2015 Fiscal Year Annual Research Report
単独性寄生バチを用いた血縁選択理論の解明:母親間の血縁と極端な雌偏向性比の関係
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24770029
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
安部 淳 神奈川大学, 理学部, 助教 (70570076)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 性比調節 / 適応度 / 進化 / 寄生バチ / Melittobia australica / 雄間闘争 / 遺伝構造 / 血縁度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、寄生バチMelittobiaが既存の理論の予測に反し、他の雌と産卵するときも一定して極端な雌偏向性比(雄率約1-3%)を示す理由を明らかにすることを目的とする。必要以上に雌を産む行動は、他の雌の息子の交配相手を増やすため、協力的な行動と解釈される。昨年度までの研究により、Melittobiaの雌が寄主を探索する際、他の雌が既に産卵している寄主を好んで自らも産卵する行動が確認された。したがって、雌が自分が羽化した寄主の近隣の寄主を探索すのであれば、同じ寄主に産卵している雌どうしの血縁度が高くなっている可能性が考えられる。 このことを実際の野外個体群で検証するため、遺伝マーカーとしてマイクロサテライトを開発した。M. australicaの全ゲノムを抽出し、制限酵素を用いたショットガン法によりライブラリを作成した。次世代シーケンサー(Ion Torrent PGM)を用いてシーケンスを行ったところ、平均 244 bp のリード長で、トータル 867 M bp のゲノムが解読された。マイクロサテライト探索ソフト(Mstatcommander)を用いてマイクロサテライトを探索し、Primer 3を用いて候補となるプライマーを設計した。2から4回のモチーフの繰り返しを持つマイクロサテライトを対象に、69ペアのプライマーを作成した。PCR反応による増幅を確認したところ、47ペアで増幅が確認され、その内38ペアで繰り返し回数に多型が見られた。 今後は、ここで開発されたプライマーを用いて、野外で採集されたサンプルを解析する。Melittobiaの極端な雌偏向性比が進化した野外個体群の遺伝構造を解析することにより、特に雌親間の血縁度と性比調節の進化の関係が解明されることが期待される。
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