2013 Fiscal Year Research-status Report
時計タンパク質KaiCによる細胞分裂制御機構の解析
Project/Area Number |
24770043
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北山 陽子 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20444367)
|
Keywords | 概日リズム / 細胞分裂 / DNA複製 |
Research Abstract |
細胞周期が、概日時計に制御されていることは広く知られており、細胞周期が時刻依存的に制御されることは、紫外線によるDNA損傷の抑制や、発生や成長を環境に適応して調整するなど、生物にとって重要な役割を持つと考えられている。本研究は、概日時計による細胞周期調節の分子機構解明のために、シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942をモデル系として、概日時計の中心タタンパク質KaiCが細胞分裂を時間的に調節する分子機構を明らかにすることを目的とした。Synechococcus elongatus PCC 7942では、概日時計による細胞周期の調節機構において、FtsZリング形成が時間依存的に抑制されることが明らかとなっていること、KaiCがRecA/DnaB superfamilyに属するATPaseでありDNA結合能を持つこと、ヌクレオイド構造が約24時間周期で変化を繰り返していることなどから、KaiCはDNAに結合しヌクレオイド構造を制御することによって、DNAの複製分配とある程度協調してFtsZリンク形成を制御するのではないかと考えた。 平成25年度に実施した研究により、DNA複製開始因子であるDnaAが概日時計の周期を調節していることを明らかにした。また、DnaAによる周期調節はKaiCを介していることもわかった。Synechococcus elongatus PCC 7942のDnaAは原核生物に保存されている複製開始因子DnaAと相同性が高く、同様の機能を持つと考えられるが,破壊しても生育に影響はなかった。そこで、時計における機能がDNA複製や細胞分裂制御とは独立か、もしくは分裂制御を通した二次的なものかを、DnaAの解析を通して明らかにするため、大腸菌発現系を用いたSynechococcus elongatus PCC 7942 DnaAの精製、抗体の作製、kai遺伝子との二重変異体の作製、発現解析、相互作用の検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、細胞分裂時のFtsZリング形成場所の決定機構における、KaiCおよびDNA複製開始因子DnaAの相互作用を解明することである。大腸菌や枯草菌の研究から、FtsZリングを細胞の中央に正確に形成するためには、MinシステムとNucleoid Occlusionという二つの機構があることがわかっている。そこで、KaiCとDnaAの相互作用とヌクレオイド構造に着目し,KaiCによる、遺伝子発現調節を介さない細胞周期のGating機構の検証を行う計画である。平成24年、25年度の結果をふまえ、KaiCとDnaAの細胞内での複合体形成を詳細に調べた。ところが、新たに作製したDnaAの特異的な抗体を用いて免疫沈降実験を行ったところ、その結果が以前の観察と一部矛盾するものだったため、再検討を要するため。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究からDNA複製開始因子のホモログであるSynechococcus elongatus PCC 7942のDnaAが概日時計タンパク質KaiCとなんらかの相互作用によって概日時計を調節していることが明らかとなった。今後は、KaiCとDnaAの相互作用の実体を明らかにして行くことで、DnaAの作用機構を明らかにする。そのためには平成25年度の研究結果をうけて、KaiCとDnaAの細胞内での複合体形成の詳細を再検討するとともに、in vitroでの相互作用解析と細胞内での局在解析を行う。また、KaiC-DnaA複合体のヌクレオイドへの結合について解析をおこなうことで、概日時計と細胞分裂のカップリング機構におけるヌクレオイド構造の関与を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に、KaiCとDNA複製開始因子DnaAの細胞内での複合体形成を詳細に調べ、その結果をもとに論文を発表する予定であったが、実験の結果が以前行ったものと一部異なっていた。そのため、計画を変更し、次年度に細胞内での相互作用を再検討し確認すること、またin vitroでの相互作用解析と細胞内局在の解析を行う必要が生じたため。 細胞内での複合体の解析を再検討するための抗体作製、in vitroでの活性測定や相互作用解析のためのin vitro転写翻訳系のための試薬類、細胞内局在を調べるための生化学用試薬や抗体類、さらに、これらの解析結果を含めて、論文発表と学会での発表するための経費とし使用する。
|