生的バックグラウンドの解明を行う。 また巨頭型頭部・胸部形態に関して幾何学的形態測定法を用いた解析をさらにすすめる。両親種の解析だけでなくF1や戻し交雑雑種集団に関しても同解析法を適用し、形態間の相関関係を厳密に調べる。これらの結果を、巨頭型・狹頭型形態に関するQTLマッピングの結果に照らし合わせ、モジュール機構の遺伝・発生基盤解明につなげる。 得られた結果を速やかに国際雑誌に投稿する。またマイマイカブリを含むオサムシの研究はヨーロッパで盛んであることもあり、国際学会などに積極的に参加し国際規模での研究発展に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は本年度実施できなかったシーケンス分も加え、分子実験関係に研究費を使用するケースが増える予定である。シーケンスに用いるライブラリーとしては、羽化直前の試料を用い、2亜種(アオマイマイカブリ、サドマイマイカブリ)×2部位(頭部、胸部)の4サンプル/レーンとして、HiSeq2000による3レーンのシングルエンドシーケンスを行う予定である。ただし、亜種間形態差が生じている発生ステージは前蛹初期である可能性もあり、別発生ステージのサンプルを用いたシーケンスを行った方が良い場合も考え得る。そこで、より研究費を節約できるMiSeqを用い用いたシーケンスをテスト的に行い、その結果次第でHiSeq2000でのシーケンスに用いるライブラリーを決める代替案も計画している。いずれにせよ、ある程度、結果を基にした試行錯誤が必要があり、研究目的達成のためライブラリー調整費・シーケンス費合計を上限2000千円ぐらいに収めることを念頭に研究を進める。 必要個体の飼育のためは十分量の陸生巻貝の確保も必須であり、カタツムリのサンプリング費用が必要となる。加えて情報収集や研究成果の発表を目的とした国内・国外学会発表を計画している。これらの旅費として500千円を計上する。 研究結果が得られ次第、速やかに国際雑誌に投稿を予定している。投稿費用を含めその他物品費に残りの研究費(368,404円)を使用する。
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Research Products
(5 results)