2012 Fiscal Year Research-status Report
空間スケールの階層性と生物群集・生態系研究:島嶼のため池群を用いて明らかにする
Project/Area Number |
24770022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
土居 秀幸 広島大学, サステナブル・ディベロップメント実践研究センター, 特任講師 (80608505)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生態学 / 環境DNA / 外来種 / ため池 / 生物群集 |
Research Abstract |
本研究では,島嶼と湖沼という半閉鎖系の生態系を階層的に組み合わせて研究できる島嶼内のため池群を対象にして,生態学における,生物群集,食物網,生態系機能を対象にした画期的な野外調査研究を展開するものである。平成24年度は,瀬戸内海の島嶼7つと本土の7地域を選定し,各島嶼,地域からそれぞれ5つのため池を選んで(合計70箇所のため池),春(5-6月)と冬(11-12月)にそれぞれ調査を行った。生物群集としては,プランクトンネットなどで主に,動物・植物プランクトン群集を対象として採集を行い,個体数,バイオマスなどを計測する。また,バクテリアについてはDGGE(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法)を用いて分類群数を概算ため,フィルターで採集した水をろ過して保存中である。なお今後,25年度も同様の調査を続けて行う予定である。 外来種のブルーギルについて,ため池の水サンプルに遊離するDNA(環境DNA)を抽出し,各種特異的なDNA断片をPCRおよびリアルタイムPCRで測定した。その結果,目視調査でのブルーギルの在不在と比較したいところ,目視でブルーギルの生息が確認された地点では全てブルーギルに特異的なDNAが検出された。このことは環境DNAによる生息場所の調査が有用であることを示している。また島嶼のため池ではほとんどブルーギルの生息がDNA情報からは確認されなかった。しかし,4箇所の島嶼のため池ではブルーギルのDNAが確認され,これは島嶼にはまだブルーギルが侵入つつあることを示している。この成果はすでに論文として公表した(Teruhiko Takahara, Toshifumi Minamoto, and Hideyuki Doi (2013) PLOS ONE 8:e56584)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
野外調査は当初の計画どおり,順調に進んでおり,特に調査の遅れなどの問題は生じていない。また,環境DNAでのブルーギルの生息場所推定についての研究成果は,すでに論文として公表することができ,研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,平成25年度では季節的(年2回,春,秋)に各調査区域にて,調査を実施する。今年度は,安定同位体比測定による食物網構造解析に重点をおいて研究をすすめる。また,島の土地利用やため池の集水面積などについて,GISソフトウェアを用いて定量して,環境要因として群集構造や生態系機能への影響について検討する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に引き続き,平成25年度ではサンプル瓶やガラスフィルターなどの消耗品類,調査旅費に使用する。また本研究成果について公開するため,論文が受理されれば論文掲載料として使用する予定である。
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