2012 Fiscal Year Research-status Report
単独性寄生バチを用いた血縁選択理論の解明:母親間の血縁と極端な雌偏向性比の関係
Project/Area Number |
24770029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
安部 淳 神奈川大学, 理学部, 助手 (70570076)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 性比調節 / 適応度 / 進化 / 寄生バチ / Melittobia australica / 雄間闘争 |
Research Abstract |
本研究は、単独性の寄生バチMelittobiaを用いて、野外の遺伝構造が本種の性比の進化に与える影響を明らかにするのが目的である。当該年度は、その準備として、遺伝構造以外の要因が性比に与える影響について検討した。 Melittobiaの性比は既存の理論では説明できないほど雌に偏る(雄率1-5%)。その要因のひとつとして、雄間闘争によって後から羽化する雄が殺されやすい効果が影響している可能性が、我々の過去の理論および実証研究から示唆されている。そこでこの要因について検討するため、遺伝マーカーの遺伝子型をコントロールし、性比を人為的に調節した後、羽化、闘争、交配させ、各性比を示す母親の適応度を測定した。その結果、実際のMelittobiaの性比(約2%)で産む母親は、それよりも高い割合(約10%と20%)で雄を産む母親よりも適応度が低くなることがわかった。つまり、この状況では実際に見られる極端な雌偏向性比は、進化的に安定になりえない。この結果は、雄間闘争など、寄主の中で起こる要因だけでは本種の性比を説明できないことを示唆している。 今回の結果は、我々の過去の仮説を否定するものであるが、可能性のひとつを排除し、この実験では検討されていない遺伝構造の影響を新たな可能性として提示することができた。さらに、性比調節の分野では、理論研究の背景にある適応度について、実証研究で測定されることがなかったが、今回の実験のように適応度を実際に測定し、性比の進化について検討した意義は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年の研究計画のうち、当該年度は当初の予定通り計画を実行することができた。 当該年度では、本研究計画でもっとも注目している遺伝構造以外の要因だけでは、寄生バチMelittobiaの極端な雌偏向性比を説明できないことがわかった。そのため、次年度以降は野外の遺伝構造を解明することに専念できるし、その意義も大きいことがわかった。さらに、当該年度は今後の準備として、予備的な野外調査も行っているし、野外調査で採集したサンプルの解析を行うための遺伝マーカーの準備も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は野外の遺伝構造を解明するため、野外調査を重点的に行い、可能な限りサンプルを採集する。さらに、解析に使える遺伝マーカーの数を増やすため、今後も遺伝マーカーの開発を進める。これらの準備が整い次第、実際に解析を始め、遺伝構造が性比の進化に与える影響について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度以降は、野外調査のための旅費や、分子学的実験を行うための消耗品や人件費がかさむことが予想される。今年度の繰越金は、これらに対する予算をして使用することを考えている。
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Research Products
(5 results)