2013 Fiscal Year Research-status Report
チオレドキシンによる光合成生物のニトロゲナーゼの活性制御機構の解明
Project/Area Number |
24770040
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
野亦 次郎 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (40583216)
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Keywords | 嫌気 / 金属中心 |
Research Abstract |
チオレドキシン(Trx)は生物界に広く分布し、様々な代謝系を触媒する酵素(蛋白質)の活性を調節する重要な蛋白質である。最近、私達は、窒素固定性ラン藻、Anabaena sp.PCC7120(A.7120)において、Trxが窒素固定酵素ニトロゲナーゼと相互作用するという興味深い結果を得た。ニトロゲナーゼは分子状窒素をアンモニアに還元する複雑な金属酵素であり、この地球上における全窒素固定量の50%を占めるなど、窒素動態において極めて重要な酵素である。ニトロゲナーゼは還元コンポーネント(NifHホモ二量体)と触媒コンポーネント(NifD-NifKヘテロ四量体)から構成されるが、そのいずれも『金属中心』を保持しているため、分子状酸素に触れると数分で不可逆的に失活する。本研究では、ニトロゲナーゼについて、嫌気条件下での生化学的解析の研究基盤の構築およびTrxによる活性制御機構の解明を試みてきた。申請者はこれまでに、紅色細菌を用いた発現系を構築した。嫌気チャンバーを利用して紅色細菌の細胞抽出液からA.7120に由来するニトロゲナーゼの精製を試みたところ、金属中心の形成されたNifH蛋白質質を得ることに成功した。しかしNifD-NifKタンパク質については発現が認められず、精製蛋白質を得ることは困難であった。そこで、他の窒素固定性ラン藻、Leptolyngbya boryana (L.bory)を用いたA.7120 NifD-NifKタンパク質の発現系の構築を行った。L.boryはA7120とは異なり、全ての細胞でニトロゲナーゼの発現が誘導されることが知られており、生化学的解析に充分な量のニトロゲナーゼ蛋白質を得られることが期待される。現在、L.bory組み換え株の単離を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究において、生化学実験の基盤として、A.7120に由来するニトロゲナーゼの発現精製系の構築が不可欠である。これまでに、大腸菌、窒素固定細菌を用いた発現を試みたが、活性型のニトロゲナーゼを得ることはできなかった。最近、窒素固定能をもつ紅色細菌を利用した発現系の構築を行い、A.7120に由来するニトロゲナーゼの構成蛋白質NifHおよびNifD-NifK蛋白質の活性型発現を試みたところ、紅色細菌の抽出液から金属中心の形成されたA.7120のNifH蛋白質を得ることに成功した。一方、NifD-NifK蛋白質は、紅色細菌においても発現が非常に困難であった。その原因は、NifHと比較し、NifD-NifKは金属中心の生合成系など活性化システムが複雑であり、さらに生物種によって活性化システムを構成する遺伝子が異なるためであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、(1)窒素固定性のラン藻、Leptolyngbya boryana (L.bory)を用いたNifD-NifK蛋白質の活性型発現を目指す。L.boryは窒素欠乏かつ嫌気条件下において全ての細胞でニトロゲナーゼの発現が誘導されることが知られており、生化学的解析に充分な量のニトロゲナーゼ蛋白質を得られることが期待される。また、A7120とは異なり異化細胞を形成しないため、細胞の破砕が比較的容易であるという利点が有る。現在、L.bory組み換え株の単離を行っている。 (2) A.7120のTrxAとNADPH-Trx還元酵素の発現・精製系はすでに構築済みである。NifHおよびNifD-NifK蛋白質の発現系が完成した後に、TrxAによってニトロゲナーゼ各コンポーネントの酵素活性が、実際に酸化還元制御されるのか、検討を行っていく。
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