2012 Fiscal Year Research-status Report
植物初期生育における液胞プロトンピロホスファターゼの役割の解明
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24770039
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
FERJANI Ali 東京学芸大学, 教育学部, 助教 (20530380)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 葉器官サイズ制御 / 細胞増殖 / 細胞伸長 / fugu5変異体 / 補償作用 / 液胞プロトンピロホスファターゼ / ピロリン酸 / ショ糖 |
Research Abstract |
種子発芽時に過剰蓄積するピロリン酸(PPi)の分解は、種子の貯蔵脂質をもとにした糖の新生、また、それを必要条件とした細胞増殖能保持に必須である。しかしPPi分解酵素活性を消失したfugu5変異体について、糖の新生がなぜ特異的に阻害されるのかは謎である。そこで、貯蔵脂質から糖新生に到るまでの代謝産物をメタボローム網羅的解析により、その阻害メカニズムを明らかにしようと試みた。一方、fugu5ではPPiが細胞分裂を含む多くの細胞機能を阻害するが、興味深いことに細胞肥大はむしろ昂進する。この点について、fugu5に対する重イオンビーム照射で誘発した表現型の抑圧変異株を使って、細胞肥大のメカニズムの解明を進めた。 1 貯蔵脂質に由来するショ糖生合成の阻害のメカニズム(1)貯蔵脂質から糖新生に到るまでの代謝経路の中間代謝産物について、CE-MSによるメタボローム解析法を用いた代謝産物の定量化がおおむね完了した;(2)その結果、野生型に比べて、fugu5における特定の中間代謝産物の著しい増加が認められた;(3)AVP1pro::IPP1と比較した結果、fugu5において異常な値を示した中間代謝産物の量が、AVP1pro::IPP1では通常の値を示した。 2 貯蔵脂質に由来するショ糖生合成の阻害は補償作用を引き起こすのに十分か(1)グリオキシル酸回と糖新生それぞれに異常を持つicl-2とpck1-2を解析したところ、子葉においてのみ補償作用が確認された;(2)現在、ショ糖の添加の影響及びfugu5との二重変異体を作成し、解析を進めている。 3 fugu5に見られる細胞肥大はどのように起こるのか(1)fugu5の細胞肥大を抑制するA#3-1変異について、マップベースクローニング及び次世代シーケンサー解析を用いて原因遺伝子の同定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の交付申請書に入力した「研究目的」に対する本年度の達成度は以下の通りである。 1 本研究計画で実施しているメタボローム解析は現在も進行中ながら、最終段階に入っており、PPiの代謝ターゲットの解明という大きな目的を達成しつつある。 2 貯蔵脂質に由来するショ糖生合成の阻害は補償作用を引き起こすのに十分か:グリオキシル酸回と糖新生それぞれに異常を持つicl-2とpck1-2の解析の結果、補償作用が確認された。この発見はPPiの代謝ターゲットを考える上で大きなヒントとなる進展である。 3 fugu5に見られる細胞肥大はどのように起こるのか:fugu5に見られる細胞肥大が抑制される変異株A#3-1変員株の原因遺伝子を、予定通り同定できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題と本年度の成果をふまえ、今後以下のように研究を推進して行きたいと考えている。 1 今後、研究成果を速やかに取りまとめ、論文等で報告したい。 2 種子発芽の段階で、貯蔵脂質に由来するショ糖生合成には、β-酸化及びグリオキシル酸回路と糖新生という一連の反応が必要である。今回、icl-2とpck1-2の2つの変異株において補償作用が確認されたことは極めて重要な発見であり、今後fugu5に見られる細胞増殖能の低下の主要因の解明につながると期待している。 3 fugu5に見られる細胞肥大が抑制される変異株(A#3-1)を独自に単離し、その原因遺伝子の同定に成功した。fugu5背景でA#3-1変異は細胞伸長を著しく抑制するが、an3やfugu2/fas1変異による細胞の肥大を全く抑制しなかった。この結果は、今後、fugu5のみならず、補償作用に見られる細胞肥大のメカニズムの解明に向けて重要な研究成果といえる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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