2012 Fiscal Year Research-status Report
海底下深部炭素フローの端緒を担う微生物の系統・機能・生理生態の解明
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24770033
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
星野 辰彦 独立行政法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 研究員 (30386619)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 微生物生態 / 地下生命圏 / 炭素循環 |
Research Abstract |
代表者は、平成24年7月末から2ヶ月にわたり行われた地球深部探査船「ちきゅう」を用いた下北沖における国際掘削航海に参加した。航海では、科学掘削の深度記録を更新し、石炭層を始め、海底下2466mまでの堆積物資料を連続的に採取した。この航海では、泥水(でいすい:掘削による削りかすを除去そして孔壁を保護するために比重や粘度をを調整された液体)を用いたライザー掘削を行ったが、泥水からの微生物のコンタミネーションの影響が非常に大きいことが判明したため、サンプルの取扱に注意が必要であった。そこで、まず最初に堆積物中に存在している土着の微生物のバイオマスおよび、群集構造解析を行うべく、各層順50サンプルからDNAの抽出を行いreal-time PCRをおこなったが、予想していた以上に微生物量が少なく、定量が非常に困難であった。 一方、泥水は海水を用いて調整されているため、その内部には土着の微生物の数万倍以上の細胞がいると考えられ、土着の微生物を、コンタミネーションフリーの状況で取り出すストラテジーと研究の進め方を考える必要がある。採取してきたサンプルは現在、嫌気条件下で4℃において保存しており、方法論が固まり次第、サンプル採取、培養実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
想像していた以上に海底下深部の石炭層に存在している微生物量が小さく、またコンタミネーションの影響が大きいため、信頼できるデータを得るために研究ストラテジーの変更を余儀なくされたため。
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Strategy for Future Research Activity |
微生物量が非常に少ないことから、当初の研究計画のみの方法では目的の達成は困難であることが予想される。そこで、まず、石炭層を中心としたコア試料内部および泥水内部の微生物群集構造の解析を網羅的に行い、そのデータの差分をとることにより、常在している微生物群集を特定する。得られた微生物群集構造のデータから培養に用いる層順を決定する。培養実験については、コンタミネーションの影響を極力少なくするべく、コア試料周りを全て除去し、中心部のみを用いて行い微生物の増殖をモニタリングする。 一酸化炭素を基質とした培養系で増殖が見られたサンプルから細胞を分離し、シングルセルジェノミクスを行い微生物のゲノムを解読することにより、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子が存在するゲノム配列をスクリーニングし、16S rRNA遺伝子情報を元にした系統とリンクすることにより、一酸化炭素を嫌気的に酸化している細菌を同定する。また、その他の代謝機能に関してもゲノム情報から包括的に明らかにして行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に、実施できなかった培養実験に用いる基質および消耗品の購入を行う。また、実験計画の変更により網羅的な微生物群集構造解析およびシングルセルゲノミクスを行う必要が生じたため、シーケンスにか係る消耗品・酵素類の購入や研究委託費に使用する予定である。
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