2013 Fiscal Year Annual Research Report
鉄酸化独立栄養細菌が優先する微生物群集は深海底下に存在するか?
Project/Area Number |
24770032
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
加藤 真悟 独立行政法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 基礎科学特別研究員 (40554548)
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Keywords | 海底下生物圏 / 化学合成生態系 / 物質循環 / 鉄酸化菌 / 硫黄酸化菌 / 硫化物構造体 |
Research Abstract |
海洋性の鉄酸化菌を含む分類群Zetaproteobacteriaは、巨大海底下微生物生態系の成り立ちや、地球規模での物質循環を理解する上でのキープレーヤーと予想されている。しかしながら、その代謝機能や海底下における分布範囲などの具体的な情報は皆無に等しい。本研究では、(1)海底下におけるZetaproteobacteriaの分布範囲および存在量、(2)Zetaproteobacteriaに属する微生物種の生理学的特徴、の2点を明らかにすることを目的とした。南部マリアナトラフにて採取した硫化物コアを分析試料とし、平成24年度までに、1本のコアの異なる深度3点の試料について、微生物群集構造解析が完了している。平成25年度は、別の地点で採取したコア1本の異なる深度4点の試料からDNAを抽出した。計7つのサブ試料を対象に、パイロシークエンシング法等による微生物群集解析を行った。その結果、深度1 m程度の部位からは鉄/硫黄酸化菌群のZetaproteobacteriaやChromatialesが検出され、より深い部位からは鉄/硫酸還元菌群のNitrospiraeやDeltaprteobacteriaが検出された。これらの細菌に由来すると予想される硫黄酸化/硫酸還元や炭酸固定に関わる遺伝子も検出された。以上の結果から、海底下の硫化物構造体内部では、硫化鉄をエネルギー源とした微生物生態系が成り立っており、そこでは種々の細菌によって駆動される硫黄と鉄の循環系が存在することが示唆された。加えて、鉄酸化菌の効率的な分離培養方法を考案した。試験的に同培養法を用いて、陸上試料から螺旋状の構造体を産出する新規の淡水性鉄酸化菌の培養に成功した。しかしながらコア試料からのZetaproteobacteriaの培養には至っていない。本研究で得られた成果は学会にて発表し、国際誌に投稿中/公開済みである。
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