2012 Fiscal Year Research-status Report
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24770042
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中道 範人 名古屋大学, 高等研究院(農), 助教 (90513440)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
概日時計は約24時間周期の時間情報を生み出す高次生体システムである。自然界において温度は幅広く変化するが、そのような条件でも概日時計は正確な時を刻めなければ、経時機構としての役割を果たさない。実際に概日時計の周期は外部環境変化にロバストであり、幅広い温度条件下で約24時間で一定である(温度補償性)。一方、現在想定されている植物の時計中心は転写制御因子から成るループであり、この転写制御が一般的な熱力学の法則に従わず、温度補償性を生み出していることは驚異である。本研究は、幅広い温度条件で時計の素過程の反応を生化学的に解析することにより、時計の温度補償性の巧妙な‘からくり’の解明を目指すものである。本年度はレポーターを8種類の時計変異体に導入し、10℃、15℃、20℃、あるいは25℃の連続光条件下での周期を上記のモニター系で正確に求めた。その結果、温度補償性の性質が野生型と大きく変わる変異体を見いだした。次にこの変異体において、遺伝子発現レベルでのリズムを詳細に調べた。その結果、この変異体では低温(15℃)では野生型とほぼ同等の周期長および振幅のリズムを示すが、高温(25℃)では野生型と大きく変わるリズムを示した。時計の温度補償性を解明するうえで、非常に重要な手がかりとなる遺伝子が見いだされた可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、変異体にレポーターコンストラクトを導入し、概日リズムを検出できた。レポーターレベルの概日リズムに加えて、遺伝子発現レベルのリズムも詳細に解析できた。
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Strategy for Future Research Activity |
多様な温度条件下で時計転写因子のDNA結合能とターゲット遺伝子の発現制御を植物体内で解析することで、温度補償性の仕組みが時計転写因子のどの反応(DNA結合能か転写制御能か)に内包されているか決定できる。 すでに24年度の解析により、温度補償性にとって重要な転写因子が見つかった。そこでこの転写因子のターゲット遺伝子への結合および転写制御能を解析する。DNA結合能はChIP-qPCRで解析する。ChIP-qPCRの実験に供与する植物体を様々な温度の元で生育させ、結合を3日間にわたって解析する。また転写制御能は、一過的発現系(Nakamichi et al., Plant Cell, 2010)を用いて解析する。これらの解析に加えて、当初は予定していなかった解析(目的時計転写因子の存在量およびその存在場所)を定量的に解析する。これらの解析により、この転写因子の動態が定量的に記述でき、温度補償性のからくりの解明へむけた理解が進むであろう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度のChIP-qPCR解析、一過的発現系解析、さらに転写因子の存在量の定量的解析に使う消耗品に研究費を充てたい。さらにこの研究を取りまとめ、論文あるいは学会等で発表を行うための費用(論文掲載費や出張費)もこの研究費を使いたい。
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