2012 Fiscal Year Research-status Report
顕微鏡画像処理による植物細胞のオルガネラ定量解析法の開発
Project/Area Number |
24770038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
朽名 夏麿 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (70578559)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 植物 / 細胞・組織 / 解析・評価 / 共焦点顕微鏡 / 生体生命情報学 |
Research Abstract |
タバコ培養細胞 BY-2 とその形質転換ライン,およびシロイヌナズナ表皮組織について各種細胞内構造の蛍光画像の撮影を行なうと共に,植物細胞画像データベースからの蛍光顕微鏡画像の収集を行なった.これらを画像上の特徴によって(1)粒状構造の蛍光像(エンドソーム等),(2)膜等の境界を標識した蛍光像(液胞膜,細胞膜等),(3)内腔全体を標識した蛍光像(液胞内腔等),(4)繊維構造の蛍光像(細胞骨格系)に分け,各カテゴリーに適した解析戦略の構築を進めた.カテゴリーごとに空間周波数フィルタや輝度に基く二値化処理といった基本的な画像処理工程の組み合わせを設定し,各工程で調整する必要のある多数のパラメタの決定を自動化するため粒子群最適化アルゴリズムを用いたチューニングシステムを開発した.このシステムの利用により,表層微小管の配向・密度解析,エンドソームの分布・形態解析,小胞体の分布・形態解析,細胞質内の顆粒構造の計数,抗体染色組織像からの標識強度の定量について,それぞれの特性に応じてカスタマイズされた画像解析ソフトウェアの作成を行なった.さらに,小胞輸送関連タンパク質およびチューブリンに関する共局在解析,温度変化に伴う小胞体の流動速度変化の測定,花粉管伸長過程の自動追跡に関する画像データの前処理工程へも本システムを活用した. また,カテゴリーを問わず利用可能なアプローチとして,多量の画像群の比較を効率化し,その分類を自動化する手法を検討した.半教師付きデータとして入力した画像群から多数の特徴候補を抽出し,遺伝的アルゴリズムにより適切な画像特徴を探索するシステムを開発した.これにより上述した4カテゴリーへの分類についても自動化の見通しが立った.これはデータベースやウェブ上に展開する大規模な植物細胞画像群の網羅的解析への道筋をつけるものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究計画の内,画像解析戦略の構築と画像収集に関しては,オールインワン型蛍光顕微鏡の活用によって撮影工程の効率化を行なうことができ,順調に進められた.とくにタバコBY-2細胞の核・染色体蛍光像については約一万細胞の撮像を行なうことができた.核・染色体は細胞周期の進行にともなう構造変化が著しいため,細胞内構造の画像解析のターゲットとして好適である.また解析対象の画像を自動的に粒状構造,膜蛍光像,内腔蛍光像,繊維構造のいずれかにカテゴライズする方法についても実現可能性がうかがえた. 画像処理工程の組み合わせによる最適化手法の検討については,粒子群最適化アルゴリズムによるパラメタ調整の自動化を達成した. 形態・局在解析ソフトウェアの開発については,粒状構造,膜蛍光像,内腔蛍光像,繊維構造の全カテゴリーを網羅することができた.さらに研究目的に挙げた項目の内,平成25年度以降の課題である共局在解析と動き解析についても,前処理工程の最適化を同ソフトウェアで行なうことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
解析の対象を二次元画像から多次元画像へと拡張する.これは時系列画像からの動き測定,および,多重蛍光標識画像からの共局在情報の定量に大別される.動き測定に関してはまずオプティカルフロー法によるアプローチを行なう.これは植物細胞内におけるオルガネラ・細胞骨格の動きを追跡するのではなく,"場" に注目して移動速度と方向を解析するものである.そのため解析対象の全カテゴリーにわたって利用可能と予想される.次いで解析精度の向上のため,粒子構造や繊維構造に特化した追跡手法の開発へと進める. 共局在情報の定量に関しては,解析チャネル(バンド)間の輝度について散布図を得て,ピアソンの相関係数をはじめこれまでに提案されてきた複数の共局在指標をベースに,撮像条件や蛍光タンパクの発現状況の変動に対して堅牢な定量化手法を目指す.植物細胞の蛍光像に基くタンパク質ないしオルガネラ間の共局在解析は定性的な評価の手段として普及しているが,その定量化については動物細胞と比して進んでいない.これは植物細胞の多くで巨大液胞が細胞体積の大半を占めているため,解析領域の設定が難しいこと,そして不適切な解析領域の下では共局在性を過大に推定してしまうことによる.この問題に対応するため,解析領域の妥当性を検証する方法論についてもあわせて検討を行なう予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(31 results)
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[Presentation] 電顕アトラス: 高圧凍結技法を取り入れた広域電顕像撮影システムの開発
Author(s)
佐藤繭子, 朽名夏麿, 澤木史江, 若崎眞由美, 桧垣匠, 吉田拓広, 櫻井哲也1, 馳澤盛一郎2, 持田恵一, 永田典子, 豊岡公徳
Organizer
第54回日本植物生理学会年会
Place of Presentation
岡山県 岡山大学津島キャンパス
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